かくれんぼ 後編
階段を降り、暗い地下室へ。
「フハハハハハハ! 地下に潜れば我の力が増すのだ! メイドも魔術師も、この我が見つけ出してやるのだ!」
「うん? この辺が怪しいですね」
「なんだと!? どこなのだ!?」
「ここです」
地下室の廊下、なんてことない石壁に、ボクは違和感を抱きました。
そこで、ボクはポケットから耳かきを取り出します。
その耳かきで、石壁を6回叩きました。
すると、石壁に魔法陣が浮かび上がります。
魔法陣の向こう側には、異世界に隠れた魔術師さんの姿が。
「魔術師さん、見つけました」
「見つかっちゃったー! 完璧な隠れ場所だと思ったんだけどな~」
「ほんの少し、石壁に魔力が残っていました。それがなければ、魔術師さんを見つけることはできなかったでしょう」
「むう、次は魔力を残さないもん!」
悔しそうな魔術師さんは、しかしボクたちに会えたことが嬉しいのか笑顔です。
さて、あとはメイドさんを見つけるだけになりました。
ところが、メイドさんはどこにもいません。
1階にも2階にも、3階にも倉庫にもいません。
「お屋敷の全部の部屋を探したけど、どこにもいないよ」
「メイドはどこに消えたのだ?」
「う~ん」
さすがはお屋敷を知り尽くしたメイドさんです。
もしかすれば、メイドさんはボクたちの知らない場所に隠れているのかもしれません。
こうなれば、もう手当たり次第です。
ボクたちは一部屋一部屋を、3人で入念に探し回りました。
リビング、寝室、客間、大広間——
次は書斎です。
「デスクの引き出しやカーペットの下も忘れず探してください」
「良いだろう! ペペロッペ卿の言う通りにしてやるのだ!」
「おーい! メイドさーん!」
「魔術師よ! メイドは人間だぞ! 本の裏に隠れられるわけがないのだ!」
「探してみなきゃ分からないよ」
そう言って、魔術師さんは本棚に並んだ本を引っ張ります。
「あれ?」
とある本を魔術師さんが引っ張ったときでした。
突如として本棚が動きはじめます。
本棚の裏には、なんと地下へと続く階段が。
「すごいのだ! 新しい道なのだ!」
「ペペロッペ卿、こんな仕掛けがあるの知ってた?」
「知りませんでした。しかし魔術師さん、お手柄です」
「えへへ~」
さっそくボクたちは、地下へと続く階段を下ります。
しばらく進むと、そこには古めかしいエレベーターが。
キーキーと鳴るエレベーターに乗ると、ボクたちはさらに地下奥深くへ。
ボクたちを乗せたエレベーターが到着したのは、地下に広がる洞窟でした。
洞窟には様々な機械が置かれています。
装甲車やアーマードスーツまで置かれています。
「おお~! 洞窟の基地だ~! かっこいい~!」
「うむうむ、魔術師に同意なのだ! ここを我の新しい住処としたいのだ!」
魔術師さんと地底人さんは興奮気味です。
一方のボクは、当初の目的であるメイドさん探しを続けます。
ただし、その目標はすぐに達成されました。
洞窟の基地の机、その下から、メイドさんのスカートが飛び出ていたのです。
「メイドさん、見つけました」
「あわわ! 見つかっちゃいました~」
これで3人を無事発見です。
「最後まで見つからなかったのがメイドとは、驚きなのだ!」
「ねえねえメイドさん、この洞窟の基地は何?」
「私も、今日の朝に見つけた場所なんです。だから、詳しいことはまだ分かりません」
「へえ~。じゃあじゃあ、私が洞窟の基地を調べてみるよ! ペペロッペ卿、いい?」
「ええ、いいですよ」
お屋敷にはまだまだ知らないことがあるようです。
ところで、かくれんぼは終わりました。
それでも魔術師さんと地底人さんは、まだ遊び足りないようです。
「もう一回! もう一回かくれんぼしようよ~!」
「そうなのだ! 我もまだかくれんぼがしたいのだ!」
「でも、そろそろ夕ご飯の準備をはじめないと……」
「ええ~! かくれんぼしたい~!」
「ええ~! かくれんぼしたいのだ~!」
「はぁ、仕方ないですね」
「ペペロッペ卿は? かくれんぼ、する?」
「やります。暇ですから」
「やったー! じゃあ、今度は私が鬼になるよ! 3人とも、すぐに見つけてやる!」
楽しいかくれんぼ2回戦の再開です。
かくれんぼ2回戦は、椅子のフリをしたボクの勝ちでした。
めでたしめでたし。