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第一話 その4「幼馴染」

「あのヤロウ。イリスさんと仲良くしやがってぇ」「後で絶対尋問してやるぜ」

「おいおい。詮索は後にしろよ~。さぁ、席に着いた席に着いた」

 クラス担任、岡田の大きな声がクラス中に響き渡ってクラス内の響めきはとりあえず落ち着いた。

 その後は、何事もなかったかのように授業は進み、休み時間になる度に、イリスと悠一の周りにはクラスメイトがひしめきあていた。無論、イリスには好意的な視線が、悠一には怒りのこもった視線が送られていたのは言うまでもないだろう。

 そんなことが毎休み時間起こり、やがて昼休みを迎えた。

「ハード過ぎる……」

 クラスメイトをなんとか巻いてようやく静かな屋上にたどり着けた悠一は、そうぼやきながら寝転ばって青い空を眺めていた。少し暑いが、悠一にとってはクラスメイトに囲まれているのに比べれば数倍マシだった。

「そこで何してるの?」

 屋上で寝転がっている悠一を覗き込むように黒髪長髪の少女が近寄ってきた。

「なんだ。美雨みうか。お前も尋問か?」

「信用ないわね。私はユウのことは信用している。何もなかったんでしょ? あのイリスって子と」

 ぱっつんとした前髪を右手でかきあげると、美雨は悠一の隣に座り込んだ。

 秋山美雨。悠一とは小さい頃から付き合いで、いわゆる腐れ縁というやつである。長い黒髪に整った顔、容姿端麗、文武両道。大和撫子という表現がピッタリと当てはまる。

「ああ、何もないよ。まぁ、同居しているっていうのはウソじゃない」

「同居ねぇ。ユウ根性なしだからねぇ」

「悪かったな。根性なしで」

「そうね。そのおかげ私は苦労してるわ」

「何か言ったか?」

 どうやら、小さくそうつぶやいた美雨の言葉は余りにも小さく、隣にいた悠一にも聞こえないようだった。

「何でもないわ。むしろユウが根性なしのおかげ助かってる」

 妙にニコニコしながら美雨に悠一は何か引っかかるような顔を浮かべたが、すぐにその顔色が変わることになる。

「はぁい。こんなところにいたのね。ユーイチ」

「げ……どこから嗅ぎつけやがった」

「あら。随分嫌そうな顔するじゃない」

 怪訝そうな顔色を浮かべうる悠一に対して、まるで面白いおもちゃを見つけた子どものように粋々とした顔を浮かべるイリス。その双方のなんともおかしいにらみ合いの中、一人の少女が立ち上がった。

「イリスさん。だよね」

「ん?」

 風になびく黒髪を右手で抑えて立ち上がったその姿は悠一に取って始めて見た美雨の姿だった。長年幼馴染をやってきた悠一だが、あれほど目が座った美雨見たことがなかった。

「イリス・ロードナイト。それが私の名前。貴方は?」

「秋山。秋山美雨」

「秋山さんね。よろしく」

「そうですね。イリスさんとは長い付き合いになりそうね」

 殺伐としたまるで戦国時代の武士の果し合いのような殺気に満ち溢れている2人の世界。物理的に仕切られているわけではないはずないのに、2人の空間に割いることができない。見えない壁みたいなものがあって、それが2人を囲んでいるかのようだ。

「あなた面白い人間ね」

「放課後。旧校舎側の部活棟でまってます」

「決闘……かしら?」

「来て下されば分かります」

 それだけ言い残すと美雨はゆっくりと歩きはじめ、硬直した空間の時間を動かし始めた。

「あ、そうだ」

屋上から降りる階段の前で立ち止まった美雨は悠一の方へと振り向いた。

「ユウも来てね。約束だから」

「約束……」

「そう。もし破ったならどうなるか、ちゃんと考えておいてよね」

冷徹な目。いつもの和やかな美雨とは違った一面。たまに悠一に見せるその真剣な眼差しは、どんなに渋る悠一を一発で動かしてきた冷たい瞳がそこにはあった。

 再び歩き出した美雨は階段の下へと静かに消えてき、後に残ったのは初夏の暑い日差しに、なんとも言い難い冷たい空気の中に佇むイリスと悠一の姿だった。

「放課後か……。楽しみにしてるわ。秋山さん」

 ただ1人、この状況かでニヤリと微笑むイリスを見て、悠一は背筋がゾクリとした。

 この女。ただものではないと出会った時から感じていた悠一だったが、流石に今の状況で彼女に対して狂気の沙汰を感じ取った悠一は生唾をゴクリと喉の奥へと流し込んだのだった。


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