爪
「あ?何も無かった?」
「ああ。地下室はあった。がしかし…」
あの爆発の後にもう一度探索へ行ったヘイルからの衝撃の一言。
『何も無かった』
あの血溜まりとか死体とか、諸々含めてあれを『何も無い』と言うにはさすがに無理があるのでは…?
だかしかし、本当に無かったとしたら…
俺とエメラが探索した後から翌日昼までにあの部屋に散らばった血とか臓物とかを全て片付けたヤツがいると?
非現実的過ぎる。
ただ、何らかの方法で地下室を片付け、小屋に罠を張り、痕跡を消したとしたら辻褄が合う。
この世界には魔法なんてものがあるんだ。
何が起こってもおかしくは無いのでは?
「ユウキと、ヘイル、様!こんにちは!」
「ああ、こんにちはアニスフィア。今日も頑張っているのだな」
「えへへ…」
「…とりあえず、調査は私たちに任せて欲しい。お前は暫く無理に動かないように」
「わかった。何かあったらまた報告してくれ」
そう言って外へ向かったヘイルを見送った。
「アニス、今日は何の仕事をしてたんだ?」
「今日は…お掃除と、お庭の、お手入れと…あ、そうだ。ユウキ、ついてきて」
「おお?」
義手で俺の腕を掴み、外へと連れ出された。
場所は庭。
上手に手入れができたから見て欲しいとかか?
「これ、なんだけど…」
「…なんだこれ?」
庭を少し通り過ぎ、城の影になっているとある場所で、地面が大きくえぐれていた。
ショベルカーで掬ったような穴が空いている。
「これを見つけて、元に戻そうとしてたの。1人じゃ出来ないから、他のメイドさんを連れてこようとしたら、ユウキ達を見つけたの」
「ああ、俺も暇だし手伝うよ」
一体誰だこんなことをした奴は…
シャベルを2つ出し、片方をアニスに渡した。
近くにある土の山を崩しながら、その土を穴の中に放り込んでいく。
「あれ、なにこれ…?」
アニスが手を止め、シャベルに載せた土を漁り始めた。
土の中なら出てきたのは、太くて鋭い、大きな動物の爪のようなものだった。
「これ、なにかわかる?」
「匂いもしないしな…爪っぽい石とか?」
半透明で大人の人差し指程の大きさである。
動物特有の匂いなどはしないため、爪ではなさそう…?
「あとでアンソルスに見せてみるか」
穴を埋め、メレスの部屋へとやってきた。
メレスは昨夜から少し離れた街へと出かけているため、今部屋にはアンソルスしかいなかった。
先程の爪(?)を見せると、表情を変えた。
「…お主、これをどこで見つけた?」
「ん、庭の向こう側だけど…?」
「…案内せよ。少しばかり面倒なことになっておるかもしれぬ」
先程埋めた場所へ案内すると、アンソルスはそこの土を触り始めた。
「…ふむ、少しここを掘り返してはくれぬか?」
「はぁ?今埋めたばっかりだぞここ」
「つべこべ言わずに従え」
「ちくしょうめ」
埋めたばかりの穴をもう一度掘り返した。
しばらくすると、先程と同じくらいの穴が空いた。
そこから下は地面が固く、シャベルの先が入りにくい。
アンソルスが言うには、もう少し下らしいが…
ガチンッ!
「痛っ!?」
石かなにかが埋まっているのか、思いっきり硬いものに当たり、手が痺れている。
「くぅ…!なんだよもう…え?」
何に当たったのか確認しようと、土を少し退かしてみると、黒い糸のようなものがびっしりと生えた丸い物が…
「こ、れって…!」
周りの土を削り、掘り出してみるとそれは、人間の頭部だった。




