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夢はもう一つの現実でした  作者: 宮城希
第1章 冒険の始まり
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第001夜 始まりの夢

「はぁ、はぁ、はぁっ」


 私は暗闇の住宅街を走っていた。


「暗くて何も見えない」


 街灯はあるのに明かりは無い。

周りは壁だらけで道の端は真っ暗である。

月の明りが道の真ん中を薄っすらと照らしているのは唯一の救いだった。


 この異様な光景で、ここが夢なのはすぐに分かった。


「アイツ、まだ追ってきてる」


 後ろから追いかけてくるアイツは『見つけた』と言っていた。

周りに人の気配は無い。

現在進行形で追いかけてくる足音から察するに、狙われているのは明白だろう。


 夢なら怯える必要もなければ、逃げる必要も無いと思う。

どうせ目覚めれば結果なんて関係ないのだから。


 でもアイツ(・・・)からは逃げるべきだと自分の何かが警報を鳴らしている。


(救いなのはアイツが本気で私を捕まえようとしていない事かな)


 実際、相手が本気で走ってきたら簡単に捕まってしまうと思う。

理由はいたって簡単だ。

本来の私は中学1年生なのに残念かな、いまは幼児体型になっているのだ。


「元の身体なら余裕で引き離せるのに」


 6年以上も鍛錬を続けてきたので、異常な身体能力を発揮するまでに至っている。

不思議な事に筋肉が付いているようには見えず、腕も足もぷにぷにである。


(それにしても、いくら走っても疲れないのは良いかも)


 夢だからなのか体力が消耗した感じは微塵も感じない。


(景色、全然変わらないな)


 どこまで行ってもコンクリートブロックの壁と十字路だらけで、

景色が変わらない事にウンザリする。

最早おなじ場所を走ったかどうかは分からなくなっている。


(やっぱりここって、あの夢なのかな)


 物心がついた時に初めて見た夢に似ている。

その時にゴール地点を見つけたことは覚えてるけど、あの時も必死に逃げていたから場所は覚えていない。

今回も適当に逃げているため道は覚えていなかった。


(ここを抜けて早く帰りたい(・・・・)かな)


 そう考えた瞬間、明りが漏れる一画がある事に気が付いた。


「あそこは・・・」


 駆け寄るとそこだけ灰色の壁が開いており、家へ入れるようになっていた。

玄関のドアは開いたままになっている。


 玄関を通ると左は奥へ廊下が伸びており、右は昇る階段がある。

廊下の左の部屋からは光が漏れていて、廊下の先の部屋は明かりが消えている。

階段の上は暗闇に包まれていた。

いま私が住んでいる家と同じだった。


「土足で失礼!」


 アイツから逃げてるのに、ご丁寧に靴を脱ぐ暇はない。

そんな事をしていたら追いつかれるのは必然だ。


 光が漏れる部屋へ駆け寄り、ドアを遠慮なしに開け放つと、お母さん、お父さん、私、妹のつばめが団欒(だんらん)としていた。

目の前の私の年齢は今の自分の身体と同じくらいに見える。

きっと10年くらい前の私達家族だ。


 以前の夢では、目の前の私の背中へ飛び込むと、憑依(ひょうい)する様に溶け込んで夢が終わった。

今回も同じであることを祈って、その背中へと駆け出した。


(これでゴールのはず!)


 目の前の私へ飛び込み、身体が憑依するように溶けていく。

思っていた通り、ゴールできた事に案著する。


「はぁ、逃げ切ることが出来たかな」


 そう思っていたら結末は少し違っていた。

耳元でアイツの声が聞こえたのだ。


『捕まえた』


 その言葉に背筋が凍るような悪寒を感じた瞬間、

私の背中に爪を立てられたと思ったら、そのまま鉤爪(かぎづめ)の様に突き刺してきた。


「あ゛・・・う゛・・・」


 目の前の私と溶けかけている私を引き剥がそうとしているようで、後ろへと引っ張られていく。

既に溶け合っている部分は、引き離される度にブチブチと音をたてて、すごく痛くて熱い。


 腕も足もほとんど溶け合っているから振りほどく事は難しい。

現状できるのは、無理やりにでも目の前の自分と溶け合うことだ。


「ぐ・・・ぬぅっ、っ!?」


バヂンッ!!


 力任せに融合をしようとすると、弾けるような感覚に襲われそのまま意識は暗転していった。

見て下さっている皆様に感謝です。続ける励みになります!

GW中は最低1話を上げる予定です

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