15.入学式当日のこと①
ここまでのストーリー:魔法学校に合格した。
入学式当日。サスケは寮で優雅な朝食を食べる。寮は、少しお高めの宿泊施設と併設されているため、宿泊客に提供する質の良い朝食が、寮生たちにも振る舞われる。しかも特待生であるため、かなり格安で、寮を利用できる。
(有名税ってやつかな)
その代わり、特待生としての噂はかなり広まっているようで、朝食中、視線を感じることが多かったし、実際に声を掛けてくる者もいた。「ごきげんよう」とか、そんな簡単な挨拶だったけど。
腹を満たしたサスケは、部屋に戻って、準備した。
(さて、コネでも作りに行きますか)
なんて、冗談交じりに思いながら、サスケは学校へと向かった。
王都の魔法学校は、秋の中頃から新学期が始まる。海に面した寮を出発し、色づき始めた山々を遠目に眺めながら、オーシャン魔法学校へ向かった。
学校にはすでに多くの生徒の姿があって、門から玄関へと続く道中には、新入生以外にも、父兄や上級生たちの姿があった。
多くの人混みの中で、サスケは見知った顔を見つけた。相手も、サスケに気づいたらしく、手を挙げた。
「サスケ!」
ラトプである。ラトプは、人混みをかき分け、サスケの下までやってきた。
「サスケ。試験ぶりだね」
「ああ。合格、おめでとう」
「サスケこそ! 流石だね!」
「ああ、まぁ」
「おい、ラトプ」と声を掛けてきたのは、丸眼鏡をかけた、茶髪でおかっぱ頭の男だった。
「やぁ、コエル」
「もしかして、彼が、特待生の?」
「そうだ」
「始めまして。コエルだ」
コエルに握手を求められ、サスケは握手し返す。
「サスケだ」
「特待生で合格したんでしょ? すごいなぁ」
「そうでもないよ」
「私も挨拶していいかしら?」
上品な香りのする、赤い巻き毛の女生徒だった。
「やぁ、メラノ」
「こんにちは、ラトプ。そして、始めまして、サスケさん。クルペイダ家のメラノです」
「どうも。よろしく」
「あの、俺もいいかな……」
それから次々と声を掛けられる。さすが、貴族と商人の子供。取りあえず、仲良くなっておこうという打算的な考えが透けて見える。しかしサスケもまた、そんな打算的な考えをもつ男であったから、彼らに対し、社交的に振る舞う。そして驚いたのは、サスケ以外のメンツは、互いに面識があったことだ。上流階級の世界は広いようで、狭いことを、サスケは肌で感じる。
「僕たちは、試験の時、この王都を素晴らしい場所にするために、色々と話し合っていたんだ。なぁ、サスケ!」
「そうだな」
何、その話。と思ったが、取りあえず、ラトプの熱意に合わせておく。
「はぁ、流石だなぁ」とコエルは熱心そうに頷き、周りにいた生徒たちも感心したように頷く。
「なら、今度、うちのパーティーに参加しませんか?」とメラノ。「元老院の先生がいらっしゃるの」
「ああ、それはいいな!」
と盛り上がる周り。
(えぇ……。面倒くさいな)
内心思うサスケ。
そんなやり取りをしていると、校門のそばで大きなどよめきが起きた。目を向けると、人混みが真っ二つに割れ、道ができた。その道を、四人の騎士に守られながら、歩く少女がいた。金色の髪を髪留めでまとめ、目つきは少し鋭いが、凛々しい印象を受ける。第二王女、サキュレである。
サスケたちも脇により、サキュレが歩くための道を作る。
目の前を通り過ぎようとしたとき、「いつ見てもお美しいわ」とメラノが感嘆をもらした。
(あざといな)
と思うと同時に、サスケはサキュレと目が合った。冬の海のような、紺色の瞳に、強い意思の光が宿っている。彼女と出会うのは、試験以来か。と言っても、彼女と直接話したわけではないが。
そして、サキュレはサスケたちの前で足を止めた。
「ああ、聞こえていたのかしら」とメラノ。
それはないと思うぞ、とサスケは心の中でつっこむ。
サキュレはサスケを見つめ、何か言おうとした。しかし、思いなおしたように口を閉ざし、再び歩き始めた。
「シャイなのかしら?」と首を傾げるメラノを見て、サスケは彼女を見習いたいものだな、と思った。
「そろそろ僕たちも移動した方が良いかもしれない」とラトプ。
「そうだな」と周りも同意する。
それからぞろぞろと集団で移動し、それぞれの教室へと移動した。ラトプやメラノとは違うクラスになったが、コエルを含む数人が同じクラスだったので、一緒に教室へ向かう。
そして教室に入り、適当な席に座る。コエルたちが周りを囲んだが、他のクラスメイト達も積極的に話しかけてきた。
彼らに対応しながら、さすがに煩わしく感じてきた。
そんな時、サスケの前に、彼女が現れた。




