表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/82

第五十三話 リィオンダ

 ──獣人の国、リィオンダ。


 ローザイト王国から北西に位置しているこの国は、その名の通り獣人族が治めている。

 もちろん国民にも人族等はいるが、やはり大まかには獣人族が多い。

 また、この国には王族という身分はなく、『三獣家』と呼ばれている三つの種族が特権階級になっている。

 その三つの種族とは『虎族』『狼族』『狐族』のようで、どうやら彼等が人族で言う貴族的なポジションらしい。

 ともかく、そんな彼等を含めた様々な獣人族がいるこの国へと、俺達は無事にたどり着く事に成功していたのだ。






「おー、やっぱり獣人族が多いな」

「確かに、多種多様な獣人族がいますね」


 検問を終えた俺達の視界に入ったのは、色々な耳や尻尾を生やした人々の群れだった。

 犬耳や猫耳等は当たり前で、他にもリスや狐、鼠らしき獣人もいる。

 うん、獣人族を見たのは初めてだったが、これは中々として心が踊るな。

 凄く触り心地が良さそうだし、一度誰かの耳を触ってみたい。


「まあ、まずは冒険者ギルドに行こうか」

「そして宿を取る、ですね」

「そうだな。ギルドでオススメの宿屋でも聞いておこうか」

「それがよろしいかと」


 途中で美味しそうな串焼きを屋台で買いつつ、クリスティアと会話を交えていく。

 にしても、この串焼きの味にどこか覚えがあるような?

 なんだろう。どこか懐かしさを感じなくもない。

 まあ、それはまた後で考えればいいか。


「さて、そうこうしているうちにギルドに着いたな」

「ふむ、やはり受付嬢には獣人族が多いようですね」

「そりゃ獣人の国だからなあ……どうした、ティア?」


 俺の言葉に納得したように頷いていたクリスティアは、思わずといった様子で戸惑いがちに首を傾げる。

 その事を不思議に思い問いかけるが、クリスティアは首を横に振る。


「いえ、なんでもありません。どうやらただの見間違いのようです」

「そうか? まあ、ティアがそう言うならいいんだけど」

《……のう。ところで妾はいつまで大人しくしてればいいんかの?》


 そのまま暫くクリスティアと会話をしていると、脳内で疑問が篭ったツバキの声が聞こえてきた。

 その問いかけに答えるために、俺はベリシュヌの柄に手を置き魔力を込める。


『すまんな、ツバキ。まだお前の出番が来そうにないわ』

《じゃろうな。それはわかっているのじゃが、ずっと黙っているのも退屈での》

『まあ、ツバキの気持ちもわからなくもないけど、あまり念話を多用するとバレるかもしれないし……お、受付が空いたな。話はまた後で』

《ふぅ、仕方ないの。妾はもう少し大人しくしておくのじゃ》

「よし、受付が空いたし行くぞ」


 最後にツバキがため息をついた後、彼女との念話が途切れた。

 ツバキに気を遣わせた事を申し訳なく思いつつ、俺はクリスティアに声を掛けて受付の方へと向かっていく。

 近づいてくる俺達に気が付いた猫耳受付嬢は、営業スマイルを浮かべて頭を下げる。


「冒険者ギルドへようこそ。依頼の確認ですか?」

「はい、これがギルドカードです」

「拝見いたします……はい、シュン様とティア様ですね。Eランクの方が受注できる依頼はこちらになります」


 渡したギルドカードを確認した後、猫耳受付嬢はそう告げてカウンターに複数の紙を置いた。

 それ等を手に取り目を通していくと、どうやらアッサムの依頼とそう変わらなさそうだ。

 これなら、幾つか簡単そうな討伐依頼を受ければ問題ないな。


「ティアは何か受けたい依頼はあるか?」

「そうですね……この【アグニル山での岩石巨人兵(ロックゴーレム)討伐】が気になります」

「その理由は?」

「シュン様とハイキングがしたいからです!」

「本当にブレないな、お前」

「それほどでもないですよ」


 照れくさそうにはにかんでいるクリスティアの様子に、俺はもはやため息しか出てこない。

 どうしてクリスティアはこう、自分の欲望に素直なのか。

 とりあえず特に俺も異論はないから、受ける依頼はこのロックゴーレムの討伐にしよう。


「これを受けます」

「かしこまりました。シュン様、ティア様が受注した依頼は【アグニル山での岩石巨人兵(ロックゴーレム)の討伐】ですね。討伐部位は心臓部にある核の一部となっておりますので、くれぐれもお忘れなきように」

「忠告ありがとうございます。依頼期限は五日後まですよね?」

「はい。五日後までに討伐部位を提示していただければ」

「わかりました。それと、どこかお勧めの宿屋はありませんか?」


 ついで……というより、本題の事を尋ねてみれば、猫耳受付嬢は記憶を掘り返すように虚空を見ていた。

 暫くして猫耳受付嬢は無事に思い出したのか、笑顔で一枚の紙を取り出して何かを書き込んでいく。


「宿屋ならばここがよろしいかと」

「わざわざ宿屋までの道順を書いてくれてありがとうございます」

「いえいえ、冒険者の手助けをするのが私達ギルドの役目ですから」

「白い、だと?」

「どうかいたしましたか?」

「あ、なんでもないです」


 どうやら思わず声に出していたようだ。

 それより、アッサムの時と対応が違う気がするのは、俺の気のせいなのだろうか?

 もしこれがアイリーンだったら、オススメとか言いつつぼったくり宿屋を紹介しそうだ。

 いや、流石にそれは穿った考えだな。いくら初対面時の印象があれだからって、アイリーンもオススメの宿屋を紹介する筈……うん、深く考えるのはよそう。

 ともかく、不思議そうな表情で猫耳受付嬢が渡してきた紙を受け取り、俺達はギルドを後にするのだった。











 猫耳受付嬢に勧められた宿屋へ赴き、無事に部屋──結局、今回もクリスティアと同室になった──を確保できた後。

 軽く部屋を見回してから俺達は向かい合ってベッドに座り、今後の話し合いをする事になった。


「さて、まずはこの国でする事を決めようか」

「やはり、この国の情報収集をするのがよろしいかと」

《魔物討伐がいいと思うのじゃ!》

「ツバキは血が吸いたいだけだろ……ティアの意見も正しいが、俺が言いたいのは観光とかそっち方面だ」

「つまり、この国をどう満喫するか話し合とうという事ですか?」

「端的に表せばそうなるな」


 クリスティアの疑問に頷きを返すと、彼女は顎に手を添えて思案する仕草をする。

 そんなクリスティアの様子を尻目に、俺はツバキと言葉を交えていく。


《観光のう……妾にはあまり関係ない話じゃな》

「まあ、確かに武器じゃあできる事が限られてるもんな」

《それに、主君はよく妾を置いていくしの》

「それは、なあ? ツバキって凄く目立つし」

《ぐぬぬ……結局、その結論に至るのじゃな》


 残念そうな声を上げたツバキ。

 いや、俺だってできるだけツバキを連れていきたいが、残念な事にベリシュヌの色が目立ちすぎるのだ。

 どうにかしてベリシュヌの色を誤魔化せないければ、ツバキを自由に連れ歩く事は難しいだろう。

 そんな事を考えている間に、どうやらクリスティアも何やら結論を出したらしい。


「決まりました」

「決まったってこの国での目的?」

「はい。私はこの国で、シュン様との距離を更に縮めたいと思います」

「一応聞いておこう、その理由は?」

「もちろん、シュン様と更なる愛を育むためです!」


 この人はまたドヤ顔で変な事をのたまっているよ。

 いや、クリスティアの言っている事も一理あるのは理解している。

 距離を縮めて連携を深めるとかなら問題ないのだが、クリスティアの考えとは意味合いが違うのだろう。

 相変わらずブレないその姿勢は、褒めて良いのか呆れれば良いのか。


「よし、じゃあ街の散策でもするか」

《こやつの言葉を無視したの》

「最近、シュン様のリアクションが小さくて悲しいです」

「いやいや。返事のしようがないだろ、今のは」

「そこはシュン様らしく、『今から俺と愛の結晶を創ろうぜ』と仰っていただければ」

「一度もそんな事を言った覚えなんてないからな!?」


 真顔で告げたクリスティアの言葉に、俺は反射的に叫び返す。

 何を言いだすのかと思えば、古臭いナンパ師みたいな発言をして。

 クリスティアの中での俺って、一体どういう存在なのだろうか。

 そんな事を考えていると、クリスティアは頭に拳を当て、舌を出す。


「お茶目なメイドジョークです」

「無表情でそのポーズは怖いわ!」

《う、うむ。流石に妾もないと思うのう》

「どうでしょうか、今のテヘペロは? 百点満点の内、八十点ほどのできだと思うのですが」

「うん、それはない。甘く見積もって十点かな」

《妾は三点じゃな》

「そ、そんな……!」


 俺達の採点に、ショックを受けたように固まるクリスティア。

 そのまま微動だにしないクリスティアを尻目に、俺は部屋のドアへ向かう。


「ほら、早く行くぞクリスティア」

《また布で包まれるのじゃな。早く妾も自由になりたいの》

「……かしこまりました」


 しょんぼりと肩を落としていたクリスティアは、俺の方へと近づいていく。

 まあ、クリスティアの笑いのセンスはなかったって事だな。

 そんな事を考えつつ、俺達は宿屋を出て街の散策を始めるのだった。

あけましておめでとうございます。

更新が遅れて申し訳ありません。


改めまして、今後とも本作をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ