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地底人さん 後編

 決闘をすると聞いて興奮気味の地底人さんは、しかしすぐに口ごもってしまいます。


「ええと……ええと……」


「決闘の準備ができていないのですか?」


「そ、そうなのだ! さすがはこの地の支配者、よくぞ我の心を読んだのだ!」


「仕方がありませんね。アルパカさん、剣を2本、貸してください」


「ふーん」


 敵に回ったとはいえ、優しいアルパカさんたちです。

 彼らはボクたちに2本の剣を貸してくれました。


 これで決闘の準備は完了です。


「では、ルールを決めましょう」


「ルールはペペロッペ卿が決めて良いのだ! 別に決闘のルールが分からないわけではないのだ!」


「分かりました。では休憩はなし、どちらかが戦闘不能になるまで戦い続ける、というルールで良いですか?」


「良いのだ!」


 決定です。


 審判はメイドさん、見届け人は魔術師さんとアルパカさんたちです。


 一定の距離を保ち、ボクと地底人さんは向き合いました。

 緊張感が辺りを覆い尽くします。


 ボクと地底人さんの間には、風が吹き抜けていきました。


「おふたりとも、剣を構えてください」


 審判メイドさんの指示です。


 彼女に従い、ボクと地底人さんは剣を構えました。

 剣を握る手には自然と力が入ります。


「それでは、決闘開始!」


 ついにはじまりました。

 地底人さんは剣を掲げ、走り出します。


「うおおおお!! (われ)が地上の支配者——」


 しかし、どうしたことでしょう。

 元気だった地底人さんは、突如として地面に倒れます。


 動かなくなった地底人さんに駆け寄った魔術師さんは叫びました。


「死んでる!?」


「ええ!?」


 大変です。

 地底人さんは死んでしまいました。

 きっと地上の環境が地底人さんに合わなかったのでしょう。


「困りましたね。アルパカさん、スコップを貸してもらえますか?」


「ふーん」


「ありがとうございます」


 アルパカさんたちからスコップを借りたボクは、そのスコップを使って穴を掘ります。

 穴を掘り終えると、そこに地底人さんを放り込みました。

 最後に穴を埋め、地底人さんを埋葬します。


「これで安心です」


「地底人さん……安らかにお眠りください」


「メイドさん? 何か勘違いをしていませんか?」


「勘違い?」


 首をかしげたメイドさん。

 だけど、彼女はすぐに納得してくれます。


「フハハハハハハ!!」


 土の中から、地底人さんが勢いよく飛び出てきました。

 たくさんの土をかぶる地底人さんの表情は、とても元気そうです。


「ペペロッペ卿よ! 我を蘇らせたのはお前か?」


「はい、そうなりますね」


 そう言ってボクが首を縦に振ると、地底人さんはボクに抱きつきます。


「ありがとうなのだ! ペペロッペ卿には感謝してもしきれないのだ!」


「いえいえ、ボクは当然のことを——」


「ということで、我はこれからペペロッペ卿の臣下となるのだ! ペペロッペ卿に拒否権はないのだ!」


「はぁ、分かりました」


 何やら家来が増えました。

 新しい家来に、メイドさんと魔術師さんが挨拶します。


「これからよろしくお願いしますね、地底人さん」


「地底人さん、よろしく!」


「うむうむ、よろしくなのだ!」


 結局、決闘はしないで済みました。

 領地も明け渡さずに済みました。

 代わりに地底人さんと仲良くなることができました。


 一時はどうなるかと思いましたが、良い結果が得られて良かったです。


 めでたしめでたし。

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