理由
今回はネム視点
ユウキさんはなんで泣いていたのだろう。
悲しそうだったから雰囲気的に慰めてしまったけど、はっきりと原因がわかっているわけではない。
たった一日で死んで性別変わって違う世界に来たんだから、ストレスが原因ということもあり得るだろう。
そう考えると罪悪感が…
私の浅はかな考えでユウキさんをここまで苦しませていたとは…
ふと、ユウキさんの昨日の言動を思い出したが、昨日のユウキさんの、ユウキさんは生に対する執着心が薄い気がする。
死んだときも淡々としてたし、意味のない人生が~ってのも引っかかるし…
…ということはやっぱり、ユウキさんの過去に関係していることだろうか?
昨日も前世のこと話したくなさそうだったし、流石に話してくれなそう…
でもユウキさんのことについてもっと知りたいし…
「ネム、どうした?なんか言わないと不安になるんだけど」
『あっ、すみません、ちょっと考え事を…』
「…夜中のことか?」
『えっあっ、はい、そうです…なんでわかったんですか?』
「朝起きてからそのことについて触れなかったし、気になってるんじゃないかと思ったんだよ」
『…聞いてもいいですか?』
「んー、前世での、好きだった子と過ごした最期の日のことを夢で見たんだよ」
『…え?最期って…』
「もうその子は死んでるよ。病気でな」
『…』
ユウキさんは好きな子を亡くしたことによって、生に対する執着心がなくなってしまったのかも?
なんて単純な…でも、その子がいない世界が嫌になるほど、その子のことを愛していたのでしょう。
「なぁ、向こうの世界で死んだ人間がこっちの世界に来ることってあるのか?」
『ほとんどありませんが、私とユウキさんみたいに、神と一緒に降りて来ることならありますね』
「…そっか」
『ええ、もしも探したいのなら、私も手伝いますよ』
「…いや、大丈夫だ。いるかもわからない人を探すのはさすがに難しいだろ。もしも居るとしても、向こうにもやることがあるだろ。邪魔はしたくない」
『そうですか…ユウキさん、その子との思い出とか、聞いていいですか?その、ただの興味本位なんですが…』
「おう、いいぜ。その子の名前は、妻鳥 紬。ツムギは俺の一つ年下の後輩で…」
ユウキさんは、目的地に着くまで、ツムギちゃんとの思い出を話してくれた。