21.研修④
ここまでのストーリー:敵を一人倒した。
*グロ注意
*忍法の表記が変わってます。
大丈夫。私なら、できる。
ノーサは自分にそう言い聞かせ、大鎌を構えた。
目の前で対峙する女は、不敵に微笑み、右手を下ろした。その手には、黒い鞭があった。
「こっちも始めようかねぇ」
女の手が、動いた。ひゅっと風を切る音が聞こえ、ノーサの右腕に激痛が走る。ノーサは顔をしかめ、右腕を見る。制服と皮膚が切れ、血が流れ出していた。
「あぁん?」
女は不審そうに首を傾げ、鞭を振った。
ひゅっと音がして、ノーサは左足に痛みを覚える。脛から血が流れ出した。
「あんた……もしかして、あたいの攻撃が見えていない?」
ノーサは唇を噛む。女の言う通り、ノーサには、女の鞭の動きが見えなかった。
女は呆れたように鞭を振る。ノーサも鎌を振るが、その動作はぎこちなく、鞭でノーサの頬が切れた。
「くっ」
ノーサは大鎌を振り回した。が、鞭に当たらない。一方、女の鞭は、的確にノーサの制服と皮膚を裂き、ノーサの体に傷跡を増やしていく。そして女は、舌打ちすると、大鎌に鞭を当てた。
「わっ」
ノーサはバランスを崩すが、何とか踏ん張る。しかし女の鞭は、執拗にノーサの大鎌を叩き、ノーサは耐えかねて、尻餅をついた。肩で大きく息をする。服も体もボロボロで、血が流れ、その目には涙が溜まっている。
「もしかして、あんた、自分の力をちゃんと使いきれてないのか?」
「……そんなことない」
ノーサは大鎌の柄を杖にして、立ち上がった。再び大鎌を構えるが、鋭い金属音と強い衝撃で、大鎌を落とした。ノーサは大鎌を拾うとしたが、鞭で頬を叩かれ、横倒しになる。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
立ち上がろうとするが、体に上手く、力が入らなかった。
「やれやれ、残念だよ。復讐できると思って、楽しみにしていたのに」
「……復讐?」
「そうさ。あんたの父親には、お世話になったからねぇ」
「パパを知ってるの?」
「ああ、もちろんさ。あの、裏切り者を忘れるはずがないよ」
「パパが、裏切り者?」
「ああ。あんたの父親は、あたいらを裏切った、最低のくそったれさ」
「パパは、そんなこと、しない」
ひゅっと音がして、ノーサの背中に鞭が当たる。皮膚が裂けるような痛みに、ノーサは悶える。さらに女は、容赦なく、ノーサの体に鞭を打ちつけた。ノーサは体を丸め、その痛みに耐えるしかなかった。
「あぁ、ムカつく。親子そろって、くそったれだねぇ。ふん。だが、それも、ここまでさ。奴の置き土産を、あたいが、刈り取ってやる」
ノーサの目の前に、大鎌があった。ノーサは手を伸ばし、手に取ろうとする。その大鎌は、ノーサにとって大事なものだった。父親が自分に託してくれたものだ。だから、手放したくなかった。それが、ノーサの、父親との唯一の繋がりでもある。
「終わりだよ!」
ノーサは柄を握り、目を強くつむった。
(ごめんなさい、パパ)
風を切る音がして、ノーサの首は斬り落とされた。
――かに思えたその瞬間、ノーサの体は水となってはじけた。
「なっ」
驚愕する女の後方で、声がした。
「【忍法 鏡花水月】。お前が手に入れたい大事なものは、決してお前が手に入れることができない大事なものさ」
女は驚いて振り返る。そこに、ノーサをお姫様のように抱くサスケの姿があった。
ノーサもまた、愕然とした表情で、サスケを見つめた。
「どうして、ここに?」
ノーサは死を覚悟した。だから、自分を包む、死とは無縁の温もりに、戸惑った。
「言ったろ? 俺は強いって。だから、ノーサさんを助けることもできる」
「そうじゃなくて、どうして、戻ってきたの?」
「女の子をおいて、逃げるなんてこと、できるわけないじゃん」
ノーサには、サスケの言っている意味がよくわからなかった。それでも、何となく、サスケが頼もしく見えた。
「あなた、馬鹿ね」
「そうかもな」
「てめぇ!」女が吼える。「リヌームはどうした!?」
「奴は今、土の中でおねんねしてるぜ」
「馬鹿な! あいつが、負けただと!?」
女は鞭を振った。ノーサには見えない速度。しかしサスケは容易に、その鞭を避け、さらに、鞭が届かぬ距離まで、一瞬で下がった。
「何ッ!?」
サスケは木の幹に背中を預けるようにして、ノーサを木の下に寝かせ、痛ましそうに傷口を眺める。
「遅れて、ごめん。治療は、奴を倒してからだ」
「いいよ。これは私のせいだから」
「じゃあ、さっさと片づけてくるわ」
サスケは振り返り、女と対峙する。不敵な笑みを浮かべ、前に進み出た。
「掛かって来いよ、おばさん。金の卵で、あんたの頭、かち割ってやるよ」




