神による異世界転移
俺はフカフカのベッドの上で目覚めた。
「あれ?何がどうなったんだっけな?」
俺が疑問を口にすると傍に見覚えのある知らないじじぃが答えた。
「わしがシャルアでわしを助けてくれたお主を気絶させてしまったんじゃ。」
そうは言われてもあまり覚えていない。家で蹴りを打って落ちて…あぁあの攻撃してきた恩知らずの不審者ハゲタンコブヒゲじじぃか。
「今、物凄い失礼な納得の仕方をされた気がするのだがのぅ?」
攻撃してきた恩知らずの不審者ハゲタンコブヒゲじじいが俺の心を軽く見透かしてきたのでムッとした俺はじじぃの呼び方に無神経なクズを追加をそっと心は底で追加したがそれを表に出さずに言った。
「気のせいだよ、気のせい。ちゃんと普通に何の偏見もなく納得したよ。」
「何を念押ししておるんじゃ?再び失礼なことを考えておったように見えるぞ?お主はわしを何と呼んでおるんじゃ?」
何を言ってもこのハゲ頭を赤くしたタコじじぃの追求からは逃れられない気がしたので
「助けた俺を攻撃してきた恩知らずな無神経なクズの不審者ハゲタコタンコブクソヒゲじじい。」
正直に答えてやった。そしたらじじぃは顔を更に赤くして
「な!?な、なな、お、お主…お主への感謝と罪悪感がなかったら流石に消しとばしておるぞ!?」
じじぃから物騒な言葉が飛び出して来たので記憶に違和感があることに気が付いた。俺は何で気絶したんだ?シャルアってなんじゃそら。攻撃を受けた際に打撃がではなく、ピカッと何かが光った気がしたんだが…
「シャルアは光属性の初級魔法じゃ。危うく殺してしまう所だったわい。」
「ちょい、ちょいタンマ。心を読まれるのってムカつくなぁ。それと魔法?じじぃの頭がイカれてる訳じゃなけりゃ…イカれてないという設定は無理があるな」
俺は思ったことを口にして思考に沈んだ。心のどこかでは分かっている。異世界転生…そういうものかも知れない。それならば俺は死んだと言うことだ。ただ、創作物の話だからそんな訳が…
俺はお主!!とかいい加減にせんか!!とかいう声をBGMにしながら現実から逃げていた。俺は彼女こそ居なかったものの、友人は多かったし家族関係も良好。高校も悪くないので将来もある程度保証されていた。海藤怜の人生はある程度明るかったはずだ。昔こそ異世界転生とかには憧れていたが、今は失いたくないものが多すぎる。いくらいい訳を考えようとこのような思考になっている時点で現実には追いつかれつつあるのだが…
「安心せぇ。お主は死んではおらん。現にほれ、突かれたら痛いじゃろう?」
じじぃが持っている白い杖で俺を突いてきたのでムカついた俺は
「いい加減にしろや!そういう意味じゃねえし魔法でぶっ飛ばした説明はしても謝らないわ、人の心を勝手に読むわでろくでもないな!」
そう俺が叫ぶとじじぃは表情をコロコロ変えながら
「確かに謝っておらんかったのぉ。すまなかったと言っとくとするかの。しかしお主はお主で何もしとらんわしにも失礼なことを考えておったじゃろう。そもそも吹き飛ばすまでの経緯としても、花に水やりをしていたわしに空から降って来たお主がぶつかってきよったから倒れておったんじゃぞ?」
と言ってきた。記憶を辿れば俺は落ちていく感覚の次の場面では既にじじぃはノックアウトされていた。花壇には俺がぶっ刺さったでっかい穴が空いていたし、この状況を見るところ俺は全面的に悪いだろう。俺なら花壇に水やりしていて人が降ってきた失神させられた挙げ句花壇まで滅茶苦茶にされたら間違いなくキレる。キレる云々以前にあの世行きだ。
「俺も悪かったっぽいな。まぁお互い様ってことで。ところであんたの名前をまだ聞いてないよな。じじぃ以外に呼び方がねぇんだ」
「お主は切り替えがちと早すぎやせんかのう。…わしの名前は特になくてな。すまんのう。」
それを聞いた俺は驚いたがすぐに納得できた。このじじぃは年齢は80は下らないだろう。そろそろ痴呆症にかかってても…
「わしはそんなんじゃないわ!」
「人の心を読むんじゃねぇ!」
「別に読まなくても大体予想が付くわ!」
「それを心を読むって言うんだろ⁉︎」
「何を言っとるんじゃ?」
「は?」
よう訳のわからんタイミングで怒鳴りあいが始まり一頻り怒鳴り合った後にお互いに齟齬があることに気付いた。
「お主、わしが何者なのか分かっておらんのか?この状況も。」
「そもそもあんたに説明してもらってないしな。名前は無いわ、魔法とか厨二になってるってことしか知らん。そもそも夢かなとも思わなくないし。」
「お主と言う奴は…わしもお主が言う通りボケが始まっておらのかも知れんのぅ。わしも歳か。」
じじぃが何か妙な感じになってきてしまった…。流石に罪悪感があるがここで謝るのも忍びない。
「ボケが始まった自覚がある内はまだ大丈夫だろ。」
俺が少しフォローを入れてやるとじじぃは感心した様子で言った。
「お主は案外優しいんじゃのう。ならわしの知ることの範囲でお主の疑問に答えよう。」
チョロい。このしじぃチョロい。少しフォローを入れただけなのに上機嫌になった。本心から言ったわけじゃないのにな。うん。
「誤魔化さなくても良いのじゃぞ。見せる態度と本心が違うのは利点でもあり欠点でもあるの。」
「あぁそういや、その心を読むってどうやってるんだ?俺の常識だと表情とか目線とか行動とかの細かいところから読んだりするもんなんだが。」
「それはお主の想像しているものとは違うのう。心の声を聞くものじゃ。全てが聞こえるわけではないが、お主が思っておる強い思念波は届くぞ。」
うわ〜ないわ〜。だってさ今まで考えてたこと全部読んでるわけだろ?プライバシーの侵害ここに極まれりだわ〜。取り敢えず釘を刺さなきゃな。
「これ以上人の心は読むなよ?マジで止めろよ?てかさっきからずっと言ってるのに止めてなかったんだな…。はぁ。」
「露骨に溜息を吐くでない。幸せが逃げるぞ?」
「溜息を吐くと健康に良いんだよ。自律神経のバランスが整うんだよ。」
こんな簡単な知識もじじぃは知らないようで驚いていた。小学生の頃一緒に登下校をしてた好きな女子のために毎日雑学の収集は欠かさなかったんだよな〜。
「お主以外と博識じゃのう。それより他に聞きたいことはないか?先程聞きたがっておったことがあるじゃろう?」
聞きたいことは沢山ある。ただいちいち聞くのと面倒臭いので一遍に聞いてやろうではないか。
「一つ、此処は何処か。一つあんたは何者か。一つ俺はどうして此処にいるのか。一つ、魔法ってのはファンタジー系の本物の魔法か。三行でどうぞ。」
流石にこの無茶振りには応えたらしく数秒フリーズしたのちじじぃは答えた。
「わしは神で此処はわしの創った住むためだけの世界じゃ。お主は次元の扉を偶然蹴破ってここに来たんじゃ。魔法はお主の世界…あやつの世界の創作物に出てくる物と同一じゃ。」
こいつは神か。まぁ予想はしてた。さっきだったら驚いただろうけど、何故か精神的に今は落ち着いている。落ち着いている今の内に大事なことを聞かなければならない。
「要は異世界転生、転移ってやつだろ?俺は…死んだ…のか?」
声が震えないように頑張った。でも多分声は震えきっていただろう。俺が思うに死は終わりだ。その人間の世界の消滅だ。実際、俺は意識も記憶もあるが本当に転生なのだったなら元の世界には戻れない。せめて転移であって欲しいという俺の希望は…
「安心せぇ。お主は死んでおらん。ただ次元や世界が繋がる点から来てしまっただけよ。そんなことが出来る者など神しか居らんのだがな。偶然じゃろう。」
叶った。俺は死んでいないらしい。だが、帰れるかどうかは別だ。よくある設定では世界を救ったら報酬で帰れるもの等もあるが俺には無理だろう。それにそこまで残ったら未練が残るかもしれん。一番ベターなのは今すぐ来た次元の扉とやらを通って帰ること。もしくはこの神に帰してもらうこと。
「帰れる方法はあるのか?次元の扉とやらを通って帰るなりあんたに帰してもらうなりが出来たら万々歳なんだが。」
俺の質問にじじぃは顔を顰めた。俺はすぐに悟った。あぁ、無理なんだなと。異常な程に落ち着けている。
「お主が帰る方法はあるにはあるのかもしれん。しかし、先程も言った通りこんなことをするのは神しかおらん。しかもまともな神なら他の世界への干渉はせん。わしの長い神生の中でも渡ってきたのは両手の指で足りるほどじゃ。しかもそいつらは全部滅ぼしてしまっておるからのぅ。例外はあるがお主では無理そうじゃな。」
「残念だ。でもしょうがないよな。誰が悪いわけでもなく次元の扉を蹴破った俺が悪いみたいだし。それでこれから俺はどうすればいい?あと何か異常に落ち着いてるのは何でだ?魔法か何かなのか?」
「それは治療魔法の一種でしておる。お主はこれからわしの持つ世界で生きることを勧めるぞ。わしの世界は魔法やスキルが発達した世界じゃ。他の世界と比較しても相当安定しておるぞ。ちなみにお主の世界は最も安定しておる至上の世界じゃ。」
俺の住んでた世界はそんなに良かったのか。辛かったことも沢山あったが、平和の上に成り立っていたな。戦争も無いわけではなかったが人口の大多数が平和に過ごせていたな。でも地球温暖化とかは深刻だったよな…
「そんなにいい世界か?確かに俺は楽しかったが辛い思いをしたりすぐに死んでいったり時々絶滅とかしてるぞ?」
「あの世界は神の干渉が入っておらん。完全に物理法則に任せてできた世界じゃ。完璧。その一言に尽きる。ただあの世界を気に食わない他の神との戦のせいでほんの少しだけ力が微かに加わってしまったがな。」
「何で神の力が加わっていないことがいいことなんだ?」
「神の力が加わると世界に負担がかかる。それに神の力によって成り立たせたものには何かしら欠点があるはずじゃ。基本的には欠点が少ない世界、神の力があまり掛からず寿命が長い世界が良い世界じゃな。」
「あんたの世界は良い方って言ってたが上から数えてどんくらいなんだ?」
「二番目じゃな。あやつめの世界を除いたら最も優れている世界じゃろう。」
物凄いことを聞いている気がするが、あまり俺自身に関係ないことだ。地球でだってそんなことを知らなくても生きていけた訳だし。
「そんなあんたの世界は俺の想像しているようなファンタジー世界で良いのか?勇者とか魔王とかが居たり魔物とかが居たりするのか?」
「そうじゃな。基本的にお主の世界のファンタジー物はわしの世界の情報が源じゃ。何回か次元の扉が繋がって情報が流れたんじゃ。」
「取り敢えず色々なことは把握した。あんたが転移とかさせてくれるのか?能力とかくれたり。」
「そうなるのう。お主にはわしの世界の環境に馴染みやすいようにしてから送り出すとしよう。」
これから異世界に行くのか。ステータスとか色々なことも聞いておきたいな。作品によって色々な強化方法もあるし、レベルがない作品だってある。まぁ今のうちに聞いておくと
「それじゃ達者での。精々死なないように頑張るんじゃな。」
……………………は?
何がそれじゃだよ⁉︎まだ聞きたいことだって沢山あるし!突然だし!最後の言葉ムカつくし!
「待て!まだ聞きたいk…」
俺はわけが分からぬままピカだという光に意識を引きずり込まれていった…
文字数が中々安定しない…
今不明な点は後々説明されますので悪しからず




