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魔術学校の糸使い  作者: タカノ
合宿編
43/43

貴方とはまた

 

「多分じゃねえだろ、多分じゃ」


 俺は溜め息を吐きながら、地面に打ち伏せるリゼに近付く。

 その瞬間、背後から轟音が響く。

 振り返ると、遥か後方の林から砂塵が巻き上がり、地面が削れる様な音が響き、木々が次々に切り倒されていっているのが見えた。


「環境破壊もいいとこだな」

「ですねぇ」


 俺の言葉に相槌を打ちながら、元の姿に戻る。

 髪が縮み、翼も引っ込み、空も明るさを取り戻す。

 リリスはその瞬間にサッと浴衣を着直したが、ばっちり胸が見えた。


「見ました? 」

「いや見てない」


 めっちゃ早口で答える俺。

 リリスはふーんって感じの顔をしてる。

 何だよ?

 本当はガッツリ見てやったぞ。

 貧乳め。


「何か不愉快な事思ってません? 」

「いや別に」


 またまた早口で答える俺。

 こいつ読心能力でも持ってんのか?


「とりあえずさ、そいつ連れて行こうぜ」

「連れてくって何処にですかぁ? 」

「そりゃあ、騎士団とか…… 。スティーヴンスの奴はくたばっちまってるかもしれねえけど、平団員とかはまだ生きてる奴いるだろ」

「私も生きていますよ」

「うおっ!? 」


 背後から突然聞こえてきた声にビクッとなる。

 ばっと振り返ると、スティーヴンスがいた。


「何だよ。お前が勝ったのかよ」

「不満そうですね」

「当たり前だろ。3000万がパーだぜ」

「……そちらも勝ったのですね」

「まぁな。俺にかかりゃこんなもんだ」

「やったの殆ど私じゃないですかぁ」

「はぁ? 俺がいなきゃ槍で刺されて死んでたろ」

「ニコ君だって私がいなきゃ、倒せなかったと思いますけどぉ」

「そりゃスティーヴンスのせい……ってそうだ! 早く能力解除しろや! 」

「忙しい人ですね……」


 スティーヴンスは溜め息を吐き、慈悲剣(カーテナ)を抜く。

 そして、それで俺の腹を貫く。


「これで能力は解除され……っ!? 」


 剣を戻そうとするスティーヴンスに、青糸で攻撃。

 奴はそれを刀身で防ぐ。


「どういうつもりですか? 」

「いや。ちゃんと解除されたのかと思って」


 嘘ぴょーん。

 本当は一発かましてやろうと思いましたー。

 まぁ良いや。

 騎士団の隊長格殴っても、あんま良い事無いだろ。


「そんで、懸賞金の方はどうなんの? 1億3000万貰えるとおもうんだけど? 」

「……金品保管所(ゴールドスミスバンク)の金庫番号を教えて頂ければ、そちらに振り込むよう手配しておきます」

「あぁ、そうか。分かった」


 俺はスティーヴンスに自分の金庫の番号を教える。

 金品保管所(ゴールドスミスバンク)ってのは、金を預ける場所の事だ。

 魔術で作られた特殊な金庫があって、それに金を入れておく訳だな。

 金庫には番号が振り分けられてて、

 空いてる金庫を買う事で、そこを自分の金庫として使える。

 買うって言っても、正確には使用料を払って、払ってるその間だけ使えるだけだ。

 管理や泥棒対策は完璧だから、自分で持っておくより遥かに良い。

 貴族なんかだと自前でその特殊な金庫を持ってるが、あれはクソみたいに高いからな。


「んじゃあ、俺らは帰るぜ」

「待ってください」


 帰ろうとする俺に、スティーヴンスが待ったをかける。


「何だよ? 」

「最後に貴方の名前をお教えください」

「名乗ったろ? 」

「フルネームでは無かったかと」

「……ニコラス……ニコラス・ギルクリストだよ」

「ニコラス・ギルクリスト……。覚えておきます」

「いや、良いよ。忘れろ」

「いえ。貴方とはまた、顔を合わせる事になる気がするので」

「……そうかよ。まぁ、その時は仲良くしようぜ。じゃあな。行くぞ、リリス」


 俺は手をヒラヒラと振り、スティーヴンスに背を向け歩く。











「このまま戻って大丈夫ですかねぇ。結構時間経ってると思いますけどぉ」

「フェルガス先生だし、適当な事言ってりゃ大丈夫だろ」

「それもそうですねぇ」


 滅茶苦茶失礼な事を言う俺ら。

 フェルガス先生ごめんなさい。

 でも貴方の普段の勤務態度にも問題があると思います。


「合宿も後二日ですねぇ」


 俺が心の中で誰にでもない言い訳をしていると、リリスが相変わらずの呑気な感じで言う。


「二日半だろ。まだ昼くらいだぞ」

「細かいですねぇ」

「セリーンの特訓を終らせねえと。クラスマッチあるしな」

「ルナホークさん出るんですか? 」

「いや、知らねえけど……。そもそもクラスマッチがどんなものかも知らねえ」

「私は出来れば出たく無いですねぇ」

「俺はまぁ……どっちでも良いかな」


 そんな他愛も無い話をしながら、俺達は再び平穏な合宿生活に戻った。





これで合宿編は終わりです。


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