春
春ですね…
「ふむ…特におかしな所は無いようだが…」
手術台に横たわる俺の身体を撫でまわしながらそう呟くアンソルス。
現在は良くなったものの昨日までの馬車酔いが酷すぎたため、他の原因があるのではないかとメレスの所を訪ねてみた。
メレスは不在だったため、アンソルスが診てくれることになった。
指先で魔力を感じ取り、魔力の流れに乱れが無いかで体内の異常を探し出すことが出来るという。
が、しかし、どれだけ探しても異常は見つからないらしい。
「仕方がない。次にお主が遠出する時までには酔い止め薬を作っておいてやろう」
「そうか…ありがとな」
「ああ、今のところ義手作りくらいしかやることが無いのでな。休憩中の暇つぶしにちょうどいい」
魔王城に迎え入れられたアンソルスは、メレスの部下という扱いで城内に住むことが許された。
メレス本人は母親であり師匠であるアンソルスに幹部の座を譲ろうとしていたが、アンソルスはこれを拒否。
理由は面倒臭いから、だそうだ。
そんな訳で、今はメレスの仕事を手伝いをしつつ、アニスの義手を作ってくれている。
俺は手術台から起き上がり、少し乱れた服を整えた。
「どうだ、暇なら紅茶でも淹れるが…」
「すまん、今からエメラと出かけるんだ。気持ちは嬉しいが、また今度で」
「そうか…それは残念だ。また何かあったら来るが良い」
改めてアンソルスに礼を言い、部屋から出た。
今日は、暇ならあーしの任務に付き合ってよ!と、エメラに言われてしまったので、ついて行くことになってしまった。
城から出て、魔王国の北門に向かう。
「おーい!こっちこっちー!」
北門の前で待っていたのは、大きく手を振るエメラだった。
「よーし、じゃあ行こっか!」
そう言って暖かくなってきた森の中を散歩気分で歩き始めた。
そろそろ春になるそうだ。
よく考えたら俺がこの世界にやってきたのが秋の終わり辺り…
この世界に来て冬という長い期間を越えたのか…少し感慨深いな。
…そういえば今どこに向かってるんだ?
二つ返事でOKしてしまったので、詳しいことを聞いていなかった。
「なぁ、暇だから承諾したけどよ、今から何をするんだ?」
「言ってなかったっけ。門番の人から魔王国付近で怪しい動きをしてる団体が出入りしてる建物を発見したって報告が入ったから、様子見と、出来そうなら制圧するって任務だよ」
「うげ…面倒くさそうだな」
「だよねー♪︎」
…楽しそうだなこいつ。
「あ、あれだよ。前までは木こりさんが使ってたらしいけど、ずっと放置されてたんだってさ。よーし、じゃあ…突っ込んじゃおう!」
「待て」
「うげっ!?」
襟を掴んで静止した。
喉を撫でながら蹲るエメラ。
「な、なにすんのさ…」
「よく見ろ。こんなに光が少ない森の中なのにも関わらず、家の中に明かりがついてない。多分、誰も居ないぞ。怪しまれない為のブラフかもしれんが、1、2時間くらい様子を見た方がいいだろうな」
「なるほど…さすがユウキっち。頭良いね」
明日から専門学校に通い始めます。
同じ学校に進学する友達がいないので不安しかないけど、せめてぼっちにだけはならないように頑張る。




