~エピローグ~
「・・・じゃあ、そろそろはじめようか」
その日は、良く晴れた気持ちのいい日だった。
にもかかわらず、人払いされ特殊な結界によって閉ざされた城の一角は、暗く重い空気が流れている。
そこで、魔法は行われた。
何の問題もなく、何の障害もなく、
そして、―――すべてが順調に、終った。
真っ暗な部屋の中に、それは青白い光を放っていた。
魔法使いはいつもの長いすに座って、その光を見つめていた。
光の中には、あの少女が眠っている。
強い存在感で短い期間の間に、魔法使いを振り回したあの少女が。
少女の望んだ魔法は、成功した。
これ以上ないくらいに・・・。
『あたしの為にいろいろありがとう。・・・お礼って言ったら変だけど、あたしの体をあげる。貴方の好きなように処理していいよ。実験の材料にしても、どっかに売り飛ばしちゃってもかまわないよ。いらなかったら・・・お礼にならなくなるけど、燃やしてしまって』
少女はそこではにかむように笑って、背を向けた。
『あたしはもう、戻らないから』
長い髪が揺れるのを思い出し、魔法使いは目を閉じた。
少女の魂がその体を離れ、肉体が完全に命の源を失ったその瞬間、魔法使いは用意していたものとは違う魔法を唱えていた。
用意していたのは炎の魔法だったはずなのに、咄嗟にでたのは氷結の高度魔法だった。
生きている者を長期にわたって封ずるための魔法は、死者となる少女の肉体に施すには余りあるものだった。
魔法使いは溜息をついて、立ち上がった。
「こんなものを置いていくなんて嫌な女だな、本当に。まだ生きていると分かっているのに、どうしろって言うんだ? 燃やしたり傷つけたりできると思っているのか? そんなことが出来ると・・・」
ゆらりと青白い光を放つ氷柱の棺の傍らに寄り、穏やかな表情で眠る少女を見下ろす。
「体なんてただの入れ物でしかない、何の意味もないものなのに・・・燃やしたって、傷つけたって、かまわないはずなのに・・・」
氷に手を置くと同時に、魔法使いの両足から力が抜けた。崩れるように座り込んで、その額を棺に押し付ける。
そして、長い長い沈黙のあと、震える声が部屋に響いた。
「・・・君はもうここにはいないのに・・・」
「きみがいる場所」はとりあえずこれでおしまいです。
最後まで読んでくださった方、
ブックマーク、評価してくださった方、
本当にありがとうございました。




