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4.恋愛相談なんてめんどくさい2

ブクマと感想ありがとうございます!

すごく嬉しいです。


誤字脱字に気を使って書いていきますのでこれからもよろしくお願いします。

 美浜美春は食いしん坊である。

 そんな無駄な予備知識がこの時間で増えてしまった。


 安達さんの恋愛相談を聞いてる時も無心でデニッシュパンを食べている美浜さん。


 「あの···美浜さん!? 安達さんの相談聞かないの?」


 こちらに気づいた美浜さんは顔を少し赤らめて、デニッシュパンがまだ残る口を懸命に抑えながら返答をしてきた。


 「んーんっーん! んー!」


 「何言ってるかわからねーよ!」


 ゴクリとパンを飲み込むと、再び美浜さんが口を開いた。


 「ご、ごめん! ついつい夢中になってしまって」


 手を太ももに置き、モジモジしている美浜さんの姿をみて俺は不覚にもかわいいと思ってしまった。


 それにしても今時の女子は『私、少食なんだよね〜』とか『ダイエット中なんだよね〜』とかかなりどうでもいいことをアピールしてくる生き物だと思っていたのに、美浜さんは取り繕うことなく素を出している姿を見ると、まだ知り合ったばっかりなのに素直な子なんだなと思ってしまう。


 本題に戻ると安達さんの相談は三角関係をこれからどうしていけばいいのかという内容だ。


 俺はその他二人のことを全く知らないのでどんな人なのか聞いてみた。


 「えーっと、その武田くんって人はどんな人なの?」


 「野球部のレギュラーですごく運動神経がいいんだ! 結構モテてて、1年の時からちょくちょく告白されてるんだよ」


 野球部と聞いたところで、俺の中に眠る嫉妬心がちょっと目を覚ます。


 野球部とは日本における部活界の帝王であり、必然的に注目を集める部活だ。

 注目を集めるとはすなわち応援されるということである。


 中学時代、うちの野球部は弱かった。

 俺の所属していたバレー部のほうが幾分まともな成績を残している。


 だが部活界の帝王である野球部は弱くても学校の多くの生徒に応援してもらえていた。

 対する俺のバレー部への応援はほぼ決まって親のみである。


 でもそんなことで僕嫉妬したりしないんだからねっ!

 ホントなんだからねっ···!


 「それで安達さんの友達って人は?」


 「日向葵って子で私が小学生の頃からの友達なの」

 

 さっきまで食べることしか考えなかった美浜さんが口を挟む。

 

 「葵ちゃん、いい子だよね〜」


 女子同士のいい子って本当にそう思っているのだろうか? とか余計な事を考えるが、美浜さんなら本当にそう思ってそうだから不思議だ。


 「咲ちゃんと葵ちゃんの関係なら大丈夫だと思うんだけどなー」


 甘いな美浜美春よ!

 恋愛と友情をこの三角関係で両方得るなど不可能なのだ。

 例え葵ちゃんとやらがどんなにいい子でも、その過程で傷つき、安達さんを恨めしく思うのは当然であり、必然なのだ。


 「んーまあそりゃ葵さんが認めてくれるならそれで解決するけど、その可能性はなさそうなんだよね?」


 「うん···。葵も武田くんのこと本当に好きだから、多分これで私が武田くんと付き合ったら、もう友達として見てくれなくなると思う」


 「だよな、武田くんとやらにはその事は話してないのか?」


 「武田くんには告白の返事もまだだし、私からこんなこと言っていいのかなって···」


 彼女は言わなかったが、きっと望んでいるのは武田くんと付き合いつつ、今までのように葵さんとも仲良くしたいという事だろう。

 

 この問題はまず、丸く収めようなどと考えてはいけない。

 必ずどちらかの答えを出して、誰かが傷つくことを受け止めなければならない。

 一番大切なのは安達さんが何を望んで、どうしたいかということ。

 俺はすぐさまそう結論付けたのだ。


 「安達さんのためにはっきり言っておくけど、君が望むような事は誰もできない」


 「ちょっと桜形くん!」


 美浜さんが俺にそれ以上言わせないように手を伸ばして会話を遮った。

 俺はそれを振り払うように会話を続ける。


 「安達さんが自分の恋を選ぶのか、それとも友達との関係を選ぶのかその二択しかないんだから、自分で悩んで結果を出すしかない」


 なんとめんどくさい人間関係だろう。

 安達さんは自分の恋が叶うというのに、叶う可能性のない葵さんに気を使い、自ら可能性を消滅させようとしている。

 だが人が人を想い、気を使っているからこそ、それぞれの人間関係を成り立たせているのだろう。


 「そ···そうだよね···」


 安達さんは机に顔を伏せて、肩を震わせていた。


 「あー! 桜形くんが泣かせた!」


 なんだその小学生の定番セリフは!!

 俺は小学校の同級生の吉田くんのことは泣かせてないぞ!

 絶対にだ。 


 「いや、俺が泣かせたわけじゃないし当たり前のことを言っただけだろ?」


 「そうかもしれないけど、私達にもなにかできるかもしれないじゃん! そんなにすぐ突き放さなくても」


 何かって何なんだよ!?

 俺は魔法も使えなければ、記憶操作もできない。

 ましてや某ラブコメの主人公のように頭もキレない。

 ただの男子高校生だ。


 「美浜さんは一生懸命だな! 俺は君みたいに誰かを助けたり、そのために動いたりなんてできない。 ―――それじゃ俺帰るわ」

 

 二人を残して、俺は喫茶店を出た。

 帰宅途中で思い出したが、コーヒー代払ってなかったなと気づいてしまった。

 まあ明日返そう。


 家に帰宅するとマリアが居間にお茶を取りに来ていた。


 「おにーちゃんお帰りー! 今日まなみちゃんが来てるからよろしく!」


 おにーちゃんはまなみちゃんなる人物を知らないし、だいたいこうゆう時の『よろしく』ってマジ何なんだよ!?

 よろしくとは便利に使い古されたら可哀想な言葉なのかもしれない。


 「そうか、おにーちゃんはこれから寝るから静かにしといてよ」


 「はぁ? 学校から帰っていきなり寝るとかどんな神経してんの? 睡眠お化けなの?」


 「なんだその、もったいないお化けの親戚みたいなのは? とりあえずおにーちゃんは疲れたの」


 本当に疲れたのだ。

 人に相談されるのは久しぶりだったし、相手は女子の恋愛相談だ。

 気疲れもしてしまう。

 

 「まあ、とりあえずおにーちゃんも一緒に遊ぼうよ!」


 「いや、おにーちゃん行っても気まずいだけだろうよ? その、かなみちゃんも多分気まずいぞ」


 「まなみちゃんね! "なみ"しか合ってないし」


 「いや、2文字合ってるなら十分だろう」


 マリアは痺れを切らしたのか、俺の腕を掴み、取りに来たお茶も忘れて自分の部屋にグイグイと引っ張って行った。


 「あの、マリアさん? 僕は牛ではないのでドナドナしないで頂きたいのですが?」


 「いいから! おにーちゃんは来るの!」


 マリアの部屋に入るとまなみちゃんなる人物が部屋でゲームをしていた。


 「えーっと、マリアの兄の涼っていいます」


 「こんにちは! マリアちゃんと同じクラスの佐竹まなみっていいます」

 

 まなみちゃんは驚くことなく即座に自己紹介をした。

 

 「マリアから話はたくさん聞いてますよ! それに中学の先生もお兄さんのことすごく褒めてました」


 相変わらず俺の中学の評判は健在らしい。

 まあ過去の栄光であり、今はこんなお兄さんでごめんね! といった感じなのだが。


 「ささっ! おにーちゃんも座って一緒にゲームしよーっ!」


 マリアは楽しそうに俺を座布団の上に座らせた。

 早速格闘ゲームを始める。

 中学生の女子、しかも妹の友達と格闘ゲームなどなんか俺にとっては違和感しかない。

 ゲームの中とはいえ女子をボコボコにしてしまっていいのだろうか? 手加減したほうがいいのか?

 そう悩んでいるうちに俺とまなみちゃんの対戦が始まってしまった。


 ―――ドゥジュン、バゴ、ドカ


 「うおっ! 痛っ! いてーっ!」 


 思わず声を出してしまう。

 昔から格闘ゲームをしていると、ゲーム内のキャラがダメージを受けるたび『痛っ!』と声を出してしまうのだ。

 どんだけストリートファイトしてんだよ俺。


 それを見ていたマリアとまなみちゃんが爆笑している。


 「おにーちゃんさ、昔から変わらないよね?」


 「お兄さんおもしろいですね」


 まあ馬鹿にされているんだろうが、久しぶりにこうして遊んでみるのも悪くない。

 

――――バシッ! うわーうわーうわー、KO!


 おい、負けてしまったぞ!

 女子中学生に!

 なにこの子、最後ハメ技だったよ?


 「ま、まなみちゃんは強いなー、ははっ」


 「そんなことないですよ!? お兄さんが手を抜いてただけなんじゃないですか? 強そうなのに」


 まなみちゃんの言った言葉が妙に俺の心に残る。

 手を抜いていただけか···。


 その後3人で交代で対戦したが、結果は俺の全敗。

 おい! おにーちゃんの威厳を残せよ! マリア!


 まなみちゃんをマリアが送って行くとのことで、俺は先に風呂に入っていた。

 ふと今日の安達さんの泣く姿が目に浮かぶ。


 「どうすりゃよかったんだよ···」

 

 

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