VS.ズィトウィッキー兄弟
ようやく、まともな戦闘です。
感想・アドバイスなど、あったらよろしくお願いします
重い足取りと憂鬱な気分で、闘技場へ来た。
そこには既にシリウスと取り巻きのマッチョ、デュアルハゲの計4人がいた。
「よぉ。ちゃんと逃げずに来たみたいだな」
腕を組み、偉そうに言うシリウス。
けっ。
「お前からなんて逃げるかよ。雑~魚」
「てめぇ……。そんな態度でいられるのも今のうちだぞ」
「そりゃ楽しみだな。おら、さっさと来いよ」
「慌てんなよ。まずはこいつらが相手だ」
「はぁ? 」
俺は思わず呆れる。
こいつらってのは取り巻きの3人の事だろう。
何故そいつらと戦わなきゃならんのだ。
「何でだよ」
「お前が俺と戦うに相応しいかのテストだよ」
こいつ、本当に馬鹿だな。
「お前さぁ……1回負けといて何言ってんの? 頭おかしいんじゃね? 」
「――っ! だから、あれは負けじゃねえって言ってんだろうがっ! この屑が! やるのか、やらねえのかどっちだ! 」
「屑はお前だろ……。おまけに頭もおかしい」
「あ゛ぁっ!? 」
俺は溜め息を吐いて、頭をかく。
面倒くせえなぁ……。
「やりゃ良いんだろ? やってやんよ」
馬鹿らしくなって来たから、さっさと終わらそう。
俺は舞台に上がる。
シリウスはデュアルハゲに何か言ってる。
あいつらが最初の相手か。
「我らはズィトウィッキー兄弟。我は兄のバレル」
「我は弟のダレル」
デュアルハゲがいきなり名乗る。
あっそ、としか言えない。
名乗られても、全く見分けがつかない。
どっちか、髪植えろよ。
「先ずは、我らズィトウィッキー兄弟が相手をしよう。どちらと先にやる? 」
「やる? 」
「台詞の量は均等にした方が良いんじゃないか」
「そんな事はどうでも良いだろう! 質問に答えろ! 」
「答えろ! 」
はぁ……。
本当に面倒くさい。
俺は右手の人差し指と中指を立て、デュアルハゲに見せる。
「2人で来い」
「……舐められたものだな」
「……だな」
「後悔しても知らんぞ」
「知らんぞ」
「お前らこそ、俺に喧嘩売った事後悔すんなよ」
デュアルハゲが舞台に上がる。
シリウスはニヤニヤとこっちを見てる。
待ってろ、銀河系最強馬鹿め。
すぐにぶちのめしてやる。
「こちらから行くぞ! 」
「行くぞ! 」
デュアルハゲが同時に突っ込んでくる。
「ていっ! 」
「はぁっ! 」
何て事は無い、ただのパンチ。
両方のパンチを、それぞれ片手で受け止める。
「ぬぅっ! 」
「むっ! 」
奴等はすぐさま飛び退く。
「なるほど。口だけでは無いようだな」
「だな」
「ならば、本気で行くとしよう」
「しよう」
そう言うと、デュアルハゲは何か変な構えを取る。
そして、兄ハゲが右の拳を思いっきり突き出す。
すると、そこから巨大な水の拳が発生し、俺に向かって飛んできた。
「属性武術・水。水拳」
「んだ、こりゃ」
俺は飛んでくる水の拳に蹴りを喰らわせる。
それにより、水の拳は飛散。
濡れない様に、その場から飛び退いた。
つっても、右足の半分はやっぱ濡れた。
糞ぅ。
「ぬぬっ!? あれをただの蹴りで! 」
「落ち着け、バレル。アイツは風属性だ。その力を使ったんだろうよ。ただの蹴りでお前の水拳は破れねえ」
「シリウス。そうか、風か」
馬~鹿。
ただの蹴りで破ってやったわ。
「風ならば、こちらにもいる! ダレル! 」
「うむ! 」
今度は弟ハゲが拳を思いっきり突き出す。
すると、巨大な風の拳が発生し、さっきと同じように飛んできた。
「属性武術・風。風拳」
「またか……」
完全にさっきのリプレイなので、俺も同じようにまた蹴りをかます。
それにより……言わなくても分かるよな?
「むぅっ! 」
「ぬぬっ! ダレルの風より奴の風の方が強いというのかっ! 」
風じゃねーよ。
ただの蹴りだよ。
「だが、まだ終わらんぞ! 水掌波! 」
兄ハゲが水の掌を打ち出す。
それは途中で形を崩し、小さな津波の様に俺に押し寄せる。
「おいおい」
濡れるのが嫌なので、跳躍。
しかし、これはまずかった。
「かかったな! ダレル! 」
「風斬刃」
弟ハゲが右手を振る。
すると、無数の風の刃が飛んでくる。
俺は無理矢理、身体をねじって躱す。
「よっと」
津波の消えた舞台に着地。
靴は濡れるが、まぁ良いか。
「今のを躱すとは……。先程の風拳の時にも思ったが、貴様まさか風の攻撃が見えているのか? 」
「あ? 」
「風の最大の利点は、不可視である事だ。無論、ただの風では無く魔力による風の為、魔力感知能力が高ければ躱す事も可能……。しかし、先程のお前の躱し方は、風の刃そのものが見えているようにしか思えん」
「普通に見えてるけど、それが何だよ。お前ら見えてねえのか? 」
俺の言葉にデュアルハゲはおろか、向こうにいるシリウスまでポカーンとしてる。
アホ面が更にアホになってるぞ。
「常識はずれも良いところだ」
兄ハゲはそう言って、また変な構えを取る。
失礼なハゲだ。
「うるせえよ、ハゲ」
「ハ、ハゲだとぉ!? これはスキンヘッドだ! 」
「だ! 」
何の気なしに言った言葉だが、まずかったらしい。
顔を真っ赤にして反論してくる。
「ハゲは皆そう言う」
「言わんわ! 許すまじ! 究極奥義をお見舞いしてくれるっ! 」
兄ハゲは激昂し、変な構えを更に変にする。
俺の貧困なボキャブラリーではとても表現する事が出来ない。
そのくらい変な構えだった。
「九頭十八牙水蛇咬殺拳! 」
兄ハゲが長ったらしい技名を叫ぶと、9つの頭を持ったデカイ水蛇が出現した。
「デカっ! 」
「デカイだけでは無いぞ! 」
そう言うと、兄ハゲは片っ方の靴を脱ぎ、放り投げる。
それに、水蛇の頭の1つが食らいつく。
2本の牙を噴射させ、綺麗に靴を3等分にした。
「高圧水流か……」
「左様! 鉄ですら切断するぞ! 」
どや顔の兄ハゲ。
「お前、それを俺に教える為に自分の靴を切ったのか? 」
「……安物だ」
「そういう問題じゃ無いと思うんだが」
「やかましい! 鉄ですら切断する水の牙! それが18本! 防げるものなら防いでみろ! 」
兄ハゲが叫ぶと、呼応する様に水蛇が動く。
まずは、3つ向かってくる。
高圧水流の牙を噴射させ、噛みつこうとやって来る。
「喰らうかよ」
俺はそれを華麗に躱す。
華麗にな。
「ふむ。やはり良い動きをする」
上からハゲ。
まだ全然、全力じゃねえっつーんだよ。
「ならば、9頭全部ならどうだ! 」
水蛇の頭が全てけしかけられる。
さすがに、これを全部躱すのは……出来ないって事は無いが、面倒臭すぎる。
“アレ”使った方が早いな。
「行くぜ……アリアドネ」
俺は小さく呟く。
それに応える様に、右手の甲に刻まれた蜘蛛の刻印が輝く。
俺は右手を振る。
その瞬間……
「何ぃぃぃぃぃ!? 」
水蛇は、その全身を細かく切り刻まれ飛散した。
「な、何をっ……かっ!? 」
驚愕に顔を染める兄ハゲ。
言葉を言い終わる前に、素早く詰め寄り腹パン。
1撃で意識を刈り取ってやったぜ。
「なっ! き、きさぎゃっ!? 」
次の瞬間には弟ハゲにパンチ。
こいつは腹じゃなくて顔。
特に理由は無い。
何となく。
「よっと」
気を失ったハゲ兄弟を舞台から投げ飛ばす。
そして、ゆっくりとシリウスの方を向く。
奴は、驚きと怒りが混じった様な表情を浮かべてる。
俺は少しだけ口角を上げ、視線をマッチョに移し、
「次はてめぇだろ? 来いよ、おら」
右の人差し指をクイクイッと動かした。