毎日求め飢えていた。
白銀の砂の上を歩いていた。
周囲は霧のようなもので5m先が感知できない。
センサーも駄目か。
そして俺達四人は、巨大な門の前に着いた。
―――数日前。
それは辺境の惑星の中継地点にいた時のことだった。
俺はいつものように、宇宙船の燃料剤や必要装備、食料の備蓄などの計算をしていた。
遠く故郷を離れて数十万光年、思えば遠くに来たもんだ。
こんな所に来れるのも科学の発展のおかげ、地球人類は不老不死に限りなく近い技術を手に入れていた。
その恩恵で爆発的な宇宙開拓、調子に乗って奢りて高ぶりまくる。
まぁ、宇宙戦争やらなにやら何度もやって滅びなかったんだから、強かさがあったからじゃないかなと思う。
そんなこんなで太陽系を飛び出して銀河連邦となって、破竹の勢いで勢力を拡大。
外銀河に進出中である。
そんな訳で宇宙への憧れと冒険を求め就職したのが、連邦兵士。
申請書類と簡単な訓練でなれるお得な職業。
今なら機甲兵装が一機貰えるというので志願した。
仕事は辺境惑星や周囲宇宙域の生態やらの探索と調査。
帰って報告すれば良し、帰って来れなくてもまあ良し。
なんか増えすぎた人口に対する職業斡旋という名目の、統治者の政治的なドス黒いものを感じるけど、まあいいか。
支給品の銃剣と直しながら使ってきた草臥れた外骨格鎧。
そろそろ買い換えたいけど、先立つものがない。
貰った機甲兵装だって、今じゃエネルギー不足で動かすこと叶わず。
中古宇宙船の返却期限ももうすぐだし、仕事を探さないと。
連邦兵士の給料だけじゃ、まったくやっていけない世知辛さ。
「ねぇ、なんかいい依頼あったぁ?」
カラになった飲み物を前にストローを咥え、ピコピコ動かしている同席の少女。
彼女はフィアナ、宝石人という種族でうちの船の躁舵手だ。
地球人類が外銀河に出始めた頃、出会った種族は四つ。
その中で一番最初に出会ったのが宝石人。
好奇心旺盛の種族で、地球人がまだ地球の地表を歩いていた頃も接触してた。
それはもう銀色で目だけ大きかったりクラゲみたいだったり千差万別、十人十色。
それもそのはず、宝石人の本体は宝魂と言われる箱に魂を封じ込めている。
ここにいる見た目は十代の少女で、露出の多い服を着た子も本体は宝魂。
胸のペンダントか宝石付きの指輪か、どれかがそうなんだろう。
そんな宝石人は、偽体という仮初めの身体を持っていて、本体の宝魂がそれを操作する。
最近の流行は、外銀河に進出してきた地球人の女性型らしい。
ただ、かなりアレンジが加わるらしく、耳が長かったり獣耳や尻尾が生えてたり角や翼があったりと様々。
フィアナも耳が長くて細身少女の偽体、妖精少女型を愛用している。
とある宇宙港で困っていたので、声をかけたのが出会いだった。
「おーぃ、良い仕事見つけてきたぞ」
「御主人様、今、帰りました…」
「あぁ、ご苦労さん」
長身の男と小柄な痩せた少女がやってきた。
大男のほうはカイロスエル、筋骨隆々の立派な体と背中に翼を持つ有翼人だ。
有翼人は、牧歌的な種族で性格は極めて温厚で豪快。
男性はカイロスエルのように服を着ていても分かる鍛えられた筋肉質の身体。
女性は完璧な曲線美としなやかなさを併せ持つ身体、そして両者とも必ず美しい翼を持っている。
有翼人は、恒星の付近に家を作り家族単位で住んでいる。
恒星の近くにある豊かな惑星を見つけては、そこに降りて動植物を育てたりする。
宇宙服無しでも数時間なら宇宙空間で活動でき、苛酷な環境にもすぐ順応できる。
弱点は完全に『光』が無い場所では、睡眠に入ってしまう事、その為に彼らの頭の上には光る輪が常にある。
カイロスエル、カイとは、とある任務で畑を荒らす怪物から畑を守った縁で仲間になった。
うちの大事な戦闘員兼整備士だ。
もう一人の小柄の少女は吸血人。
出会った当初は、ボサボサの髪とボロ布を被っただけの服と手かせ足かせをつけていた。
今はフィアナのコーデで、ポニーテールだったりツインテールだったり、少女らしい可愛らしい服を着ていたりする。
彼女、シュナは奴隷だった。
宇宙海賊に襲われ何とか撃退、その宇宙海賊船の船底に繋がれていた。
シュナ以外の数十人の吸血人は、共食いの後があった。
シュナはそのときの事を話さない。
吸血人は、遺跡探索を生業とする種族。
性格は内向的で人見知りが激しい、俺もシュナと会話が出来るようになるまで一年かかった。
仲間にしか心を開かず、シュナも今でも何処か気を許してくれない所がある。
吸血人なんて呼ばれているが、別に血を欲する種族ではない。
ただ、遺跡探索と言う仕事柄な為に窮地に陥る事がある。
古代宇宙の遺跡罠は、そのまま死ねば良い方で最悪の場合、生物と呼べないモノに変貌させるものまである。
そんな中で生き残ってきた吸血人の掟にこんなのがある。
『仲間は命より大事にしろ、死んでも仲間の魂は連れて帰れ』
命の危険に晒され死を予見した吸血人は、仲間に自分の血肉を一番若い者に与えるのだと言う。
同族食い、そんな吸血人は他の種族からも忌み嫌われ差別と迫害を受けている。
「…!?」
シュナの頭を撫でようとしたら、身体をビクッと震わせた。
「あ、ごめん。で、カイどんな仕事だ?」
「ん、なんでも惑星調査に降りた調査隊が音信不通になったらしい。で、その救助だ」
カイの持っていた情報映像板を一通り見る。
『―――リクレット社の資源発掘チームが行方不明、救助を求む。報酬は…』
近くの惑星の調査に降りて行方不明か、本格的な救助隊を待ったら数週間はかかる。
それなら俺らみたいのを雇ったほうが早いってわけか。
「よし、この依頼受けよう。リクレット社には俺が交渉に行く、フィアナは船に火を入れてくれ、他の者は乗船して待機で」
「分かったわ」
「…はぃ」
「OK」
俺はリクレット社に回線を繋いだ。