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17.誘う

ここまでのストーリー:気になる子がいた。

 入学してから3日が経った。サスケの知り合いは増え続け、特待生としての知名度にうんざりし始めていた。そんな日の、三時限目の授業中のことである。


「来週、皆さんの親睦会も兼ねて、『血と涙の森』で、実地研修を行います。その際、三人組の班で行動するのですが、班は、皆さんが自分たちで決めたいですよね?」


 サイラ先生の問いに、多くの生徒が「はい」と答えた。


「なら、今から30分時間を与えるので、皆さんで決めてください」


 サイラ先生の言葉とともに、教室が騒がしくなる。


「サスケ君。俺と組もうぜ」

「いやいや、僕とやろうよ」

「いや、こんなやつらより、私たちと組みましょう」


 サスケの周りに、人が集まる。サスケは、頼ってくれることをありがたく思いながらも、煩わしく感じた。この学校では、常に周りに誰かがいて、落ち着けない。今も、外野だけで、誰がサスケと同じ班になるかで盛り上がっている。


(くじで決めればいいのに……)


 サスケは、心の中で、ため息を吐く。


 そのとき、少女の背中を、視界の端に捉えた。サスケが、初見で気になった、銀髪の少女である。彼女は、最前列の席に座ったまま、じっとしていた。


 彼女の名前はノーサ。いつも一人でいる超クールな女の子。自己紹介のときは、自分の名前を言った後、すぐに自分の席に戻ったし、クラスの女子が話しかけても、反応が鈍かった。そのため、クラスメイトも接し方がわからなくて、孤立し始めている。今も、彼女は動かないし、彼女と班を組もうとする生徒は誰もいなかった。


 サスケの脳裏に娘や孫の顔が頭を過る。自分の娘や孫は元気な方だったので、集団の中で孤立するということは考えられないし、実際、孤立はしていなかったみたいだが、彼女たちが孤立していたらと想像すると、胸が痛くなる。ノーサにも親はいるのだろう。親が今の彼女を知ったら、悲しむに違いない。そう考えたら、彼女を放ってはおけなくなった。


(でも、いいのか?)


 と自問する。


(厄介事に巻き込まれかもしれんぞ?)


 ――愚問だな、とサスケは自分の考えを一蹴する。今さら、厄介事の一つや二つに慌てる男ではない。それよりも、守りたいものがあった。


 サスケは立ち上がる。


「あ、サスケ君。決めた?」


 という問いに、サスケは頷く。


「誰?」


 サスケはクラスメイトの視線をその背中に受けながら、ノーサに歩み寄った。


「ノーサさん」


 サスケが呼びかけると、ノーサは振り返った。後ろでどよめきが起きる。サスケは、どよめきを無視して、ノーサを見つめた。ノーサは少し不機嫌そうな顔をしていた。しかしサスケは、それが怒りによるものではないことを、何となく悟った。彼女の体がかすかに震えていたからである。そして、目も合わせようとしない。


 サスケは、できるだけノーサを怖がらせないように、穏やかな表情で言った。


「ノーサさん。良かったら、俺と班を組みませんか?」

「……何で?」

「ノーサさんと仲良くなりたいと思ったので。駄目ですか?」


 ノーサは答えず、俯いた。それから沈黙の時間が流れる。


(これは、一回引いた方が良さそうだな……)


 ノーサの反応が芳しくない。


「すみません、突然言われても、困りますよね?」

「……じゃない」

「えっ」

「……駄目、じゃない」

「それじゃあ、一緒の班になってくれますか?」


 ノーサはこくりと頷いた。


「良かったです。よろしくお願いします。あ、サスケって言います」

「……ん。よろしく」

「他の班員とかは、どうしますか?」

「あなたに任せる」

「了解。それじゃあ、適当に見つけておきますね」


 サスケが自分の席に戻ると、クラスメイト達が驚いた顔で迎える。


「サスケ君。どうして彼女なんだ?」とコエル。

「気になっていたんだよね」


 サスケの言葉に周りは色めき立つ。


「マジか、サスケ君」

「サスケ君ってああいう子が好きなんだね」


(一々、そんなことで騒ぐとか、ガキ……だったな)


 サスケは呆れながら自分の席に座った。あと一人をどうしようか話したいところだが、周りは別の話題で盛り上がっていて、サスケはため息をついた。


 前方に目を向けると、ノーサの後姿が見える。心なしか、彼女のその背中が、さっきまでもよりも、明るく見えた。


 ――結局、もう一人の班員は、コエルに決まった。コエルは空気を読める男であるかのように言った。


「大丈夫だよ、サスケ君。研修が始まったら、僕は別の班に合流するから」


 訂正するのも、何だか子供っぽいので、サスケは、年相応の笑みを浮かべ、「そいつはどうも」と言った。

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