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魔術学校の糸使い  作者: タカノ
入学編
6/43

宣戦布告

 

 時は流れ、現在は昼休み。

 俺はベイ、ウィルヘルミナ、セリーンと食堂で昼食をとっている。

 セリーンってのは、シリウスのクソ馬鹿に怪我を負わせられた可哀想な女の子だ。

 フルネームはセリーン・ルナホーク。

 昨日、自己紹介聞いてた筈だけど名前忘れてた。

 あるある。


「今日は本当にありがとうございましたっ」


 もう何度目かも分からない感謝の言葉を告げるセリーン。

 セリーンは綺麗な黒髪をパッつんにしてる。

 だからなのかは分からないが、凄く幼く見えるんだ。

 そんな子にずっとお礼を言われてると、何かこう変な気分になってくる。


「もう良いって。それより怪我は大丈夫か? 」

「あっ、はいっ。元々、大した傷では無いので」

「そうか」


 そりゃ良かった。

 俺はそう思いながら、皿に乗ったじゃがいもをつっつく。

 固い!


「しかし、君の強さには驚いたな。魔術を使ってくる相手を素手で倒してしまうとは」

「本当だよ! お前、何者だ!? 」


 ウィルヘルミナとベイが会話に入ってくる。

 ちょっとベイ君、何か飛んできたんですけど……。


「別に大した事ねえよ。あんなボンクラ貴族、お前らでも倒せるだろ」

「いや、さすがに素手は無理だわ」

「あっ……! 」


 俺らが和気藹々と喋ってると、セリーンが天敵と遭遇した小動物みたいな怯えた感じで、何かを見てる。


「ん? 」


 セリーンの視線の先を見るため、座ったまま振り返る。


「げ……」


 セリーンの視線の先には、シリウスがいた。

 不機嫌そうな態度。

 後ろには、マッチョとハゲ2人の計3人を従えてる。

 取り巻きってやつか。

 ハゲ2人は顔がそっくりだから、双子だな。

 ずっと見てたら、シリウスがこっちに気づいた。

 顔を歪めて、舌打ちしやがった。


「反省してねえな、あれ」


 ベイが呆れた様に言う。

 俺は頷いといた。


「気を付けた方が良いぞ、ギルクリスト。奴がこのまま、おとなしくしているとは思えない」

「あぁ、分かってるよ。てか、ギルクリストってやめてくんない?

 ニコラスって呼んでくれ」


 俺がそう言うと、ウィルヘルミナは視線を泳がせる。

 何だ?


「わ、分かった。では、ニ、ニコラスと呼ばせてもらおう」

「俺もベイで良いぜ! 」

「分かった」

「あれ!? 何か俺に対してはあっさりじゃねっ!? 」


 騒ぐベイ。

 飯食う時くらいは静かにしろよ。


「あ、あのっ」

「あ? 何だよセリーン」

「わ、私もニコラス君って呼んで良いですか? 」

「おぉ、もちろん。てか、敬語じゃなくて良いぞ。同い年なのに」

「あっ、敬語は癖なので……。猫さんとかとも敬語で話してしまうんです……」

「へ、へぇ……」


 猫さんて……。

 しかも猫と話してんのか?

 いや、ガキの頃蜘蛛と話してた俺が言えた事じゃないか。


「……アリアドネ」


 右手の刻印を見つめてたら、無意識に彼女の名前を口に出してしまった。


「ん? 何か言ったか? 」


 ベイが口に飯を突っ込んだまま、訊ねてくる。


「何でもねぇ……」


 俺は溜め息を吐いて、席から立つ。


「先行ってるぞ」


 3人を置いて、先に食堂から出る。

 出る間際に、フェルガス先生が食堂のおばちゃんと揉めてるのを見た。

 何やってんだか……。





「ふぅ。良い天気だな……」


 俺は今、第4校舎と第3校舎の間にある中庭のベンチに座って、ボケッと空を見上げてる。

 考えるのは、さっきの事。

 シリウスと会っても、さほど感情は高ぶらなかった。

 やっぱ7年も経てば怒りも鎮まるもんだろうか。

 自分の事なのに、よく分からない。

 確かなのは、あいつのやった事を許す気には全くならないって事くらいだ。

 そう思いながら、右手を太陽に翳す。


「おい」


 耳に不快な声が響く。

 何で耳って目みたいに閉じれないんだろうか。

 もしかしたら、どっかにそんな魔術が……


「おい! 聞こえてんのか、てめぇ! 」

「あ? 聞こえてねえよ」

「聞こえてんじゃねえか! 殺すぞ」


 はー、やだやだ。

 何なのこいつ。

 現れたのは言うまでも無くシリウス。

 マッチョとハゲ2匹を従えてる。

 何すか?

 集団暴行っすか?


「何の用だよ。さっきの仕返しにでも来たのか? 」

「仕返し? はっ! お前まさか、あれで俺に勝ったと思ってるのか? 」

「思ってるも何も勝ったけど」

「ふざけるなっ! 」


 いきなり怒鳴り、キレるシリウス。

 癇癪野郎め。


固有魔術(オリジナルズ)は使用禁止。魔術教典(グリモワール)は50まで。一撃いれただけで終了。あんなのおままごとだろうが! 」

「その、おままごとで負けた奴が何を偉そうに」

「ぐっ! 黙れ! とにかく、あんなものは戦いとは呼べない。よってお前は俺に勝ったとは言えない! 」


 こいつ頭おかしいですわ。


「つまり、本気で戦おうって事かよ? 」

「あぁ、そうだ。全力を出しての本当の戦いをする。放課後、闘技場に来い。逃げるなよ、屑」



 屑はお前だろーが。

 そう言おうとしたが、シリウスの野郎はさっさと帰っちまったから言えなかった。

 それにしても、


「面倒な事になったな……」


 俺は嘆息して立ち上がり、重い足取りで教室へ向かった。






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