フライパン 前編
こんにちは。ペペロッペです。
今日はカーテンの隙間から差し込む光で目を覚ましました。
そうです、今日はとても良い天気です。
こんなに天気の良い日は、庭を歩きたくなるものです。
ベッドを降りたボクは、着替えを済ませ、すぐに庭に出ました。
ふかふかの芝生。綺麗な花。心地よい風。
やっぱり晴れた日のお屋敷の庭は天国のようです。
「あ! ペペロッペ卿だ! おはよう!」
「おはようございます、魔術師さん」
3メートルの人参を引きずる魔術師さんとの朝の挨拶。
いつも通りの光景に、ボクの頬は自然と緩みました。
続けて、ボクの背後から鈴のような声が聞こえてきます。
「ご主人様! おはようございます!」
「ああ、メイドさん、おはよう——うん?」
ビックリしました。
メイドさんは両手にフライパンを持っています。
それだけではありません。彼女が持つ袋の中にも、服の中にも、たくさんのフライパンが詰め込まれています。
まるでフライパンのお化けです。
「どうしたんですか?」
「このフライパンですね! これは、お庭に生えていたものです!」
何を言っているのか分かりません。
だけど、メイドさんは庭の端に指をさします。
「あそこですよ! あそこに、フライパンがたくさん生えています!」
にわかには信じられませんでした。
メイドさんの言っていたことは正しかったのです。
庭の端、昔はシャモジが生えていた場所に、立派なフライパン畑ができていました。
乱雑に並んだフライパンの大群は、なにやら迫力があります。
「すごいですね。いつの間にこんなものができていたなんて」
「昨日は何もありませんでしたから、夜のうちにできたんだと思います!」
自然の驚異です。
魔術師さんも目を輝かせています。
「ねえねえペペロッペ卿、私たちもフライパンを収穫しようよ!」
「賛成です。では、着替えましょうか」
「着替えは任せて! えい!」
魔術師さんが勢いよく魔法の杖を振ると、ボクと魔術師さんの服装が作業着に変化しました。
これでフライパンの収穫ができます。
「さて、まずはどうすれば良いのでしょうか?」
「まずは、地面と接している柄の部分を握ってください!」
「こうでしょうか……」
「そうです! 柄の部分を握ったら、力いっぱいにフライパンを引き抜いてください!」
「力いっぱいだね! よいしょ!」
さすがに力の入れすぎです。
フライパンを引き抜いた魔術師さんは、勢い余って尻もちをついてしまいました。
だけれども、フライパンの収穫は成功です。
続けてボクも、フライパンを引き抜きました。
新鮮なフライパンは、テフロンを鈍く輝かせています。
収穫は大成功です。
「コツは掴めましたね」
「どんどん収穫しようよ!」
「はい!」
ボクたちは時間も忘れて、次々とフライパンを収穫しました。