神に恋した異世界転生者
魔法と剣のファンタジー世界。
よくある異世界転生もの。
大体が神様の説明からのチート能力をもらって、後は勝手に世界を満喫するものだけれども。
「かっこいい…」
私は、神様に一目惚れしちゃいました。
めちゃくちゃ神々しいイケメンの凛々しい姿の神様に、転生前のお約束的な説明をただいま受けております。はい。
『すまない。こちらの世界では、魂まで消し飛ばされてしまう魔法で魂が消失したり、魂までをも転生できぬよう封印してしまえたりと、とにかく魂が不足していてな…』
どうやら、魂不足の為に私の魂を地球ではなくて、こちらの世界で生まれ変わって欲しいのだそう。
『摩耗していない綺麗な魂だから、すでにこちらの世界の弱った魂より君のが強い。魔法の根源は魂の力。勇者になりたければ男に、聖女になりたければ女に生まれ変わらせるくらいなら造作もない』
すでに神様が手を加えなくても私は魔法の力が強い状態で生まれるらしい。チート人生が約束されてるようなものだね。
『ただ、本来なら縁の強いもの同士は何度生まれ変わろうと親子になったり恋人になったりするものを、別世界に転生させることでその縁も途絶えてしまう。そこで、記憶はなくなるだろうが、良縁に恵まれるように手を加えることもできる』
ああ、運命の相手とかいなくなるわけで、それを気にして転生前に私の願いを聞こうとされていると。そういうことですね?
『うむ。縁のあるもの全てをこちらの世界へ転生しようにも、際限なくてな…』
人の縁、それも生まれ変わってもとなると、すごい膨大な人数になりそうだもんね。
『そなたが望めば、王族や貴族の家に生まれ変わらせることも、平民でも富裕層の部類に入る家に生まれ変わらせることも可能だ』
権力やお金のある家に生まれ変わらせてくれるより、健康で愛情深い家の子供になりたいです。貧困生活も御免こうむるんですが、責任があまりにも重い貴族様もちょっと…。肉体労働もできたら…嫌かなぁ。
『そうか。不自由しない程度のしがらみの少ない下位貴族の令嬢として生まれ変わらせよう。子息であると、後継ぎにならねばならないだろう。次男三男となると、平民になり自活せねばならないからな』
ありがとうございます!
『他に要望はないか?』
え?結構わがまま言ったと思いますが…まだいいんですか?
『苦労しない程度の家に女として生まれること、だけだからな。まだいいぞ』
でしたら、記憶を消さずに転生させてもらうことはできますか?
『記憶があると、苦労しないか?』
え、苦労ですか?
『ああ、世界が違うのだ。差異に混乱もするだろう。生き辛くはならないか?』
どうなんでしょう…?ただ、記憶がなくなるということは、神様のお顔も忘れてしまうんですよね…覚えていたいです。
じっと、神様を見つめる。
『私をか?』
こくりと頷いた。
『信仰深いのだな。よかろう。初の試みより、そなたにとって良いのか悪いのかもわからぬが、望み通りとしよう』
ありがとうございます!生まれ変わったら、毎日お祈りしますね。
『そうか。では、我を信仰する国へと送ろう。言語で混乱するかもしれない故、そこはサービスしよう』
何から何までありがとうございます。
眩い光に包まれ、私としての生涯は幕を閉じたようだった。
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「メアリー様!また協会ですか?」
「ええ。アレク様へのお祈りと、頼まれていたアレク様の絵を神父様にお届けに」