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手榴弾

作者: あいうえお.

 炎天下。


「これなに〜? これなに〜〜??」


 息子3歳が叫んでいる。彼は公園の隅の、開花前のドピンクの花を指差している。


「これなに〜〜? なになに〜〜?!」


 息子の問いは答えない限り永遠に続く。


 ポトリ。腕に抱く、眠る娘1歳の帽子が地面に落ちた。屈むと腰が悲鳴を上げる。娘は熟睡中でもベビーカーに乗せようものなら瞬時に目を覚まし泣き喚くのだ。


 私はやっと口を開く。

「……オシロイバナ」

「おしろばなぁ〜〜?」

「オシロイバナ」

「おしろぉばなぁ〜〜!」

「そう。オシロイバナ」


 夕ご飯何にしよう。じゃがいもをそろそろ使い切ってしまいたい。じゃがいもの味噌汁……でもじゃがいも、息子は好きだが娘は食べない。白菜もある。でも緑色、息子も娘も食べない。人参。娘は食べるが息子が食べない。


 メンドくせぇなぁ〜〜〜〜オイ!!!! 難解なパズルかよ!!


「これなに〜〜? なになに〜〜〜??」

息子はオシロイバナの種をつまんでいる。


「種」

「たね〜! おしろぉばなぁ、たね〜〜!!」

「もう帰ろうか」

「まだあそぶぅ〜〜!!」

「……じゃああと2個とったらおしまいね」

熱中症なるわ。

「たね〜〜! まだあそぶぅ〜〜!!」

「じゃああと3個」

「さんこ。かえるぅ!」

両者の妥協により解決。


 しかし3つの種の採取後も、息子に動きはない。ひたすら黒い種を探している。もう説得する気力もねぇ。何なの4連休。しかもさらにその後に、夏休みと言うラスボスが控えているのだ。


「手榴弾みたいだね」

「しゅりゅうだん〜〜?」

「うん、手榴弾」

「しゅりゅうだん、いっぱいとる!!」


 結局夕ご飯は豆腐オンリーの味噌汁と焼き魚にした。みんな好き。みんなハッピー。これで勘弁して下さい。




 夏休み直前の日の午後3時過ぎ。幼稚園のバスが息子を乗せてやって来た。今日のバス当番は息子のクラス担任の若い先生だ。


「ヨウくん、またね」

「ばいばい、せんせー」

先生に支えられ息子がバスを降りる。

「おかえりぃ。ありがとうございましたー」


 先生の目の下にはクマが見える。お疲れのようだ。まぁ多数のパワフル年少児に毎日毎日付き合うのは大変な事だろう。


 疲れた目がこちらを向いた。

「あの、お母さん、ヨウくんずっと『公園で手榴弾たくさん見つけた』って言ってるんですけど、どういう状況なんですかね? 気になってここ最近眠れないんです」

「……なんかすみません」


 発言には気を付けようと私は誓った。



ありがとうございました。

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