11.試験①
ここまでのストーリー:オーシャン魔法学校を受験することにした。
試験前日。サスケはプラトリーとともに馬車で王都であるオーシャンまでやってきた。沿岸沿いの街道を進み、およそ半日かかった。
初めて見るオーシャンの街にサスケは感心する。芸術作品となるように意識されているかのような街並み。レンガ造りの建物が、整然と建ち並び、人の数も多かった。そしてエルフなどの亜人の姿も見える。今の王様は他種族との友好を大事にしているらしいから、その意識がちゃんと反映されていた。
(ラデアもいたりしてな……)
一年前から、手紙すら来なくなった、親しい友人の影を何となく探してしまう。
その日は、姉のアロピと再会し、家族三人で食事した。本当は、兄のディトロとも会う予定だったが、ディトロがそれを拒否した。最近は、実家にすら帰っていない。
「私も全然会ってないよ」
とアロピは言った。しかし、そもそもアロピは、ディトロとそんなに仲良くなかったから、参考にならない。
「明日、ディトロの家に行ってみるわ」
プラトリーは決心した顔で言う。
そして翌日。サスケは試験会場であるオーシャン魔法学校の門をくぐった。サスケは、目の前にそそり立つ、城のような校舎を見て、唸った。さすが王都一を自称する学校である。その佇まいは、王都一の実績に恥じない。
受験生と思しき人の列に従って、サスケは筆記試験が行われる教室へと向かった。
人数の割に静かな講堂で試験開始を待つ。他の受験生が、必死になって勉強をしている中、サスケは仕込みを始める。
それから30分後。試験官がやってきて、試験が始まった。
渡された問題用紙を眺めること、1分。サスケは自力じゃ一問も解けないことを悟る。ゆえにサスケは、情報収集をすることに決めた。
分身を図書館に行かせているから、分身を遠隔操作しながら、問題解決の手掛かりとなりそうな文献を探す。さらに、忍法を使い、他の受験生の解答を盗み見ることで、答えを補強する。サスケは、そうやって解答欄を埋めた。
サスケに罪の意識はない。なぜなら、忍者とはそういう生き物だからだ。問題を解くための頭の回転力も必要だが、制約された条件下で情報を集める能力も必要である。今回は、後者をいかんなく発揮している。
(まぁ、これで8割は固いな。問題は、この一問だよな……)
一問だけ超難問があった。他の受験生も頭を悩ませている。この問題を解くべきかどうかで迷った。
そのとき、分身から連絡が入る。精度がさらに上がった分身は、10歳程度の知能ではあるが、自律的に行動できる。
(親分。その問題を解けるという老人に話しかけられました)
(今いる?)
(はい。繋ぎます)
視点が切り替わり、図書館になる。目の前に白髪で滝のような白い髭を生やした老人がいて、嬉々とした表情で問題の解き方について説明していた。解答を見て、サスケは暗記し、視点を切り替えた。
(その老人の対応は任せた)
(御意)
試験会場に意識が戻ってから、サスケは問題について改めて考えた。やはり、多くの受験生が解けていない。そんな問題を正解したとなると、変に目立ちそうである。しかし、他の受験生と差をつける保険としては、取っておきたい問題でもある。
(どうしたもんかな……)
サスケは考えた結果、途中まで解くことにした。加点されたらいいな、くらいの気持ちで解答欄に答えを書いた。
そして筆記試験が終わり、昼休憩を挟んでから、実技試験となった。
普通の実技試験は魔法の能力をどれだけ有しているのかを測定するらしいのだが、特待生及び騎士団支援制度(将来、騎士団へ入団することを条件に授業料などを免除する制度)の希望者は別の会場で試験が行われるため、闘技場へと移動する。
闘技場はオーシャン魔法学校の敷地内にある楕円形の施設だ。一階が闘技スペースで、二階から三階が観覧席となっている。特待生希望者の試験は、騎士団支援制度の希望者の後に行われるから、サスケは二階の観覧席に座りながら、周りを眺める。
観覧席には受験生以外の姿もあった。とくに目立つのは、反対側に座る、騎士団と思しき凄味のある集団と、騎士団に囲まれているサスケと同じくらいの少女だ。話している唇の動きから察するに、彼女は王女様だった。
「将来、王女様の護衛になる方がいらっしゃるかもしれませんよ」と言う言葉に対し、「ふーん」とどうでも良さそうに答えている。
そしてサスケには、騎士団の中に気になる人物がいた。セラータである。あの後も何回か会っている。
(挨拶した方が良いよなぁ)
しかし面倒だなぁと思っていると、声を掛けられた。
「こんばんは。君も、騎士団の入団希望者かい?」
そばかすのある茶髪の男だった。垢抜けて、都会の少年って感じがする。
「いや、特待生の方」
「へぇ、それはすごい!」
「あんたは?」
「僕は騎士団の方。頭がそんなによくないんでね。あ、そうだ。僕の名前はラトプ。君は?」
「サスケ」
「そうか、サスケ。よろしく」
ラトプはそう言って微笑んだ。




