権能
うっほほほほうほほーいうほっほうほほ!
うほほほほいうほほほほほほ!
特に意味はない
「おわぁっ!?」
「「!?」」
「魔王様、侵入者です」
中に投げ入れられ、ゴロゴロと転がる。
一番奥の大きな机のところに、俺よりも少し背の高い、紫色の髪に羊角が生えている女性と、先ほど部屋に入っていった金髪の女性が立っていた。
察するに羊角の生えている女性が魔王だろう。
『ちょっと!なに冷静に分析してるんですか!』
(そうだった。めっちゃピンチじゃんか俺!)
スモークグレネードを投げようと腰に手を…
「侵入者に命令します。動きを止めなさい」
羊角の女性が腕をこちらに突き出すと、腕にあるタトゥーみたいな模様の一部が光とともに消え…
「!?う、動けな…」
起き上がるために地面に片手をつき、もう片方の手を腰に伸ばしている、不自然な体勢で体が固まった。
『あー…そういえば、ユウキさんが使っている創造の権能と同じく、彼女も権能使えますよね…』
(そんな大事なこと忘れんなよおおおおお!!)
「コルネ、その人を地下室に運んで、朝まで監視しててくれますか?」
「えー…仕事で疲れたんですけどー…ほら、行くよ。って動けないんじゃん!もー!運んでってそういうことですか!?」
魔王の隣に立っていたコルネと呼ばれた女性が俺を背負って部屋の外に連れ出された。
(あっさりつかまったな…)
『まずくないですかこれ?』
(地下室ってことは監禁か…即座に殺さないだけありがたいな)
「ふわぁ…ねみゅい…なんで今日に限って侵入なんてしてきたんですかぁ…」
~~数分後~~
「ほら、ここに居てくださいよ」
牢屋の中に入れられ、手錠をされた。
そこでようやく体が自由に動くようになった…いや、手錠あるから自由ではないが。
コルネは牢屋の前の椅子に座っている。
(とりあえずニッパーを創造して手錠を…)
『ユウキさん、この部屋、変です』
(変?)
『この部屋には微塵もマナが浮いてないんですよ。実体化できません…』
(ほんとだ、ニッパーが出てこない…腰につけてた道具も無くなってる)
この世界には大気中にマナが含まれている。
マナを体内に取り込むと魔力に変換され、それを使って魔法を使う。
いわば魔力の源のようなものだが、ネムの実体化も、俺が使う創造の権能も、マナを集めて行っているので、ここにいる間の俺は完全に無力化されていることになる。
『部屋にマナ障壁の魔法でも貼られてるんでしょう』
(ちっ…朝になるまで待つしかないか…)
『彼女の権能は『命令』ですね。生き物は命令することで思いのままに操ることができます』
(うえぇ…厄介だな…闇討ちするしか)
『かもしれませんね…』
「すぴー…」
…監視係が寝てるのに何もできないってこんなに屈辱的なんだな!
~~翌朝~~
コツ、コツ、コツ
「むにゃ…」
「コルネ、監視係が寝ちゃダメじゃないですか」
「ふあぁ!?」
魔王が地下室に降りてきた。
緊張で眠れなかった。まぁ当然だろう。
「さて、侵入者さん、話をしましょうか。ついてきてください」
手錠をつけたまま、執務室に連行された。
そこには、昨日の茶色の髪に羊角が付いた、魔王と同じ顔の人物がいた。
「ネムちゃん、約半年ぶりねぇ?」
『う…』
見た目とネムの反応からしてこいつが女神ゼランだろう。
「あなたと話したくないのでここから出ません…って言ってるぞ」
「うふふ、相変わらずねぇ」
「それじゃあ、名前を教えてくれますか?」
どうせ権能で言わされるのだから、抵抗するだけ無駄だろう。
「…神田優希だ」
「神田…優希…」
魔王はそう呟くと口を半開きにしたまま動きを止めた。
そして、ゆっくりと顔をこちらに向け、口を震わせながら言った。
「え…せ、先、輩?」
先輩…?
人生で俺のことを先輩と呼ぶ人物は一人だけだ。
つまり…
「つ、ツムギ?」
「え?」
「え?」
「「えええええええええええ!?」」
ツムギとの再会を果たしたユウキ!果たしてツムギの思惑とは…!
次回!ユウキ死す!
もちろんこれにも意味はない。