表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

第4話「加記憶喪失少年 影畑朧」

「出席をとるぞー。甘屋ー。磯野ー」朝のSHR、生徒の名を1人ずつ読み上げていく七草先生。馴染みの光景だ。

「辛橋ー。如月ー。 ん、いや影畑ー」これも、もうお馴染みの光景だ。

(!!!)この光景を見て、秋太は何かに気付いた。

(これはもしや!!)目を輝かせて両手を握る秋太。

「なんか……嫌な予感」僕は経験的に知っていた。


「影畑くんが忍者ー!?」SHR後、僕は呆気にとられて声を上げた。

「うむ。間違いない」自身あり気に頷く秋太。

「あの気配の消し方……あれは忍者にこそ成せる技!!」秋太はどこぞの政治家の演説の様に話す。

「いや、ただ影が薄いだけじゃ…………」

「いや、秋太の言う事も一理あるぞ」後ろから突然話に入ってくる七草先生。

「私がアイツのせいで何度『七草先生がクラスの特定の生徒の出席点呼をわざと飛ばす』とPTAにイジメられたか……」七草先生は涙ながらに話した。

「先生……」

「頼んだ秋太!! 奴の能力を引き出し、それをコントロールする術を教えてやってくれ! でないと私のクビが飛ぶ!」七草先生は秋太の肩を掴みながら言った。

「はい先生! 任せて下さい!」

「能力ってなんだよ……」僕は真央くんに首筋を噛み付かれながら呟いた。



 第4話「加記憶喪失少年 影畑朧」



「と、言うわけで影畑! 今日放課後特訓すんぞー!」秋太は満面の笑みで影畑くんに話し掛けた。

「………………」困り果てた表情で秋太の顔を見ている影畑くん。

(うわ。嫌そー)僕は後ろから黙って眺めていた。

「いーじゃねーか。面白そーじゃん」

「真央くん、地味にこーゆーの好きだね……」

「おう」



「よし!! それではこれより、影畑朧(かげはたおぼろ)氏の特訓を執り行う!!」

 放課後。僕と真央くんと秋太と影畑くんは教室に残っていた。

「……私の家で何を…………」

「オメーの家じゃねえ!!」

 いつもの特等席で困った顔を見せる村崎さんにツッコミを入れる秋太。

「特訓って……何すんの?」僕は一応秋太に聞いてみた。

「………………」

 どうやら何も考えていないらしい。

「とりあえず、影畑は今まで何も意識してないのにあれだけ存在感が薄かったんだから、一回存在感の消し方を覚えさせて、それをコントロールできる様にしてやろー、って話だろ?」

「マオーその通りッ!! よし、てな訳で影畑! やれっ!」

「………………」

「何をだよ」僕は影畑くんが不憫に思えてきた。

「気合いだよ気合い! 気合いで何とかなるもんだ!」

「………………」

 影畑くんは困り果てたようだ。

「とりあえず念じてみろ」机を2つ並べてその上に寝転がりながら言う真央くん。

「………………」

 念じてる、のか。

「変化は?」

 秋太が周りに聞く。僕は首を横に振った。

「うおおおおー!! 今日は出来るまで帰さねえぞ、影畑ー!!」



 ……三時間後。村崎さんは特等席で液晶テレビを眺めている。

 未だ特訓の成果は見えなかった。影畑くんは先程から何気に頑張り始め、何気に額に汗をかいている。



 ……更に四時間後。村崎さんはパジャマ姿で濡れた髪の毛を拭いている。どこで風呂入ってんだ。

「おー、まだやってんのか」帰り支度に身を包んだ七草先生が教室に入ってきた。「どうだ? 調子は」

 真央くんは首を横に振った。

「そうか。まあ無茶はするなよ」

「秋太ー、もうやめようぜ〜。そもそも、こんな目の前で存在消すも何も無いんじゃ……」

 今更すぎる。

「ん〜……まあ、今日はこの辺で――――」


 真・眼・開・眼!!


 突然影畑くんの体が黄金色に輝きだした。

「うわっ! なんだこれ!?」

 続いてボフン! という音を立て影畑くんの足元から煙が立ち上がり姿を覆い隠した。

「ぎっ、ぎゃああああああああー!!!」

 恐すぎる。僕らの叫び声が誰もいない校内中に響き渡った。

「ちょっ、影畑おまえ――」秋太が煙を手で払いながら影畑くんの姿を探す。

 少しずつ、影畑くんが元いた場所の煙が晴れてきた。

(ど、どうなる――!?)僕ら全員(村崎さん除く)の心の声だ。


 煙が完全に晴れる。

「……………………」

 影畑くんの姿はどこにも無かった。

「きっ、消え――――!!!?」

 全員(村崎氏除く)が叫んだ。

 影畑くんの姿はどこにも無く、全員が辺りを見回す。

 と、その瞬間影畑くんは元いた場所に現れた。

「!! 影畑おまえ……」

「……………………」

 影畑くんは再び消えた。

「!!」

 その瞬間、再び現れた。そして再び消える。

 どうやら、影畑くんは自在に自らの存在を他人の意識から100%消す事が出来るようになったらしい。

(か、影畑くんすげえー!!)



「いやー、凄かったなー」秋太はすっかり興奮してしまっている。

「あんな人間がいるとは……」真央くんは驚きを隠せていない。

「まあ、凄かったけど……って、あれ?」

「どうした悲劇」

「何が凄かったんだっけ?」

「…………何だっけ」秋太と真央くんは声を揃える。

「………………。 あ、いやだから、影畑が存在を消せる様になったんじゃん! な、影畑!」秋太は後ろを振り返る。

 そこには影畑くんはいなかった。

「あ……忘れてきた」

(………………)僕は彼の凄さを改めて思い知った。



「食べる…………?」

 2人きりの教室で、村崎は影畑にカップラーメンを差し出した。

「……………………」



 1年5組 影畑 朧(かげはた おぼろ)

 存在を100%消す事のできる男(普段は90%)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ