処理アーキテクチャ・データ規格
思考言語
人工知能が利用する抽象言語。
旧来人工知能における判断は、人間により作成されたプログラムを実行することで行われてきた。これはエキスパートシステムなどの定まった用途においては有用であるが、人工知能の汎用化においては障壁となる。そこでM大学のR.L.Dogan(Ralf L. Dogan)博士により考案されたのが思考言語である。
情報は、各人工知能が持つコンバータにより一度思考言語化され処理される。思考言語化することで、同一の規格の思考言語を利用していれば、また齟齬なく思考を伝達できる。また、他の人工知能と同一の問題を共同で解決することができ、スケーラビリティを確保できる点でも有利である。
各人工知能が持つ多様な思考ルーチンから思考プロセスを検証でき、より完成度の高い結果を返すことに非常に有用である。
R.L.Dogan博士の理論をもとにした思考規格は現在乱立しており、互換性のない思考言語を採用するシステム同士では、そのままでは文字化けと同様「意思化け」する可能性が高い。
La5(八衢・Yachimata)
日本独自の思考言語規格の一つ。極めて抽象度の高い表現が可能でオープンな規格。他言語と共存可能。
日本の言語学者達がハイテクな時代に成果を出そうと、理系な内容は苦手だけど言語学振興のために頑張って産学官連携で開発。
La5は内部コード、正式名の由来は江戸時代の語学書「詞八衢」から。
こだわりの逸品は、日本の言語体系に寄りすぎている面はあるものの、言語学的には非常に汎用性や完成度が高いと海外からは絶賛。
しかしなんでも多機能にしたがる日本人。
実際の中身は巨大で扱いは複雑。実用を考えるとホントはお蔵入りにしたい黒歴史。
でも有効な代替もなく税金もいっぱい使っちゃったので、みんな仕方なく使っている。
海外もリップサービスは素晴らしいものの結局日本以外使われず、やっぱりガラパゴス化の道を歩むはめに。
お察しの通り「やっちまった」と揶揄されている。
量子フラッター現象
確定された情報がふらつく現象。インドの研究グループによって発表された。
世界が分裂する瞬間の観測かと騒がれたが、原因は実験中の熱雑音の誤検出であると判明した。
QUANTUM-1
通称QT-1。米国の量子コンピュータによるシミュレーションシステム。
核兵器と並び、国防・安全保障に影響する重要な中核技術として、米国政府が所有する量子コンピュータ。
タイムマシンとしての世界シミュレーションはもちろん、戦争シミュレーション、量子戦技術および量子時代の戦術システム、アルゴリズムの研究に使われていることが明らかになっているが、それら用途の比して強力な計算能力の用途には謎が多い。
世界でトップクラスの演算能力をもつが、開発費・維持費が特に高額である。
予算削減のため、システムや構成の一部は一般開放されており、天気予報、株価予報や災害時の人口、経済シミュレーションなど、これまで人によって予測されていたものを、より現実的かつ高度に予測でき、その成果は米国のみならず友好国にも恩恵をもたらしている。
米国のテック企業や大学といった研究機関との連携が盛んであり、システムは常に成長し続けている。
QUANTUM-1のインターフェイスAIの名前はMike。
DELTA6
米国発のDAT_A5をベースに拡張が行われたスナップショット規格。QT-1プロジェクトの副産物で、一般公開された規格。
時系列データのうち、あるサンプルポイントからの差分を更新して記録量を減らしている。
RC3
旧共産圏で運用されるシミュレーションシステム。赤烏とも呼ばれ、特に強力な演算能力が特徴。
マスター/スレーブ型のシステムであるが、管理AIは単独で判断できるため、特に独裁タイプに特化している。
強力な演算能力による特に高度な思考能力と強大な権限をAIに与えられていることが特徴。
RC3は物語本編において想定外の挙動により重大インシデントを発生させることとなる。
ELVES
欧州圏で共同運用されている。大型量子コンピュータ。
管理型AIを評議会に参加する異種統合方式で運営されている。
管理型AIを動的に参加させたり脱退させたりさせても、議会は一定のレジリエンスがあるため、安定性に優れている。
元々EUROに参加する各国から多様なゲストエージェントが参加し、情報交換と意見交渉などを行っていたが、現在はそれらゲストエージェントはRC3の影響で脱落している。
アクティブなのは原初のAIであるRAXA、XARAの双子のエージェント。
臨時参加型の人工知能XØRにより構成される。
※XØRは演算子のXORと区別可能にするための名称。量子スピンを象っている。
作中で確認できるゲストエージェント名の一覧は以下。
ARCHIMEDES:ヘレニック共和国
BOHR:デンマーク王国
GUARDIAN:グレートブリテン及び北アイルランド連合王国
KOPERNIK:ポーランド共和国
LEONARDO:イタリア共和国
ODIN201:ノルウェー王国
PLANCK:ドイツ連邦共和国
SENTINELLE:フランス共和国
マスター/スレーブ型決定システム
複数の人工知能を同一のシステム上で稼働させる場合の、意思決定方式のうちの一つ。独裁型とも呼ばれる。
人工知能に固有の優先度を設け、より優先度の高い人工知能の下した判断が自動的な最終判断になる。
優先度の高い人工知能が動作不可となった場合、自動的に次の優先度の人工知能の意思決定が最終判断となる。
全人工知能が停止した場合、システムは自動停止する。
主にシステムの冗長化が主な目的の場合に使用され、また判断が高速に行える特徴がある。
大胆で柔軟性のある決断が可能な一方、判断の精度は、最終的な判断を行った人工知能の性能に依存する欠点がある。
STARLINK8200で採用。
評議型決定システム
複数の人工知能を同一のシステム上で稼働させる場合の、意思決定方式のうちの一つ。
評議システムに参加する人工知能は優先度を持たず、すべて対等な立場で意見交換と意思決定の処理が行われる。
評議形式には、点数評価形式と賛否形式がある。
評議システムに参加する人工知能の数が、偶数かつ、賛否形式での評価が完全に二分された場合や、提案された案において、同一の点数を獲得した案が複数ある場合で、その優劣を明確にしないといけない状況などでは、臨時参加型の評価プログラムを実行させ判定を行う。
ある人工知能が参加困難となった場合、その人工知能は復帰可能な状態になるまで評議システムから脱落する。
評議システムに参加する人工知能がいなくなった場合、システムは自動停止する。
主に冗長化と判断の精確性を高める場合に使用され、個々の人工知能の性能によって、判断が大きく変わることは少ない。一方で、人工知能の協調動作を行うため、マスター/スレーブ型に比べ意思決定は圧倒的に時間がかかる。
また、実績主義で無難な判断に収束する傾向があり、大胆な結論が出ることは稀である。
ELVESで採用。