祭壇
小屋の監視を始めてから1時間が経過。
少し離れた茂みの中に身を潜めているが、一向に現れる気配はない。
やはり既に家の中にいるのか…?
「エメラ、行くぞ」
「…すぴー」
「おいコラ」
「んあっ!?」
眠っているエメラをたたき起こした。
「いたた…もう!なにさ!」
「何寝てんだ。2時間経っても動きがないから行くぞ」
「えっ、そんなに時間経ってたの?んーっ、よし!」
ぴょんっ、と立ち上がり、草と土を払い落とし始めた。
小屋に近づき、壁に耳を当てた。
音は聞こえない。
扉を開き、中に入った。
しかし誰もいない。
…だが、先程まで人間が居た匂いがする。
「居るみたいだな。人数は…」
「6人だね」
「…だな。なんでわかった?」
「ふふん、ユウキっちとのお仕事は初めてだから知らないだろうけど、精霊さんと話せるんだよね」
この世界における精霊は、生物には見えないが確かに存在してる生き物(?)である。
条件が重なり、魔力の濃度が高くなる日の夜は蛍のように淡く光りながら漂う姿を見ることができるらしい。
今現在も俺には見えていないが、エメラの周りに漂っているのだろう。
「精霊って何ができるんだ?」
「精霊さんはね、今みたいに周りにいる人の数を教えてくれたり、漂ってるマナを使ってあーしの身体能力を上げてくれたり…あとは暑いところや寒いところでは体温を調節してくれたりするんだよ」
「なるほど…精霊すごいな」
「でしょー?」
人差し指を立てると、その先端が光った。
精霊が指先に止まっているのだろう。
光によって照らされた部屋の中は、やはり誰もいない。
つまり…
「隠し部屋があるんだな。小屋の大きさからして部屋と言うよりは…」
中心に置かれたテーブルの下に取っ手を発見した。
「これだな。地下室への入口みたいだ」
引っ張ると、地下に続く通路が現れた。
「うぶっ…」
「うえっ、この臭い…!」
血と腐敗臭が混じった最悪の臭いだ。
じっとりと重苦しい空気が上ってきている。
吐き気を抑え込み、ギシギシと鳴る縄梯子をゆっくりと降りていく。
古いのか、所々擦り切れそうになっている所もある。
「…ユウキっち、上見ないでよ?」
「こんな臭いの中でそんな気起きねえよ…」
獣人では無いエメラですら嘔吐くこの臭い、俺はほぼ死にかけである。
「「「ウオオオオオオオオオ!!!!」」」
「ひっ!?」
複数の男の叫び声が下から響いた。
なにかに襲われている、と言うよりは気合を入れるような声だった。
一体、下では何が行われているんだ?
ブチッ
「あっ」
掴んでいた縄がちぎれた。
「う、おおおおっ!?」
運良くクッションのようなものの上に落ちたおかげで怪我は無い。
真っ暗で何も見えない。
水が漏れだしているのか、地面が水浸しだ。
「ユウキっち平気?」
「大丈夫だ。縄梯子がちぎれて戻れそうに無いから、上で縄とか探してくれないか?」
「了解。気をつけてね!」
創造した懐中電灯で照らした。
「…え?」
地面の液体は水ではなく、大量の血だった。
一番奥には祭壇のようなものがあり、そこには様々な動物たちの首が並べられていた。
そして、その前で1列に並んで膝をつき、項垂れる6人の男たち。
全員、腹に短剣を刺し、自分で内臓を掻き出して死んでいた。
「なんだよこれ…」




