油断大敵
あついいいいい!!!
『ーーーーォォオオオオオ!!!』
魔王国を揺らすほどの破壊的な遠吠え。
相手は自然災害と同等の被害をもたらす可能性のある悪魔。
正直、ユウキ達が来るまで耐えきるか分からない。
「姉ちゃん、付加魔法の準備を…」
「もうやってるよ。バックアップはお姉ちゃんに任せて存分に戦っちゃって!」
「さすが姉ちゃん、わかってんな。よっしゃ、行くか!」
この道を曲がれば、奴がいる。
1度大きく深呼吸。
目標は…死なないことかなぁ。
相棒である戦斧を握りしめ、1歩踏み出した。
「すっご!なにこれ楽しい!」
「こら、こっち向けんな!」
ハンドガンを一丁手渡し、前方の雑魚の処理を頼んだが…間違いだったか?
弓を使うだけあって狙いはいいが、テンションが高すぎる。
うっかり俺の方を撃ったりしないか心配である。
ドゴオオオオン!
「今の音…もうすぐだ、作戦通りに行くぞ!準備はいいか!」
「おっけー!」
エメラはバイクの上に立ち、ハンドガンをぶん投げて大鎌を構えた。
ライトに照らされて浮かび上がった姿は、情報通りの馬鹿デカい獣の尻だった。
「行くぞ!飛べ!」
「ひゃっはー!」
獣の股下をくぐろうとするバイクから飛び、獣の背中へと大鎌を振り下ろす。
俺の頭上、獣の悪魔が大きく叫んで揺れた。
股下をくぐりぬけ、ドリフトして獣の方へと向く。
獣は背中の上を踊るように切り刻むエメラを身を捩って振り落とそうとしている。
獣の体は右前脚が象のようにとても太くてゴツゴツとしているが、その先端は豚の蹄の様な形だったり、様々な動物を組み合わせたような違和感しかない珍妙な見た目をしている。
「二撃目行くぞ!離れとけ!」
「らじゃ!ぶちかませー!」
フルスロットルで未だに動こうとしない獣へと突っ込む。
あと8m程のところで飛び降り、スイッチを押した。
ガソリンタンクに貼り付けておいたC4爆弾が起爆し、大爆発を起こした。
「ひゃー!あっつい!ユウキっち大丈夫?」
「おう、少し擦りむいたくらいだ」
地面を転がった時に地面で擦ってしまったところが痛い…
この作戦は近隣の家屋への被害が怖かったが、壁が真っ黒に染まっただけで済んだのは有難い。
とりあえず明日には詫びを入れよう…
肝心の獲物はと言うと炎で、ずるり、と皮膚が剥がれ落ちているもののまだ死ぬ気配はない。
「…向こうもタフだねぇ」
「やっぱり仕留めきれなかったか…というかディード達はどこだ?」
「確かに…!死体はないから死んだってことは無いだろうけど…こちらエメラ!ディード、生きてる!?」
『こ、こちらゼノビアであります!ディードが致命傷を負ったため、近くの路地で治療中であります!応急処置を終えたら自分もそっちに行くであります!』
「ディードが致命傷!?わ、わかった!こっちは一旦任せて!」
『奴は弱い生き物を装って、油断している相手に強烈な攻撃を与えるという狡猾な獣であります!決して油断なさらぬように!』
そう言って通話が切れた。
ディードが致命傷…このノロマな奴に致命傷を…?
未だに炎の中でゆらゆらと揺れている獣は…ッ!?
「エメラッ!!」
「えっ…!?」
一瞬にして目の前までやってきた獣の悪魔がエメラへと腕を振り下ろそうとしていた。




