20.研修③
ここまでのストーリー:包帯男と戦うことになった。
*グロ注意です。
男と睨み合っていたサスケ(分身)は、隣の茂みへと駆け込んだ。
「けっ、逃がさねぇよ!」
男は走ってサスケの背中を追いかける。木の幹に隠れるように走るサスケに、男は舌打ちする。
「面倒くせぇやつだな」
男は懐に手を突っ込み、玉を取り出した。そいつをサスケに向かって投げた。超剛速球。サスケは、頭を振って、その玉を避ける。玉は、木の幹にぶつって、炸裂し、紫色の煙が、サスケの行く手を阻むように広がった。
「毒煙か!?」
サスケは急ブレーキをかけ、振り返る。その瞳に、銀色の針が迫り、寸でのところでかわす。
「けっ、けっ、けっ。そいつを避けるか。――だが、それだけで終わりじゃないぜ?」
サスケは、ハッとなって、煙に目を戻した。その瞬間、火花が散った。サスケが木の影に跳ぶのと同時に、爆発が起きた。
サスケは木の幹に背を預けることで、爆発をやり過ごす。しかし、爆発に気を取られていたせいで、目の前に立っていた男への反応が遅れた。
「しまっ」
「はっ!」
男の蹴りが、サスケの首を捉える。サスケは横倒しになって、そのまま転がり、膝をついて体勢を立て直した。首に手を当て、痛がる。
「けっ、けっ、けっ。特待生様よぉ、さっさと本気を出さねぇと、死ぬぞ?」
サスケは奥歯を噛み、男に右手を伸ばす。
「〈水球〉!」
サスケの手から、水の塊が放たれる。しかし男は、にやりと不敵に口元をゆがめ、親指と人差し指でつまんだ針を、水球に突き刺した。すると、水球は割れ、水が辺りに散った。
「おいおい、そんなクソ雑魚魔法じゃ、俺様に、傷一つ、つけられないぜ?」
「ちっ」
サスケは、その場から離れようとした。が、首筋に違和感を覚える。針が刺さっていた。サスケは足がもつれ、転んだ。
「いつの間に……」
「はぁ? それすら気づかないのかよ」
男の呆れた調子に、サスケは奥歯を噛みながらも、這って、木の影へと隠れる。
「おいおい、あんまり俺をがっかりさせないでくれよ、特待生様。もっと、俺様を楽しませろ」
男はわざとらしく、足を踏み鳴らして、サスケが隠れた木へと近づく。
そして、「ばぁ」と小馬鹿にするように、木の影を覗いたが、そこにサスケの姿は無かった。サスケに刺した針が、落ちていた。
「どこに行ったぁ?」
そのとき、遠くへ逃げる足音がした。目を向けると、逃げるサスケの後姿が見えた。
「小癪なやつめ」
男は針を投げる。しかし、サスケは木の影に隠れることで、その針をかわした。
「面倒だな」
男は懐から、小指ほどの大きさの骨でできた笛を取り出し、思い切り鳴らした。
「あああああ!」
サスケの悲鳴が上がり、サスケは頭を押さえながら、転がり出てきた。
「けっ、けっ、けっ。こいつは『狂骨の骨笛』と言ってなぁ。こいつの音を聞いた者は頭がおかしくなっちまうんだ。とくによぉ、魔力が多いと、こいつは効くんだぜ。けっ、けっ、けっ」
頭を抑え、痛がるサスケの姿を見て、男の口元に愉悦が滲む。
「苦しいだろ。でも、もっと苦しめてやるぜ」
男はサスケに向かって針を投げた。刺されば、全身が燃えるように熱くなる針だ。針がサスケの頭頂部に、刺ささりそうになった瞬間、サスケは顔を上げ、人差し指と中指で、針を挟んだ。
「なっ」
さらにサスケは手首を振った。きらりと光る物体。その正体に気づいたとき、男の唇に針が刺さった。
「あっっつぅぅぅい!」
内側から火が噴き出しそうな感覚に、男は体を掻きむしるように暴れる。
「ひぃぃうぃ」
男は懐から丸剤を取り出し、口に流しこもうとした。しかし丸剤が入った筒ごと、手元で破裂した。サスケが『水鉄砲』を放ったのである。
「はぁぁぁぁああん!」
男は薬の破片を口に入れようと、必死で地面を漁る。
サスケは立ち上がった。やられたフリをするのも楽じゃない。木の影に逃げ込んだ瞬間、分身は消え、本物のサスケと入れ替わったのだった。
サスケは悠然と男に歩みよった。
「おい、間抜け。その症状、治したいか?」
「はっ、はひぃぃぃぃ!」
「なら、良い方法を教えてやるよ」
サスケは男の頭を右手で掴んだ。暴れる男を引きずると、その頭を、木の幹に打ち付けた。
「がひぃい!」
男は情けない声を上げ、気を失った。びくっ、びくっと痙攣は繰り返しているが。
「これで、しばらく、苦しまずに済むだろ」
サスケはナイフを取り出し、男の首に当てた。苦しみから永遠に解放してあげようかと思った。
しかし、ラデアーナとのことを思い出す。あのとき、無駄に誘拐犯を殺してしまったせいで、捜査は難航したらしい。今回も、この男たちの背後に潜む悪党どもを見つけやすいように、生かしておいた方がいいかもしれない。その悪党が、どこの、誰かは、知らないが。
「仕方ねぇな」
サスケは印を組む。体に馴染んでいない忍法を発動する時は、印を組む必要があった。
「こんな感じだったかな」
サスケは両手を地面につける。すると、地面が揺れ、無数の土でできた手が飛び出し、男の体を地中に引きずり込んだ。竹の子みたいに、上半身をさらした状態で、男は埋まる。
「さて、こんな奴はどうでもいい」
ノーサのことが心配だ。
サスケは、風となって走った。




