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異世界転移と神との出会い


 「んあ〜ぁーァ〜。疲れはピークピークピーコラッサ」


      俺は海藤怜。高校二年生だ。

  そして、ステータスの割り振りが極端な人間だ。


 自分で思う良い点は、ピアノが弾ける。ボランティア精神ならある。力が強い。格闘技が得意。………


 自分で思う悪い点は、球技がダメ。泳げない。うるさい。

 暗記系が苦手。不器用過ぎる。ダラけ癖がある。尊敬より嫉妬をしがち。全ての五感が鈍い。イケメンではない。身長が低い。考え無し………

 

 俺は平均に出来るものが一つもない。それは利点でもあり欠点でもある。そして大半はさっき言ったような欠点ばかりだ。モテようと思って様々な技能を習得したが、それを補って余りある欠点のせいで彼女は人生で出来たことがない。いい線まで行った人は居るんだがな…毎日メールのやり取りをしてて……何か目が滲むな。止めとこう。


 俺の一日は五時半に起きて六時半まで勉強。それから電車&スクールバスでスマホを見ながら学校に行き、六時まで吹奏楽部での練習をし、帰ったらピアノ&スパーリングをして気が向いたら勉強するという、結構我ながら忙しいスケジュールだ。


 今日もいつもと殆ど変わらない一日のはず…だった



 土曜日の部活が終わり、疲れがピークに達した俺は七時半に帰宅すると制服から着替えもせずに即机に突っ伏した。両親は九時半まで帰ってこないので今はフリータイムだ。

 

  「1、3、1、1、2…と」


 少し経って回復した俺は未だに着替えもせずにピアノを脳内で弾きながらシャドーボクシングをしている。いつだかにこの光景のことを友人に話したら変だと言われたが毎日の習慣だ。今更変えられる訳が無い。


 思考が逸れているなと、意識を脳内ピアノに向けようとしたところで無性にハイキックを打ちたくなった。そして何故か打つポイントも定めていた。何もない空間なのにだ。数秒後の俺は何故その違和感に気付かなかったのかと責めることになるのだが、そんなことを知る由もない現在の俺はそのポイントへ向けて思いっきり蹴った。そしてバリンとガラスが割れたような音がした瞬間、俺の意識は闇に引きずり込まれた。




 自分が落ちていくのが分かった。夢でみんなが見るものと同じだ、いやあれよりも落ちる感覚がはっきりとしている。背中がゾワっとするあの感覚は夢の何倍にも敏感で明確に伝わり、意識も闇の中でハッキリとしている。手を、足を、首を、腰を、指を、体の動く全てを動かし足掻く。しかし、それはただ平衡感覚を崩し落ちる体制を悪化させる結果を招く。


 人間は死ぬ瞬間に時間がスローモーションになり走馬灯を見るという。そんなものは信じたことが無かったが、実際にはあった。足掻く自分の体が動かない。あまりにも動きが緩慢だ、いや体が動かないのではなく、体が意識についていないだけなのだ。


 俺は全てがスローになった世界の中で走馬灯を見ながら人生を振り返った。後悔ばかりの人生だったが楽しい人生だったと思う。バカをし、先生に怒られることも少なく無かったが俺の周りには笑顔が溢れていたように思う。友達にも恵まれ男子と暴れ女子と楽しく話す理想の毎日だった。成長するにすれそういうことも無くなっていったが。

 「いのちのうた」という曲にささやか過ぎる日々の中にかけがえのない喜びがある。という歌詞がある。それに俺は大いに賛同だ。日常は忘れゆくもので、大きな行事だけ残ってしまうが一日一日が宝物なのだ。俺は一つ一つの思い出を忘れないよう頑張っている。こうやって成長して幸せな日々から遠ざかって残させるのは思い出だけなのだ…


 どうやら時間制限がきたらしい。視界だけでなく意識まで闇に引き摺り込まれていく。異常に冷静に状況を判断できているのは精神が少しおかしくなってしまったのだろう。少しずつそれとは違う狂い方をしていく。異常に冷静な頭はパニックになり自分の置かれた状況を判断できていたものが全て消え失せる。思考力まで呑まれ何もかもが消えていく


…何も見えない聞こえない落ちていくもがいてももがいても何もない何故落ちていく感覚だけあるんだ何故こうなった何故あの違和感に気付かなかったのか何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼの、、ナゼナゼナゼ、、、なぜ




 


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 ふと目が覚めると俺は何かを食っていた。地味に湿っぽくて口に纏わり付く。口がパサパサする。そして不味い。


 「うゔぅぇっぺっぺっぺー!クソマジぃ!土じゃねぇか!」


 自分の状況を恨みながら周りを見るとハゲたヒゲじじぃがそのハゲた頭にタンコブを付けてひっくり返っていた。アニメだったら目がぐるぐる巻きになって星が回ってそうだなとろくでもないことを考えながらじじぃに声を掛けた。


 「お〜い、じぃさん?あんた大丈夫か?聞こえるか?

お〜い?…反応ねぇな?ヤバくねこれ?」


 人が倒れているところなんて格闘技以外で見たことがない俺は焦った。確かこういう時は周りの人を呼べばいいはずだ。そう思い周りを見渡すと登り切った太陽、広い花畑、白い宮殿、白い地面、そして俺が落ちたでかい穴。理想の空間ではあるが、今この状況には相応しくない。

特に人影がないことを確認すると、またじじぃの方を確認する。そうすると白い法衣に白い模様入りの杖。すぐそばに未だに水が溢れ続けている白いじょうろに気が付いた。

俺はすぐさまじょうろの水を全部頭にぶっかけて頭を冷やそうとした。意味があったかどうかは知らんが。そして取り敢えずじじぃを背負って宮殿まで歩き始めた。俺はじじぃの安否のみを考えていた。直前の闇とこの白い景色を照らし合わせれば何が起きたか想像に難くない。それに気付かないようじじぃの安否のみを考えていた。


 そして宮殿に付いたと思った矢先に急に気絶していたじじぃが覚醒して俺を突き飛ばした。

        

 「なんじゃお主は!シャルア!」


 俺は訳が分からぬままピカッという光に意識を引きずり込まていった。



小説初投稿です!みなさんが面白く読めるように精進して参りますのでよろしくお願いします!


ちなみにシャルアは光属性の初級魔法です。

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