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ポンコツ魔神 逃亡中!  作者: 鏑木ハルカ
序章 魔神降臨
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第1話 天使達との邂逅(ただしオッサン)

この作品はコメディです。

物理的な矛盾や、ご都合主義的展開に忌避感のある方は御注意ください。

「緊急速報をお送りします。本日朝8時ごろ、○○線の上り車両が脱線し、対向列車と正面衝突。そのまま近隣のビルに突っ込む事故が発生しました。この衝撃によってビルも倒壊し、犠牲者、行方不明者の数はすでに400名を超え――」




◇◆◇◆◇




「おいおい、これどうするよ?」

「うわぁ、グッチャグチャに絡まってるな。これ(ほぐ)して一人一人転生させるのは事だぞ?」


 真っ白な空間で俺は目を覚ました。

 目の前には羽根の生えたオッサン二人。天使と呼ぶには少しばかりむさくるしい。


『あれ……身体が、動かない?』


 いや、そもそも俺の身体ってどんな形だった?

 判らない。名前も、声も、思い出せない……


「面倒くせぇなぁ。置き石やるなら場所選べってのよ」

「列車の質量とビルの倒壊で428人が10メートル内に固まっちまったからな。どうしようもねぇべ?」


 オッサンはこちらを見て頭を掻いている。

 俺に気付いた様子はない。


「おい、丁度いい所に召喚してる世界があるぞ」

「マジか。しかもおあつらえ向きに複数召喚か。いっそこの世界に押し込むか?」

「でもよ、そうなるとこっちの魂魄量が不足するぞ」

「頭使えよ。複数召喚してんだぜ? 代償の生贄も多めに用意してるはずだ。ちょっと多めに貰ってこっちに入れ替えちまえ」

「お前頭いいな!」


 オッサン達は半透明なスクリーンを操作して、けたけた笑っている。


『あの……ちょっといいですか?』


「魂魄量の偏差は――850か。こりゃ結構な『勇者様』が出来上がっただろうな」

「待て待て、それが428人分だぞ。こりゃえらい事になるんじゃね?」


『あの……聞こえてます?』


「えーと、魂魄量の計算は基本が100で世界偏差の850を足して428で掛ける?」

「406600だな」

「これだけの能力量をスキルに変換するのかよ、面倒くせぇ」


 作業に集中してるオッサン達に俺の声は届いていないようだ。

 反応がないのに語りかけ続けるのは何か寂しいので、俺は作業が終わるまで待つことにした。


「お、これ見ろよ。この【△■練成】ってスキル! 単独で1万消費するぜ」

「おー、いいね。でも、なんでそれだけそんなに高いんだ? 桁が2つくらい違うじゃないか。ツーか表示バグってるな」

「神様が設定した数値だから知らんし。それに多分、錬金術系のスキルの事だろ?」

「鍛冶や付与に使うヤツか? てか、それくらいしか『練成』なんて文字使わんか」


 ものすごくアバウトな会話を聞いていると、なんだか不安な気持ちになってくるな。


「じゃあそいつをどんどん拡大して消費させるか」

「『効果範囲』と『永続化』と『発動短縮』を最大にして……え、足りない? じゃあ『接触限定』にしてから――」

「影響範囲最大で40倍、効果永続化で10倍、瞬間発動で20倍、接触で総額半分?」

「ほら、こっちの『強度強化』なら……えーと、基本5の最大1万だからで、5万で取れる」

「いいねぇ。『並列起動』とか『効果伝達』なら3000で行けるぜ、いっちゃう?」

「いっちゃえ。『効果伝達』って何よ?」

「知らん」

「わはは、この『伝達』って最大に拡張しても100mしか範囲がないでやんの」

「無駄に消費させるには丁度いいじゃん」


 おいおい、いいのかそんなんで。


「んでも感覚狂うよなぁ、万単位のスキルって」

「一番高いスキルだしな。あれだけ普通の100倍の量だった。能力拡張したら、増える増える」

「やばい能力なんじゃねーだろうな?」

「……取らせていいから載ってるんじゃない?」

「なんだよ、その沈黙は」


 ぺこぺこ半透明のコンソールを操作しながら、冷や汗垂らすオッサン達。


「まぁいい、後は基本の【言語理解】に【アイテムボックス】……【識別】も付けちまえ」

「ぶはっ、残り100しかねぇ。やりすぎた!」


 【言語理解】が100に、【識別】が100、【アイテムボックス】が100。


「どうする? 【識別】でも外しちまう?」

「いいや、100でも向こうの平均くらいだろ。なんとかやってけるって」

「本音は?」

「面倒だし」


 ガハハと笑うオッサン共がようやくこちらを向いた。


『あ、どうも』

「おお? どうやら意識がある奴がいるみたいだぞ」

「あ、いいね。じゃあそいつを核にしちまおうか」


 ピッピッと再び画面を操作している。


『いや、そうじゃなくて! ここはどこですか?』

「ここ? あの世とこの世の狭間さ。普通なら天国行きか地獄行きになるんだけどね」

「まぁ、面倒だからアンタは異世界行きって事で」

『面倒ってなんだよ! 元の世界に戻してくれよ!』

「お前の身体、10センチくらいに縮んでるぜ?」

「電車の質量で横からぺったんこ。ビルが崩れて縦にぺったんこ。ひっでー有様だけど、戻る?」


 唖然として言葉を失う俺。

 そう言えば俺は電車の先頭車両に乗っていた……気がする。

 そこから……記憶が、ない。


「それじゃ頑張ってな。今度は死ぬなよ」

「まぁ一般人並だけどな」


 その言葉と共に、足元に黒い大穴が開く。

 俺は抵抗する間もなく、その大穴に吸い込まれ――再び意識を失うのだった。


本日は5話まで投稿予定です。

続きは2時間後に。

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