宇宙人さん
メイドさんは街へお買い物とフライパン売りに、魔術師さんは隣国へ魔法の素材を探しに。
残されたボクは、羊さんと一緒にUFOに攫われました。
草原で羊さんと遊んでいたら突然、攫われたのでビックリです。
「困りましたね」
「メェ~」
どうやら羊さんもボクと同じ気持ちのようです。
モノクロの角ばったUFOの中で、ボクたちは暇を持て余します。
しばらく時間が経った頃です。
白衣のような格好をした、緑色の肌に6本足、触角を生やした3人の宇宙人がボクたちのもとにやってきました。
「じぇかさざ、かゅまーしゅぎぎりーだ」
なるほど、そんなに遠くからやってきたのですね。
ボクは宇宙人に聞きます。
「げだ、ゔぃにぉっぞってん?」
「ううせんちゃじ、あょふんせんちゃじ、きりでそぃべんだんだ」
「らん、えーれべんかゃ」
「ええぎん」
それは良かった。
ボクを実験体にするため攫ったのではなくて、ひとまず安心です。
心なしか羊さんも安心しているようです。
とりあえず、宇宙人さんたちの言う通り、UFOの展望室に向かいましょう。
UFOの展望室は、まるでお城の天守閣のようでした。
さすがかゅまーから来た宇宙人。UFOの内装も和風です。
「んざっざきゔぇる、どあーす」
そう言って、宇宙人さんは窓の外に指をさします。
彼の指の先には、カラフルな星雲を背景に浮かぶ、輪っかが美しい惑星が。
暗闇と星雲のコントラスト、見たこともない惑星に、ボクの心が踊ります。
「すごいです。こんな景色ははじめて見ました」
「メェ~~!!」
羊さんも大興奮です。
大自然の神秘は、いつまで見ていても飽きることはありません。
宇宙人さんたちはボクたちの反応に大喜びです。
彼らはUFOをワープさせました。
展望室から見えるのは白い光の波。
その光の波が消えると、今度は金色のリングがボクの目に飛び込みます。
「れいべん、きゅりゅふゅ?」
「れいべん、どるごんぞっくざん」
なんと、あの金色のリングはブラックホールだそうです。
でも、吸い込まれてしまったらどうしようという心配はありません。
ボクの興味は、すでに壮大なブラックホールに吸い込まれているからです。
まるでこの世ではない場所に来てしまった気分。
感動と恐怖の中間点は、とても美しい世界でした。
「へんげぇった、めんふゅーねねん。どるごんぞっくぜーでん」
「メェ~」
「ぉれぜどつんぃめっと」
羊さんと宇宙人さんの仲の良い会話。
宇宙人さんは、さらにUFOをワープさせます。
ワープが終わると、展望室に窓の外には大きな宇宙船が。
全体を見ることもできない大きな宇宙船は、宇宙人さんたちの友達でしょうか?
「げりんばゅ、ぞーとん!」
どうやら友達ではなかったようです。
それどころか、敵対する宇宙人だったようです。
大きな宇宙船は、ボクたちの乗るUFOにレーザーを撃ってきます。
UFOはなんとかレーザーを避けながら、大きな宇宙船に接近しました。
「メェ~!」
「大丈夫です。宇宙人さんたちを信用しましょう」
ボクたちにできることはそれしかありません。
急加速して大きな宇宙船に接近したUFOは、大きな宇宙船の表面スレスレを飛び抜けます。
飛び交うレーザーはUFOに擦り傷を残しますが、UFOは止まりません。
艦橋をすり抜け、アンテナ類の合間を縫い、少しずつ大きな宇宙船の後ろへ。
ひとつの街ほどに大きい宇宙船の後ろに到着するまでには、とても時間がかかります。
それでも大きな宇宙の背後に、UFOは到着しました。
「ふーば!」
宇宙人の叫びと同時に、景色は白い光の波の世界へ。
「おるめにぇっど、ぴーすけん……」
「どどんっら。へいゅらん」
「メェ~」
「せんだ……!」
ボクと羊さんの言葉に、申し訳なさそうな宇宙人さんも笑顔を取り戻してくれました。
どうやら宇宙の旅はこれで終わりのようです。
ワープを終えたUFOから見えたのは、ボクたちが住む惑星でした。
未知の世界とは違い、故郷には安心感があります。
「ひゅなみん、んでっどらょぴーく?」
「くゔぇ、ざぁざ。えすとおーしじあ、ゔぁにあきゅってん、ふーりどっど」
「ええぎん」
「あさん、ばーざんてっとゆゅうぇん」
別れ際、宇宙人さんはそう言って、UFOの模型をくれました。
手をかざすとピカピカ光る、かわいい模型です。
羊さんは、宇宙人さんたちの故郷の地図をもらっていました。
言葉に反応して動く、立派な地図です。
お土産をもらった直後、UFOは地上に降り立ちました。
ボクと羊さんは、宇宙人さんたちと別れの挨拶を済ませ、故郷の惑星の土を踏みます。
そして、飛び立つUFOに手を振り、宇宙人さんたちを見送ります。
星空の中に、宇宙人さんたちは去っていってしまいました。
「楽しかったですね」
「メェ~」
さて、お屋敷に帰りましょう。
メイドさんと魔術師さんは、きっと宇宙の話を楽しんでくれるでしょうから。
めでたしめでたし。