目覚めと始まり
ジリリリ、ジリリリと、目覚まし時計の音が聞こえる。
どうやら定時になったようだ。覚醒前の深い深い眠りの沼に浸かりながら、ベルの音を聞いていた。
やがて体が浮き、覚醒する。
手探りで目覚まし時計をとめ、時間を見る。
俺、斎藤健太が愛用している目覚まし時計は、手でねじを回し時刻を設定する古い時計だ。
買った当時から数字が消えかかっていたり、割れていたりするデザインはとても気に入っていた。
そこで違和感に気づいた。
その違和感とともに後悔も押し寄せ、瞬時に時計の針に目をやる。
―どうやら、1時間ほど時間を間違えたらしい。
「くっそ! もう少し寝とけばよかった……」
俺は1度起きると眠気が吹き飛んでしまう体質だった。
どおりで母の料理の匂いがしない訳だ。
しかし、久しぶりの早起きだし、なんかするか。
そう思い、だいぶ前に買ったエアガンやら電動ガンやらに手を伸ばす。
弾をありったけ込め、念のために腰にサブウェポンの相棒の木刀を下げ、部屋のドアの前で構える。
「これより、制圧作戦を始動する。進めぇ!」
そう呟き、ドアを静かに開け、数少ない俺のおも……遊び相手の部屋に向かう。
弟の直隆の部屋だ。
バタン!と勢いよくドアを開け、連射しまくる。
部屋に弾が200発ほど散らばった頃、我が家には怒鳴り声と悲鳴が響いた。