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34.燃え尽き症候群の俺の青春はどこかいつもめんどくさい

こちらで物語の完結となります。

 いろいろあった生徒会選挙から数カ月後。

 暑い、熱い、青春の夏がやってきた。

 入道雲の白とどこまでも続く青空がどこかノスタルジックな気持ちにさせる。

 真夏の太陽は容赦なく白い校舎を照らし出し、青春を送る俺たちの日々をもっと輝けと訴えかけているようだ。

 俺たちは今、秋の文化祭に向けて準備をしている。

 今日もすでに行き慣れてしまった生徒会室を目指して放課後に歩みを進めた。

 生徒会室の扉の前には南京錠が取り付けられた目安箱が設置されている。

 美浜会長支持のもと秋穂が作ったお手製の目安箱だ。

 可愛らしいフェルトでできた花の装飾があしらわれており、目立ち度も抜群だ。

 目線を扉の上にやると千夏が書いた大きな生徒会室の文字がプレートに掲げられている。

 しかしこれは勝手に千夏が書いた物だ。

 扉越しに室内からは部活動の喧騒に負けない賑やかな笑い声が響いている。


*****


 あの騒動の後、美浜さんは無事生徒会となり藍葉先輩の疑惑も晴れて大団円となった。

 みんなはいきなりの解決を不思議に思って問いただして来たが、俺は答えなかった。

 それには大した理由があるわけではないのだが、渡辺佳代に罰を与えなかったことが本当に正しかったのか俺にもわからなかったからだ。

 だがその後俺たちの前に現れた黒神と渡辺佳代によってすべてが語られた。

 土下座をして反省をする彼らを責める者はもちろんいなかったが、罰を与えなかった俺には千夏や周ニからは批判的な声が上がった。

 だがすぐに彼らも納得したようでそれ以上責められることはなかった。

 恐らく美浜さんが二人に何か言ったのだと思う。

 それから生徒会長となった美浜さんは自分の掲げていた公約をすぐに実行に移した。

 この学校の同好会や部活動も増え賑やかさは日に日に増していってる感じがする。


 そして何より俺たちを驚かせたのは美浜さんが週代わりの漢字コンクールや英語コンクールなどの実施を行なったことだ。

 これは各学年小テスト形式で毎週1回行われ、点数の合計が1番高いクラスに表彰を与えるという試みである。

 元は黒神が公約の一部に掲げていた内容なのだが、いいことは真似していこうという彼女の意見により半ば強引に実行された。

 それを知った黒神は『美浜くんにも借りができたな。君の借りも必ず返すからな』と彼らしくクールな微笑みを浮かべて去っていった。

 その後ろ姿はどことなく幸せそうだった気がする。


 藍葉先輩は美浜さんに執行部入りを執拗に進められたが、結局断った。

 先輩は美浜さんに『これからあなたがどうこの学校を楽しくしていくか。それだけを見るために学校に通うことにするわ』とプレッシャーの残る事を言っていたが、その後も度々生徒会室には顔を出してアドバイスをくれている。


 千夏、周二、秋穂の3人は美浜さんから執行部の勧誘を受けて快く承諾した。

 俺も執行部の勧誘を受けて最初は戸惑ったが自分の気持ちに素直に従ったところ加入することとなった。

 世の中には『俺じゃないとできない』こと、なんてのは少ない。

俺の代わりはたくさんいる。それが正であり、解である。

 だが経験は自分だけのものであり、それを人生に刻み付けることができるのも自分だけだ。

 燃え尽き症候群となった俺の心の灰は静かにくすぶりはじめた。

 

 美浜美春。

 彼女との出会いは突拍子もないほど突然で不思議な縁を感じる出会いだった。

 これからも彼女を応援していくかもしれないし、違う方向に向かうのかもしれない。

 ただ今はその出会いに感謝している。


 ちなみにマリアは無事生徒会長に当選して今は二代目桜形として頑張っているようだ。

 

*****


 熱気の籠った室内の扉を開けると執行部の面々と中央に座る美浜会長がいる。

 

「桜形くん! 今日写真撮ろうと思うんだけどいいかな?」


「なんでいきなり?」


「生徒会室に飾ろうと思って……」


「いいじゃない! いろいろとごたごたしててそうゆう仲間みたいなことしてなったし」


「いいと思います。私も先輩と、いや先輩方と写真撮りたいですし」


「秋穂今先輩とって言ったわよね? 抜け駆けわダメだからね」


「そ、そうですよ秋穂ちゃん」


 美浜会長の提案に千夏と秋穂も賛同のようだが、相変わらずのごたごた感だ。


「ってか周二まだ来てないじゃん」


「あっ、連絡入れておくね。それと折角だから堤防で撮ろうと思うんだけど、どうかな?」


 俺たちは首肯して返事をすると賑やかに騒ぎながら堤防へと移動した。

 少し遅れて周二が藍葉先輩を連れて合流した。

 先輩は少し照れくさそうにしながらも美浜会長を中心に置いた一列に加わる。


「桜形のくせに私の隣に来るとはいい度胸ね」


「いや、先輩は一応先輩ですから真ん中寄りのほうがいいかと……。って俺の名前今初めて呼びましたよね!」


「うっさい! いいから周二早くシャッター押しなさい」


「またこんな地味な役回りばかり俺に押し付けて……。はい撮りますよ!」


 周二がタイマーのかかったシャッターを押してカメラのフラッシュが残りの秒数を伝える。

 足早に駆けてくる周二が石で躓いて俺たちを巻き込みながら派手に転んだ。


 ――バシャーン


 河川に勢いよく入水した俺たちはみんなしてずぶ濡れになった。


「ちょ、ちょっと周二なにしてんのよ!」


「あんた……ぶち殺すわよ」


「周二先輩最悪ですぅ~」


 怒るみんなに周二は苦笑いを浮かべながら謝る。

 そんなみんなとは違って美浜会長はどこか楽しそうだ。


「さ、桜形くん。初めて出会った時みたいだね」


「確かにそうだな。まあ今はあの時より寒くないし、丁度いいくらいだがな」


「だね。これからもよろしくね! 副会長さん」


「わかりましたよ会長!」


 人生はめんどさいことの連鎖でできてる。

 これからもどこかいろいろめんどくさいことは現れてくるのだろう。

 だがそんな青春も今は悪くないと思う。


「ちょ、涼なにしてんのよ」


「そうですよ! ってサラシ取れそう」


「あ、秋穂って胸にサラシ巻いてたのか!」


「桜形くん! 女の子には秘密がいろいろあるのですよ。深く聞いちゃだめです!」


「桜形助けろ~! 藍葉ちゃんがソフトボール持ってる」


「待て周二!」


――バコッ


「「大丈夫!!」」


 ああ、やっぱり俺の青春はどこかいつもめんどくさい。

これまでご拝読いただきましてありがとうございました。

まだまだ拙い文章ですがご感想や評価をいただけましたことを大変ありがたく思います。

密かに執筆していたローファンタジー作品を来週あたりに投稿させていただきます。

また見かけましたら一読いただけますと幸いです。

これからもよろしくお願いいたします(*´▽`*)

グッドリッチ忠勝


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