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8.転校生はめんどくさい2

ブクマありがとうございます!

感想等もお待ちしております。


引き続きよろしくお願いします!


 刈谷千夏は自分勝手な女だ。

 彼女のカリスマ性やリーダーシップには犬猿の仲の俺も度々驚かされてきた。

 中学時代は彼女の見た目だけでなく、独断専行する姿に憧れた生徒も大勢いた。

 卒業を前に学校を去ってしまったが、卒業文集では『金持ちになりそうな人』1位、『社長になりそうな人』1位、『芸能人になりそうな人』1位とあらゆる部門で1位を取っていた。


 ちなみに俺は『連帯保証人にしたい人』1位である。

 舐めとんのか! このリアルすぎる部門を作ったやつを抹殺したい。


 それにしても中学の同級生の誰もいない学校に来たはずが、まさかこんな所で、しかも千夏と出会ってしまうとは思いもよらなかった。


 美浜さんの提案で不本意ながら俺も一緒に校舎を案内することになった。

 俺達3人は部活動の音が響く校舎をぽつぽつと歩いていた。

 

 「桜形くんと千夏ちゃんは中学時代からの友達なの?」


 千夏との関係は別に友達ではない。

 でもまあ生徒会でも一緒だったしなんだかんだで、同級生の女子の中では1番一緒にいて、1番話したやつかもしれない。

 ってこれって友達なんですかね? んー嫌ですね。

 

 「まあ友達というかなんというかよくわからん関係だな! ぐはっ···!」

 

 俺の発言を聞いて、千夏はエルボーを食らわしてきた。

 肘先で的確に顔面を捉えるエルボーは三沢光晴を彷彿とさせる。

 

 「なに言ってんのよ! まあ友達ってことでいいんじゃないかな? こいつが会長で私が副会長だったんだ」


 さっきまで変なおじさん以下と罵っていた俺を友達と呼ぶのか。

 コノヤロー! 

 それにしても女が普通エルボーするかよ!

 やはりこいつは猿だ!


 美浜さんは千夏が副会長だと聞いて、仲間意識を感じたのかどことなく嬉しそうだ。


 「副会長だったんだ! じゃあ昔交流会にも来てたんだね!」


 「あー、そういえばあったわね! 懐かしい! 美浜さんも生徒会メンバーだったの?」


 「生徒会長だったよ! この学校でも来月の生徒会長選挙に立候補してて」


 「生徒会長選挙···。涼はもちろん立候補するのよね?」

 

 中学時代の俺を知っている千夏は当然のように聞いてくるが、こいつはまだ俺が変わってしまったことを知らない。


 「もちろん立候補しねーよ。俺はもうそうゆうめんどくさいの辞めたんだよ」


 「あんたホントに桜形涼なの? 昔なら尻尾振って飛びつきそうなのに」


 尻尾振って飛びつくとか俺は犬か。

 あっそういえば千夏が猿で俺は犬でしたワン。


 「もう中学生の時とは違うのし、それに俺は美浜さんのこと応援してるの」


 「ふーん、美浜さんをね! なにがあったか知らないけど随分と腑抜けになったものね。やっぱりたっちゃんの言ってた通りね」


 また千夏の機嫌が急降下した。

 忙しいやっちゃなー。

 たっちゃんとは中学時代の生徒会の会計で俺の親友でもある。

 文化祭などで予算をバカバカと使っていく俺と千夏のブレーキ役にもなっていた。


 「お前たっちゃんに連絡してたのかよ。ってか俺のこと聞いてんじゃねーよ!」


 「そりゃいろいろ聞いたわよ!」


 いろいろってなんだよ!

 てか否定しろよ。

 認められても困るんだけど。


 「決めた! 私も生徒会選挙でる!」


 「はぁ? あんた馬鹿?」

 

 驚きと同時に自然とアスカみたいな言葉が出てしまった。

 転校してまだ1日も経ってないのにいきなり生徒会選挙に出るやつがいるだろうか?

 まあここに1人いるからいるのだろう。

 それにしても当選するとは全く思えないのだが。

 美浜さんも驚きを隠せないようで、ちょっと後ろに仰け反っている。


 「千夏ちゃん、本当に出るの?」 


 「もちろん! 私は一度決めたことはやる女よ!」


 なんだその男前な言葉。

 俺もそんなこと言ってみてー。

 まあ今は一度決めてもまた何度も覆すのが俺なのだが。


 「じゃあ千夏ちゃんとはライバルだね!」


 「そうね! 負けないわよ!」


 二人は本日二回目の握手を交わした。

 そんな二人の熱い勇姿を俺は冷ややかに見つめていた。

 何故なら校舎の案内を全くしてないからである。

 早く帰ってゲームやりたい···。


*****


 斜陽の射し込む校舎の案内をダッシュで終えて、3人で帰ることになった。


 「千夏ちゃんって、お家は桜形くんの家と近いの?」


 「私中学終わりに引っ越して、戻ってきたから今はこの辺の近くに住んでるのよ」


 「へぇーじゃあ前の家はもう売っちまったのか?」


 「そうゆうこと! 私と一緒に帰れなくて残念だったわね」


 「残念なのはお前の頭だよ。ぐはっ···」

 

 鮮やかなローリングエルボーが俺の脳を揺らした。

 だからお前は三沢か! 

 俺が体勢を立て直し、千夏を睨むと悪意に満ちた表情をしていた。


 「そういえば涼の中学の時のあだ名で面白いのがあったわね」


 「気になる! なんて呼ばれてたの?」


 美浜さんは好奇心満載に尋ねている。

 まずい。

 これは知られるわけにはいかない。

 叫ぶしかない!

 

 「ああぁぁぁあーーーー!」

 

 「うっさい!」


 「ぐふっ···」


 本日3度目のエルボーが脇腹に突き刺さった。

 今日俺はマジで王道プロレスに一歩近づけた気がする。


 「女子に告白しすぎてて『告白のマシンガン』って呼ばれてたのよ」

 

 美浜さんは小首を傾げ不思議そうにしている。


 「告白のマジンガー?」


 なんか巨大ロボットみたいになってんぞ!

 Zつけたら確実にくろがねの城だろ。


 「もういいだろ! 美浜さんもう家そこだし」


 「美浜さんの家近っ!」


 千夏も美浜さんの家の近さにはびっくりしたようだ。

 さすがカップ麺通学。


 その後千夏ともすぐに別れて家路につく。

 いよいよ来週から生徒会選挙の候補者活動が解禁される。




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