魔王城
魔王城の城下町の外壁に到着した。
持ってきた黒い服を身にまとって、フードで髪を隠した。
腰にはサイレンサー付きのハンドガンと、逃げる時用にスモークグレネードをぶら下げておく。
『どうやって街に侵入するんですか?』
「みてろ、これくらいなら…」
煉瓦でできた大きな外壁のくぼみに指をかけて…
「よっ、ほっ」
壁をすいすいと登っていく。
獣人の筋力だからこそできることだ。
忍者になった気分で、外壁を登りきり、下に降りる。
「ほら、成功」
『おお~かっこいいですね』
「このまま城の壁も登って、窓から侵入するぞ」
町中を走り抜け、あっという間に城の裏手に着いた。
結構小さめだな、この街。
(ネム、気配とかでどこに魔王がいるとかわかんないか?)
『えーっと…四階の…どこかから神の気配を感じます』
(ざっくりしすぎだろ…っていうか、お前がわかるってことは、向こうも気づいてるんじゃないか?)
『遠いんだから仕方ないじゃないですか…私の神威は極限まで抑えてるので、目の前まで行かない限りはばれないと思いますよ』
四階か…さすがに高すぎるな…
表面のくぼみも少ないから、慎重に行かないとな…
~~十数分後~~
「はぁ、はぁ、やっと届いた…」
窓枠に指をかけ、中をのぞく。
消灯しているのか、廊下は真っ暗だ。
しかも窓空きっぱなしじゃん。不用心だな…
(よし、侵入成功だ)
人の足音も聞こえない、みんな寝ているのか?
『まっすぐ行って二つ目の角を右に曲がったところにいるようです』
(了解)
腰から銃を抜き、足音を殺して歩く。
「うええ…づがれだ~…」
(!!)
コッコッコッ、と階段から誰かが上がってくる音が聞こえた。
とっさに、近くにあった観葉植物の陰に隠れた。
女性は鼻歌を歌いながら奥へ行き、二つ目の角を曲がった。
ガチャッ
「魔王様ー、ただいま帰還いたしましたー!褒めてー!」
バタン
(…どうする。これで部屋内に居るのが魔王が一人じゃないことが確定したぞ…)
『もう思い切って突っ込んじゃったらどうでしょう』
(軽々しくいうなよ…そんな簡単にいくはずねぇだろ)
部屋の前で硬直状態が続く。
「それで、今は~~」
「ええ、~~」
扉に耳を当てて中の会話を聞く限り、中に居るのは二人だけのようだ。
今入っていった奴が出て行ってくれたらうれしいのだが…
どうやって中に…と考えていると、突然体が軽くなった。
いや、俺、持ち上げられてね!?
「おい小娘何をしている」
背後から、女性の声が聞こえた…
「えっと…そのー…特に何も?」
『嘘つくの下手すぎませんか!?』
「…」
俺は部屋の中に投げ入れられた。