シロとクロ(ボイスドラマ化進行中)
語り:あるところに、白猫と黒猫がおりました。名前はそのままシロとクロ。
二匹共とてもきれいな猫でしたが、シロは黒猫に、クロは白猫になるのが夢でした。
シロ「いいなぁ、クロは」
語り:シロが言いました。
シロ「真っ黒な身体、そして金色の目。まるで闇夜に満月が浮かんでいるみたい。」
クロ「いいなぁ、シロは」
語り:クロも言いました。
クロ「真っ白な身体、そして青色の目。まるで大きな雲と澄んだ空みたい。」
語り:それから二匹はじゃれあったり、毛づくろいをしたり。
散々はしゃいで、疲れたら、並んでのんびりと空を眺めて過ごします。
シロ「ねぇ、クロ」
クロ「なぁに、シロ」
シロ「お空には、色んな色があるよね」
語り:と、シロは自分とクロを順番に見比べながら
シロ「シロの目みたいに青いときと、クロの毛みたいに黒いときと。
シロの毛みたいに白い雲と、クロの目みたいに金色の月と」
語り:そう、言いました。クロは、ゆっくりとしっぽを振りながら
クロ「そうだね。おひさまが出るときはオレンジ色になったり、
雨が降るときには灰色になったりするときもある。
虹が出ているときもある。色がいっぱいだね。」
語り:いろんなお空を思い浮かべ、答えました。
シロ「クロは、どの色のお空が好き?」
語り:シロが聞きます。
クロ「うーん」
語り:とクロは首を傾げて
クロ「やっぱり白色と青色かな」
語り:そう答えました。
クロ「シロは、どの色のお空が好き?」
語り:クロが聞くと
シロ「うーん」
語り:今度はシロが首を傾げ
シロ「やっぱり黒色と金色かな」
語り:そう言って、にゃはっと笑いました。
シロ「クロは、どうして白色と青色が好きなの?」
語り:クロの目をじっと見つめ、シロが尋ねます。
クロ「シロは、どうして黒色と金色が好きなの?」
語り:クロもシロの目を見つめ返し、聞きます。
クロ「それは」
シロ「だって」
クロ「シロの色だから」
シロ「クロの色だから」
語り:クロは恥ずかしそうに顔を背け、シロは幸せそうに目を細めてにゃーと鳴きました。
クロ:「でもね」
語り:クロはシロを見つめ直し
クロ:「本当は何色だっていいんだ。」
語り:優しく喉を鳴らすと言いました。
クロ「色なんて、関係ないんだ」
シロ「うん」
語り:頷くと、シロも喉を鳴らします。
穏やかな風が、色とりどりの草花を揺らしていきました。
クロ「あのね、今だから言うよ」
語り:照れくさそうにヒゲをピクピクさせながら、クロは言いました。
クロ「クロが白猫になりたいのは、シロとお揃いになりたいって思ったからなんだ」
語り:シロは耳をピクピクさせて、こう答えました。
シロ「シロも、クロとお揃いになりたいって思ったから、黒猫になりたいんだ」
語り:二匹は見つめ合い、お互いの鼻をチョンッとつけ合います。
クロ「…けど、これは今思ったんだけど。もしも、もしもクロとシロがお揃いだったら、
こんなに仲良くなれなかったかもしれない」
シロ「うん。きっとシロたちは、お揃いじゃないからこんなに仲良しになれたんだよ」
クロ「お揃いじゃないから、喧嘩もするけど」
シロ「お揃いじゃないから、楽しい」
クロ「お揃いじゃないから、シロのこと知りたい」
シロ「お揃いじゃないから、クロと一緒にいたい」
2匹「「お揃いじゃないから、好きになった」」
クロ「…そんなシロと一緒に見る空だもん」
シロ「クロと一緒に見られる空なら」
2匹「「どんな空だって、大好き」」
語り:あるところに、白猫と黒猫がおりました。名前はそのまま、シロとクロ。
とても綺麗な、お揃いじゃない二匹の猫は、
今日も大好きな空を、大好きな誰かと一緒に並んで、
のんびりと眺めていました。おしまい。