侵攻
前回の話から二か月後の話です。
~~魔王城~~
「準備が完了しました、魔王様」
「そうですか…」
この世界に来てから約半年。
とうとうこの世界を変えるための計画を実行する日がやってきた。
「とうとう、始まるわねぇ?」
「わっ、もう、出てくるなら言ってっていつも言ってるじゃないですか」
「うふふ、ごめんねぇ?」
突如として現れた、私と同じ顔をした女神がニヤニヤとこちらを見ている。
たぶんわざとなんだろうなぁ…
お姉さんみたいな見た目とは裏腹に、割といたずら好きなんだよな、この女神。
「魔王様、拡声器をどうぞ」
「うん、ありがとう」
綺麗に整列している兵士たちの前方に立った。
こう見ると結構多いなぁ…
『あーあー、マイクテスト、マイクテスト。よし』
『諸君…いや、いいや。私、堅苦しいの苦手ですから。おはようございます、朝早くに集まってくれてありがとうございます。今日から魔王軍の侵攻が始まります。もちろん簡単なことではありませんが、必ずやり遂げましょう』
『私は戦闘が苦手なので、いつも通り上から見ていることしかできませんが、精一杯の激励を行いたいと思います』
精一杯息を吸い込んで、右手をみんなの前に突き出す。
『目標は西の国への侵攻!』
『兵士全員に命令します!誰一人欠けることなく帰還しなさい!』
そういうと、光とともに右腕の刺青のような紋章の一部が消えた。
「「「「「うおおおおおおおおおおおお!!」」」」」
『それでは、健闘を祈ります!』
そう言って、拡声器のスイッチを切った
「わーお…その力、こんな大勢にも使えるんだね」
「試したことなかったからちょっと不安だったけどね。それより、早くいかないと」
「そうだね。じゃあ行ってくるよ~」
きっと成功するはず。
負けないでね、みんな。
~~マッシュ~~
ダンテと一緒にクエストをやるようになって約二か月が経過した。
相変わらず俺の『戦争屋』は武器を自在に扱えること以外分かっていない。
「~~♪」
「聞きなれない歌ですね。師匠の故郷の歌ですか?」
「おう、俺の好きな歌の一つだ…ふんっ!」
ダンテと適当な話をしながら倒したゴーレムの皮膚を砕く。
ここ最近、ダンテの伸び方は半端なく、ギルドの受付嬢からは人間の中では珍しいくらいだとまで言われている。
高難易度まではいかないが、討伐系のクエストは簡単に達成できるようになっていた。
「あった。核だ」
「じゃあ、帰りましょうか」
「だな」
珍しくついてきていないネムのことも心配だし、早めに帰るとしよう。
~~一時間後~~
「ただいまー」
「ユウキさん!ちょうどいいところに!」
「?」
「魔王が西に侵攻し始めたと!妖精からの知らせが!」
「え?」
人間界は西、魔界は東。
魔王城がある魔界から西に侵攻、ということは…
「人間界に侵攻し始めた…?」
ここから一気に話を進める予定です。