魔物との戦い
全力で書いてこの投稿スピードが限界です…。
他の先生方の随筆スピードはどうなっているんだ…
どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする。
死神が俺を絶望させるために時間を引き延ばしていようと、木々や波が俺を嘲笑っていようと構わない。全力で利用してやろうではないか。
波が揺れている。真後ろに海があるんだろうな。そこに逃げ込むか。断じて否だ。そもそも俺は泳げないしあの一角兎は普通に泳いでくるだろう。そもそも元気なときで溺れるのだから、今のこのコンディションなら言うまでもないだろう。
木々が揺れている。近くに枝などが落ちているのだろうか。一角兎はあのビジュアルだったら攻撃は角を使った突進か噛み付きだろう。十中八九突進だな。それが外れて至近戦になったら噛み付いてくるのか。それだったらカウンターで枝を目か口内に突き刺せば大ダメージ。あわよくば倒すことが出来るだろう。
俺は枝を探した。右を見て左を見て…左斜め先に太く五十
センチ弱の尖った手頃な枝が目に止まった。距離は体を少し動かして手を全力で伸ばせば届く範囲だ。
あと十七歩。下手な動きをして刺激する前に他に何かないかを探さなければ。最悪枝一本で戦うことになるのだろうがそれは出来れば避けたい。手頃な石があれば投げて牽制したりすることが出来るだろう。
石は…無いか。それ以外には下にある砂か。石を投げるなどの攻撃は避けられる可能性があるが砂を投げたりするような全体攻撃系なら当たるだろう。あわよくば目に入ってくれれば痛がって時間稼ぎになるはずだ。
逆上しなければの話だが。
あと十五歩。何か他にはないのか。他には何か。視界のもの全てを見逃すまいと凝視して見れる範囲全てを見渡す。
すると俺にとって嫌なものが目に入った。俺の家にあった妙な違和感だ。次元の扉だったか。
俺の家のときは妙に蹴りたくなるだけだったが、今ははっきりとそのものを理解しているせいか、空間の歪みとして認識できる。眼鏡の境目みたいな感じだな。
それが一角兎の後方にある。移動すること自体が既にハードルが高いのに一角兎を突破することなど夢のまた夢だろう。
と、思うのだが、あれに入れれば元の世界に帰れるかも知れない。そんな儚い希望もあり、それに今この状況でどこかに逃げるのは困難だ。それだったら安全地帯に転移のような移動を出来る次元の扉を突き破って逃げるほかないだろう。そんな考えも頭をよぎる。
もし、それが原因で死ぬこととなったとしても仕方あるまい。どうせ、このままだったら死ぬんだ。
あと十二歩。やるべきことが決まったら距離がある内になるべく早く動くべきだ。今も全身から訴える痛みを無視して左側の枝を取りに行く。
一角兎はその行動を見て駆け寄ってきた。予想通りだな。俺は左手で枝を掴むと空いた右手で砂を乱暴に掘って一角兎にぶつけるように投げる。
その砂が目に入ったようで一直線に突っ込んで来ていた一角獣が体を捩って目を拭おうとしたのか前足が上がる。
好機。動物は基本的に腹が弱い。その弱点を晒すのは下策だ。俺は左手に持った枝を手首を外側から内側に回す動きに合わせて動かし、一角兎の腹を抉った。
それにより一角兎は「キュルリルッグルゥ…」とそこそこ可愛い声を漏らした。俺は一角兎の腹を抉ったときの生々しい感触と今の声を聞き、今俺は生き物を自分の手で殺そうとしているということを実感した。
魔物であろうとも生き物は生き物。生まれてからの今までの一生があり、命がけの食事を取りながら生きてきたのだ。その一生を俺の手で終わらせる。そのことの重さが俺の心にのし掛かってくるが、俺は迷わない。
生きるために喰う。生きるために殺す。上等だ。心も痛むし、本当ならやりたくない。それでも迷わない。この気持ちなら大丈夫だろう。心が麻痺することは無さそうだ。
一角兎は俺の周りを左回りに回り始めた。奴から見れば右回りか。先程俺に抉られたところをカバーしつつ牽制しているのだろう。
一角兎はぐるぐるとぐるぐると一定の距離を保ちながら回り続ける。次元の扉と一角兎の距離が最も遠くなったタイミングで、俺は一角兎の進行方向へ向けて再び砂を投げた。
一角兎はそれを右にステップを踏むことで避ける。傷が開くので左には動けないのだろう。砂が当たるのが理想だったが、二度しかもカウンターですらない状況では食らいはしないことは想像していた。
俺は枝を両手で上から大きく振りかぶった。その瞬間一角兎は突進してくる。動物の本能ならこんな大きな隙を見せたら飛んでくるだろう。
動物の本能なら。対人戦ではこんな大きな隙だらけのような行動でも間合いに綻びがないことはバレる。目線を狙いの場所からずらす等の心理戦も要らないので楽だ。
一角兎の突進に合わせて俺は右に半歩動く。一角兎の角は長いものの先端以外は脅威ではない。それに奴は咄嗟に左に方向転換は出来ないはず。
現に一角兎は俺の方に向ききれず、側頭部を晒す。そこに俺は右の足刀蹴りを放った。
一角兎は自らの突進力がそのままインパクトとして返ってきた形になり、首が変な方向に曲がりながら倒れた。
ここで止めを刺そうと思えば刺さる気がする。しかし、最初は逃げるつもりであったしこれ以上体を酷使するのも後遺症が残る原因になるだろう。この魔物が悪さをする可能性もあるが、このボロボロの状態の俺ですら対応可能なのだ。この異世界の人達なら鼻歌混じりで倒せるだろう。…何より自らの手で殺したくなかった。
俺は痛みを無視して次元の扉へと駆ける。ここに入る恐怖もあるが、それ以上にこの異世界の魔物と遭遇する恐怖の方が高い。ここら一帯の魔物が一角兎だけということはないだろう。
取り敢えず次元の扉の周辺に陣取っておけば緊急時においても何とかなるはずだ。
俺が次元の扉に辿り着く寸前に新たに現れた一角兎が視界に入った。やはりこの選択は間違っていなかったんだな。さっき止めを刺していたら新手の一角兎にやられて死んでいたな。
俺は次元の扉を殴りつけ破る。その瞬間俺の意識は闇に引き摺り込まれた。
初の戦闘描写となりました。皆さんは楽しめましたでしょうか?怜が考えている通り一角兎は脅威度は低い魔物なので、然程苦戦せずに倒せました。
しかしこれは、怜の格闘スキルの高さによる勝利でもあります。




