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戦闘機

 それは、お昼ご飯を終えてすぐのことでした。

 お屋敷に緊急事態を報せる警報と、メイドさんの声が響きます。


《緊急です! バーニャカウダのカリフラワーが領内に侵入しました! 迎撃機はすぐに出撃してください!》


 大変です。

 暴れん坊集団のバーニャカウダが攻め寄せてきたようです。


 ボクはお屋敷を飛び出し、お屋敷の隣にあるハンガーに向かいました。

 広いハンガーには、2機のF—150Pが並んでいます。


 1機のF—150Pには、すでに魔術師さんが乗り込んでいました。

 すぐさまボクもF—150Pに乗り込みます。


 エンジンスタート。


 甲高い轟音がハンガーを支配しました。


《ペパロニ隊、滑走路への進入を許可します!》


 管制塔にいるメイドさんの言葉です。

 ボクと魔術師さんはF—150Pを操り、滑走路まで機体をタキシングさせました。


《離陸を許可します!》


 いよいよです。

 ボクはスロットルを全開にさせます。

 徐々に加速するF—150Pは、ボクが操縦桿を引いた瞬間、ふわりと宙に浮かび上がりました。


 後方では、魔術師さんの機体がぴったりとついてきています。


《ペパロニ隊の離陸を確認しました! 方位160に向かってください!》


「了解しました」


 空を飛ぶときは、メイドさんの指示が絶対です。

 ボクも魔術師さんも、メイドさんに従い操縦桿を傾けます。


 方位160に向かう最中、無線機を通して魔術師さんが話しかけてきます。


《ペペロッペ卿の離陸、いつもスムーズだよね。どこで練習したの?》


「練習はしていません。勘です」


《勘で戦闘機を飛ばしちゃうなんて、やっぱりペペロッペ卿はすごいね!》


「魔法が使える魔術師さんほどではありません」


《えへへ~》


 大空で、たったひとり、狭いコックピットに閉じ込められる。

 広い世界でひとりぼっちというのは、やはり寂しいです。

 だけど、魔術師さんの声が孤独感を消してくれます。


 さて、戦場はすぐそこです。

 レーダーでは4つの反応が確認できます。


《敵カリフラワーは4機です!》


「撃墜しましょう」


《よーし! 行くよー!》


 先手を取るため、ボクと魔術師さんは敵カリフラワーをロックオンしようとしました。

 その直後です。


《敵カリフラワーがアスパラを発射!》


 メイドさんの報告です。

 レーダーの反応は12に増えています。


 断続的なアスパラ接近のアラーム。

 機械的なそれが悲鳴にも似た音に変わるとき、キャノピーの向こうに8つのアスパラが。


《アスパラ接近!》


「焦らなければ避けられます」


 ボクと魔術師さんはチャフとフレアを放ち、同時に回避行動をとりました。

 まばゆい光と細かい塵に、アスパラはボクたちを見失ったようです。

 アスパラは明後日の方向に飛んでいきました。


「アスパラ回避」


《次は私たちの番だよ!》


 間髪入れずに、機首を敵カリフラワーに向けます。

 ロックオンを報せるアラームが鳴れば、ミサイル発射です。


「ペパロニ1、FOX2」


《ペパロニ2、ミサイル発射! FOX2!》


 翼の付け根にぶら下がっていたミサイルが、カリフラワー目指して飛んでいきます。

 ミサイルは遠い青空、雲の向こうに消えてしまいました。


 少しして、雲の向こうに爆炎が浮かび上がるのが見えます。


 爆炎の数は2つ。

 レーダーから消えた反応も2つ。


《敵カリフラワー2機の撃墜を確認しました!》


 攻撃は成功したようです。

 でも、敵カリフラワーはまだ2機残っています。


 高速で飛ぶ戦闘機とカリフラワーの距離が縮まるのは、一瞬のこと。

 カリフラワーの姿が見えた、と思えば、あっという間にドッグファイトに突入です。


《右のカリフラワーは私が引きつけるよ!》


「ありがとうございます」


 これでボクは、1機のカリフラワーに集中できます。


 カリフラワーは速力に優れていますが、機動力ではF—150Pが上です。


 ボクはラダーと水平尾翼を駆使し、ヘッドオンで敵カリフラワーのゴマ攻撃を回避しました。

 続けてエアブレーキを使って急旋回、敵カリフラワーを前方に据えます。


 一方のカリフラワーは、まだ旋回中。


「ペパロニ1、FOX2」


 チャンスは逃せません。

 旋回中の敵カリフラワーに、ボクはミサイルを撃ち込みます。


 敵カリフラワーは、ちょうど旋回を終えたときにミサイルが直撃。

 焼き野菜となったカリフラワーは地上へ真っ逆さま。

 墜落したカリフラワーは、動物さんたちの美味しいご飯になるでしょう。


《敵カリフラワーはあと1機です!》


 メイドさんの報告と一緒に、魔術師さんからも通信が。


《ごめん! 敵カリフラワーがそっちに行っちゃった!》


 きっと味方が撃墜されるのを見て、ボクを狙ったのでしょう。

 ボクの背後には敵カリフラワーが飛び、コックピット内にはレーダー照射を報せるアラームが鳴ります。


《チェックシックス! 回避してください!》


「大丈夫です」


 ボクは機体を雲に突入させました。

 視界の悪い雲の中、それでも敵カリフラワーはボクを追ってきます。


 今です。ボクは雲の中でバレルロールをしました。

 敵カリフラワーはそれに気づいていません。


 雲を出たとき、敵カリフラワーはボクの前に。


「ペパロニ1、FOX2」


 短距離ミサイルのプレゼントです。

 焦った敵カリフラワーは回避行動をとりますがもう遅いです。


《ミサイル直撃! 敵カリフラワー撃墜!》


 嬉しそうなメイドさんの報告が無線に響きます。


《やりました! 全カリフラワー撃墜です! これで迎撃任務は完了です!》


《やったー!》


 なんとか勝利できました。

 ボクたちは領地を守り通したのです。


《今日は魔術師さんが1カリフラワー撃墜、合計で9カリフラワー! ペペロッペ卿が3カリフラワー撃墜、合計で17カリフラワーです!》


《むう……ペペロッペ卿には勝てないよ~》


「魔術師さんは、以前に2カボチャを撃墜しています。それはすごいことです」


《でもでも~》


 できれば、これ以上に撃墜した野菜が増えないことを願います。

 だけど、バーニャカウダの侵攻はなかなか止められません。

 であるならば、ボクは領主として、野菜を倒すだけです。


《ペパロニ隊、基地に帰還してください。美味しい夕ご飯が待ってますよ》


《おお~、楽しみ~》


「急いで帰らないといけませんね」


 戦いには勝ったのです。

 今日の夕ご飯は、勝利のお祝いになるのでしょう。


 めでたしめでたし。

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