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n=1から始める魔界方程式  作者: 辛味庵
プロローグ
1/15

終わりと始まり

初投稿。頑張ります。

──目が覚めたらそこには美少女が立っていた。


 なでしこ色のウエーブがかかった髪を揺らし、その茶色の瞳を涙で濡らしながらこちらを見ている。

 暗がりでよく見えないが、この少女が可愛らしく魅惑的な顔立ちであるのは間違いない。その少女の赤く血色のよい唇から透明感のある声音が発される。


「来てくれた……ありがとう、ありがとう」


 そう言うと彼女はその細い腕を、こちらの首に回してすがるように抱き着いてきた。


「本当はこんなことは許されないけど、最後にどうしてもあなたに会いたかった。罪深い私を許して下さい。ごめんなさい」

「え? ちょ、ちょっと!」


 突然のことに意識も体も追いつかず、彼はまともな言葉が出せない。目が覚めたと思ったら目の前に美少女がいて、おまけに抱き着いてくる。どういうことなのか。

 こんな状況でも条件反射的に火照ってニヤついてる顔に喝を入れ彼は何とか言葉を紡ぎだそうとする。しかし、何一つまともな言葉が出てこない。

 と、少女が顔をあげ、顔を強張らせながら言った。


「来た……」

「な、なにが来たって……」


──と、彼の背筋に殺気が走った。瞬間、彼の脳が恐怖を感じ取り、体に緊張が走る。


「な、なんだ!? 」


 こみ上げてくる恐怖感の原因を探るために彼はあたりを見回す。何かが暗がりから彼らのもとへ歩み寄ってくるのを感じた。その『何か』は空間をも歪ませているほどの殺気をまといながら一歩、また一歩と近づいてくる。

 しかしながら、彼は体を動かすことができない。彼を抱き着いている少女もまた身動きをとることなく彼を抱き続けている。逃げることも抗うこともせず、ただひたすらにそれが迫ってくるのを二人は待ち続けている。

 彼は、自らの死を感じた。今まで生きてきた中で感じることのなかった感覚。しかし彼の生物としての本能がそれを警鐘している。もう、彼にできることはなにもない。

 暗闇の中から、『死』がゆっくりと近づいてくる。そして──

 彼──九條誠くじょうまことの意識は途絶えた。

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