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銃は剣よりも強しっ!  作者: うらにうむ
第二章 魔王国
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魔女


私は、生まれた日から魔女としての生きていく他に道がなかった。

先天性の奇病、魔力結晶病という病に侵されていた。

生まれつきマナの吸収量が多く、一日に吸収するマナの量は常人の約3倍。

そのため、身体にかかる負担もその分大きくなる。

簡潔に言うと、マナを魔力に変換する器官が常人の3倍の速度で劣化していくというわけだ。

この奇病は約30年は正常に生きられるものの、それを超えると器官の働きは徐々に緩やかになり、変換しきれなくなったマナが臓器を蝕み始める。

臓器に付着したマナは、結晶化を始め、臓器のパフォーマンスを落としていく。

そして一年足らずで死に至る。

安直な名前にしては凶悪な病である。

約400年前、臓器を侵食される苦しみに耐えかね、自決しようとしたときだ。



暗い森の中で、手に持ったナイフを胸に突き刺す瞬間、頭に激しい痛みが走った。

とうとう脳にも浸食が始まったのだ。

もはや動くこともできない。

私は死ぬことすらできないのか。と絶望し、じわじわとにじり寄る死への恐怖で震えていた時、顔色の悪い男がこちらに近づいてきた。

その男はとても苦しそうな顔をしていたが、倒れている私に気が付くと、真っ先にこちらにやってきた。


「この魔力…貴女はまさか…」


そういって、私の身体のいたるところを触り始めた。

気持ちが悪いと突き飛ばすこともできずに、我慢していると、悲しそうな顔をして言った


「もう、手遅れ、なんですね」


男は魔術師らしく、身体を触っていたのはマナを量っていたためだと、謝ってきた。


「私は…もう、死ぬんですよね…」


「…」


目を伏せ、何も言わなかった。


「…ええ、分かってましたよ。幼少のころから医者から言われ、親に言われ、周りの大人からは何度も言われてきました。だから、分かっていました。わかっていた、はずなんです」


「…」


「死にたくない…お父さんも、お母さんも、兄さんも妹も…友達も、大好きな、あの人とも…永遠に分かれるなんて…いやだ、よぉ…」


涙を流す私を暗い表情で見つめる男。

しばらくの沈黙の後、彼は突然私の涙を拭い、こう言った。


「…私なら、貴女を生かすことができます」


「え…?」


「ただ…この方法は貴女を残酷な未来へと導きます。貴女はいずれ、判断を誤ったと後悔するでしょう」


「…」


「…私は貴女を魔女にすることができます。後悔をしないなら、貴女に不死身の身体を差し上げましょう」



魔女となった私を、家族や恋人は温かく迎えてくれた。

ただ、周りは老いていく中、自身だけは29歳から姿も変わらず、周りの者たちは全員死んでいった。

夫を看取ったときの喪失感は尋常ではなかった。

きっと私を魔女にした魔術師が言っていた残酷な未来とは、このことを言っていたのだろう。

いつまでも喪失感に苛まれながら生きている、という生活をやめたくて旅に出た。

見聞を広め、魔女らしく魔術の勉強も始めた。

そんなある日、盗賊団に襲われた。

苛立った私は、その盗賊らに自身が編み出した魔術を試した。

あるものは炎で体を内側から焼かれ、あるものは眼球が凍り、あるものは毒で内臓が溶け、それはもう悲惨な状況だった。

それから、私は賞金稼ぎになった。

悪を滅ぼすという建前を掲げ、魔術を試したいという好奇心で1000人以上も殺した。

そんな生活を8年続け、私は旅をやめた。

単純に飽きたのだ。

賞金稼ぎも、悪党は潰しても沸いてくる蜚蠊と同じで、同じことを繰り返すのに飽きてしまった。

それから私は家を買い、静かに生活していた。

面倒事が舞い込んで一つの国を滅ぼしたこともあったが、些細なことだ。

大人しく魔術の研究をしながら、好きな本を読み、何もしない日々が楽しかった。

いろんな国に移住しながら、のうのうと過ごしていた。

そして数年前、家の前に赤子が捨てられていることに気が付いた。

実験にでも何でも使ってください。と書かれたカードと共に。

娼婦の捨て子であったことは一目でわかった。

私はその赤子を養うことにした。

弟子というものを作りたかったというのもあったが、生まれつき、この病で子供を作ることができなかったので、子供を育ててみたかったのだ。

それからは初めての連続だった。


赤子の夜泣きはこんなにも激しいものなのか。


赤子はなぜ泣いているのか。


赤子の顔を見ているとなぜこんなに心が穏やかになるのか。


赤子が楽しそうにしていると、なぜこんなに笑顔になるのか。


赤子…娘は、大人になったらどのような姿になるのだろう。


久しく忘れていた、愛情というものを思い出せた。

6歳になった娘は、とても賢く、余が教えたことは何でも覚えていった…魔法以外は。

なんと、この娘は絶望的なまでに魔法の素養が無かったのだ。

残念であった…が、そんなことはどうでもいい。

魔法が使えようが、使えまいが、娘は娘だ。


私は、幸せ者だった。


こうして殺されようとしているのに抵抗しないのは、きっと心が満足しているからだろう。

私はあまりにも生き過ぎた。

この辺りで死ぬのがちょうどいいのかもしれない。

ただ一つ、心残りがあるとしたら、大人になった娘をこの目で見たかった。

魔女は空中に漂うマナの供給が止まり、体内の膨大な魔力を消費し切るまでその体は老いることなく、朽ちることなく、死ぬこともない。仮に刃物で切られたとしても、魔力によって即座に修復される。

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