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空を見上げたその向こう  作者: 猫姫
3/7

食事を無理矢理食べさせるのはもはや拷問だと思う。

仮想現実の巨大情報集積で出来た国には、仮想体実体化装置フルダイブシステムを使用しないと行けない。

宝石人ボックスは、それ無しに宇宙の何処からでもいくことが出来る。

それが宝石人ボックスの首都『イリュジオン』。


私はフィアナ・ティ・ガードナ。

中学生ミドルスクールに通う、今は進級課題の『地球人の生態観察』中。

地球人の生態を観察すべく銀河系の端っこの惑星港に来た。

そのとき油断があったのか荷物を紛失、不覚にも窃盗されてしまった。


両替したばかりの銀河連邦金ポイントカードや着替えや偽体ボディのメンテ工具やら全て。

直ぐさま近くの防犯カメラをハッキングして調べたけれど見つからず、逆にハッキングしたことで警備員に捕まってしまう。


そんな時、彼とであった。


黒髪短髪の地求人で宇宙共通ユニバーサル言語に多少の訛りがある。

第一印象は優しいお人好し、良い人で騙される事はあっても人を騙しそうにないタイプ。

彼は連邦兵士ソルジャーで警備員達を説得してくれて、なんとか解放された。

そのあと二人で泥棒を捕まえ荷物を取り返すことが出来て、そのまま今に至る。


―――絶賛落下中。


古い記憶を呼び覚ますのは、死の直前の走馬灯と言うけれど冗談じゃないわ。

偽体ボディからの痛覚フィードバックを最小限にして、落下時の衝撃を和らげる態勢を検索。


「ふぎゅッ!?」

落ちた場所は、下水道か何か。

水がクッションになってダメージは殆どなかった、急いで岸に上がる。


「なにこれ、凄い臭い…」

周囲を見回して目に映ったのはヘドロと変色した壁。

帰ったら徹底洗浄しないと、この臭い取れるのかしら。


五感の臭覚を遮断、視界を暗視モードにして川上へ歩く事にした。


「…なにかしら?」

前方の部屋から明かりが漏れている、もしかしたら発掘隊の生き残り?

そちらのほうへ行ってみる。

そこで思い切り後悔した、これは見てはイケナイ類のものだった。


中央に大きな釜があり、その中から人間の手足みたいなものがはみ出ている。

その釜をかき回す、巨大包丁を背負った袋を被って顔が見えない大男。

その釜の周りには、目の部分は黒く落ち窪みその奥に赤い点を放ち、痩せた身体に申し訳程度の服を着た数十人。


明らかにおかしい光景、偽体ボディじゃなかったら吐いてた。


「…はやく立ち去った方が良さそうね」

静かにその場を立ち去ろうとした時だった。


ポタッ。


「ん?」

生まれて初めて声にならない悲鳴と言うのをあげてみた。

ナメクジと表現したらいいのか不定形生物スライムと表現していいのか、なんだか分からないモノが首筋目掛けて落ちてきたからだ。

服に手を入れそれを取って投げた、それが上手い具合に釜の中に。


勿論、蜂の巣をつついたみたいに大騒ぎになる。


こうなったら逃げるしかない!

逃げ回るも地の利は向こうにある、一人に追いつかれた。


「私が悪かったけど、そんなに怒らなくてもいいでしょ!?」

痩せて土色の手には、折れた剣が握られている、それを振り下ろしてきた。


「ちょ、ちょっと!?」

護身用に持っている特殊警棒セキュリティバトンで弾く。

態勢を崩したので尽かさず突き、電撃スタンスイッチを押した。


「ふぅ…」

感電してピクピクとして立てないようだ、今のうちに!

何処をどう走ったのかは分からないけれど、身が隠せそうな場所に見つけた。


「もぅ、しつこい…」

痩せた人のほうは、諦め去って行ったけど、大男のほうは周囲を歩き回っている。

と、いきなり何か確信したようにこちらに一直線にやってくる。


「な、何でッ!?」

偽体ボディは所詮作り物だから呼吸も気配も心臓の鼓動さえないはず。

なのに正確にこっちに来て、巨大包丁を振り下ろしてきた。


「あぶなッ!?」

隠れていた樽から出て逃げる、巨大包丁を振り上げ追いかけてきた。

被った袋の破れた穴から赤い目が見えた、血の色にも似た赤い発光した目。


「うそっ!?私を正確に見ている!?」

ありえないと思ったけど視線が完全に捕らえている。


恐怖が込み上げてきた。


「け、けれど、こんな所で死ぬわけにいかないの!」

兎に角、考えるしかない。

多少危険だけれど、一つの策を思いついた。


「…これで駄目だったら、国に帰ろう…」

お気に入りの偽体ボディを捨てるのは嫌だし、宝魂ジュエルの乗り換えは数ヶ月かかるし、色々困るけど死ぬよりはマシ。


「いいえ、絶対上手くいく!」

気合を入れ直して、身を潜めた。


「…」

大男が来る、確実に私を捕捉している。

目を閉じて待つ、大男は偽体ボディの前に立ち、巨大包丁を振り上げた。


「やっぱりね」

大男は振り上げたまま偽体ボディを無視して、離れた場所に置いた宝魂ジュエルである私に赤い目線を投げかける。


「どういうわけか知らないけれど、宝魂ジュエルの生命反応が見えるのね?」

偽体ボディを無視してどんどん近づいてくる。


―――今だッッッ!!


「やぁッッッ!」

偽体ボディを遠隔操作して大男の背中に特殊警棒セキュリティバトンで突き出した。

完全に予想外の攻撃に対処しようにも既に遅く、大男の身体を貫いた。

急所が外れたのかバトンを取ろうともがいているが、深く刺さり貫通したバトンは取れなかった。


「ごめんなさい、成仏してね…」

電撃スタンスイッチを押す、その体内に電撃が流れ袋の顔から煙が漏れた。

大男はそのままうつ伏せに倒れ、動かなくなった。


「…なにこれ…」

大男の体は特殊警棒セキュリティバトンが突き抜けたにも拘らず血の一滴も出ていない。

数秒も待たずその身体は、土塊になりグシャリと崩れた。


「訳が分らないわ」

偽体ボディ宝魂ジュエルを戻して、少し疲れたので休む所を捜す事にした。

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