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魔術学校の糸使い  作者: タカノ
合宿編
42/43

vs リゼ Ⅲ 夜の女王

 

 リリスの拳を顔面に受けて豪快にふっ飛ぶリゼ。

 しかし、すぐに立ち上がる。

 と言っても、かなりよろよろだが。


「ハァ……ハァ……ハァ……」

「タフだな」

「ですねぇ」


 リゼはゆったりとした動きで槍を構える。


「もう無駄だ」

「黙り……なさい」


 俺に言葉を返し、リゼは深く息を吸う。

 そして小さく呟いた。


解宝(リベラ・ヴィシチェ)


 リゼが呟くと同時に、槍が強烈な輝きを発する。


「ちっ! 何だよ!? 」

「眩しいですぅ! 」


 光がおさまり、目を細めてリゼを見る。

 しかし、そこにある物を見て目をかっと開いた。


「何だぁ? 」


 そこにいたのは紅い蠍。

 禍々しい姿をした、人間より遥かに巨大な蠍だ。


色狂邪淫紅蠍(ルクスリア・スコルピウス)


 リゼが言うと、蠍が鋏を突き出してきた。


「ちっ! 」


 俺は糸を引き、リリスを自分の傍まで引き寄せる。


「あれ、殴り壊せるか? 」

「今の状態じゃ無理ですねぇ」

「お前マジ使えね……今の状態って何だよ? 」


 俺の問いに答えず、イタズラっぽい笑みを浮かべるリリス。


解宝(リベラ・ヴィシチェ)というのは魔宝(オーパーツ)に込められた魔力を解放し本来の姿に戻す事を言いまぁす」

「いきなり何だよ? 」

「いえ。私も本来の姿に戻ろうかなぁって」

「意味が分からねえ」

「私ぃ、魔術師じゃあ無いんですよぉ」

「それは聞いた。魔術師じゃないなら何なんだよ? 普通の人間ってか? 」

「それは言えませんけどぉ。本当の名前は教えてあげまぁす」

「は? 本当の名前って……っておい! 」


 リリスは糸から身体を離し跳躍。

 すると、リリスの身体が変化し始めた。

 浴衣がはだけ、背中に黒い翼が生える。

 ピンク色の髪が腰のあたりまで伸び、手と足の爪まで伸びた。

 さらにそれと同時に、辺りが暗くなり始めた。


「何だ、これ……」


 俺は呆然と呟く。

 ハッとしてリゼを見るが、奴も空をみている。


「これが私の本当の姿。そして本当の名は夜と悪霊の女王(リ・シキル・リル・ラ・ケ)


 言葉を放った次の瞬間には、リリスは蠍の真正面に猛スピードで移動。

 蠍が防御姿勢をとる前に殴り飛ばす。


「この雌犬っ! 刺し殺しなさい! 」


 リゼが叫ぶと、蠍が尾を構える。

 それにより、リリスが尾に向かって駆け出す。

 どうやら、誘惑の力も引き継がれてるみたいだ。

 しかもパワーアップしてるぜ。


「ニコ君~。糸で助けて下さぁい! 」

「自分でどうにか出来ねえなら、糸から離れるんじゃねえよ! 」


 俺は緑糸をリリスの近くまで伸ばす。

 リリスがそれに身体を着けると同時に、引き寄せる。


「その姿なら遠距離攻撃は出来るのか? 」

「出来ますよぉ」


 リリスはそう言うと、右腕を振り上げる。


王緋の爪(クイーン・スカーレット・ネイルズ)



 リリスが呟き右腕を振る。

 すると、緋色の閃光が五本飛んでいく。

 それはこちらに向かってくる蠍に命中。

 傷つけ、押し返す。

 しかし、すぐに直進してくる。


「使用者を攻撃した方が良いですねぇ」


 リリスの周囲に黒い煙が渦巻く。

 それが、フクロウへと変化した。


鳴き叫ぶ梟(スクリーチ・オウル)


 フクロウが耳をつんざく様な絶叫をあげる。


収束(コンバージ)

「アアアアアァァァァァァァァッ! 」


 リリスの言葉と同時に、俺の周囲から鳴き声が消え、リゼが耳を抑えて膝をつき発狂した様に叫ぶ。

 どうやらフクロウの鳴き声をリゼの耳元に集めたらしい。

 リゼが膝をついたのと同じタイミングで、蠍の動きも止まる。


「独立型の魔宝(オーパーツ)は使用者の意思と魔力供給で動くんですよぉ。だから使用者をそれどころじゃ無くすれば良いんでぇす」

「へぇ。何か急に頼もしくなったな」

「えへへぇ。もっと褒めてくれても良いんですよぉ」

「うるせえ。さっさととどめ刺してこい」


 リリスをリゼの傍まで移動させる。

 しかし、リゼはまだヤル気みたいだ。


「調子に……乗るんじゃねえぞクソガキどもぉぉぉぉぉぉっ! 」

「わわっ!? 」

「ちっ! 」


 リゼが叫ぶと、爆発の様に炎が巻き上がる。

 糸を動かし、回避させ、再び近づける。


「死ねクソ雌犬ぅ! 」


 喚きながら四方八方に熱線を放つリゼ。

 それを、糸を複雑に動かし回避させる。


「地が出てんぞ、オカマ」

「黙れぇ! 犯してバラして食べてクソにしてやるよクソガキィ! 」

「やってみろや」


 リリスをリゼの背後に。


「隙だらけですよぅ」

「かっ……はっ! 」


 リゼの背中を爪で切り裂く。

 鮮血が飛び散り、リゼはよろける。


「雌犬ぅぅぅぅぅ! 」


 炎を撒き散らすリゼ。

 しかし、狙いは滅茶苦茶で当たらない。


「ハァ……ハァ……。スコルピウス! こいつらを早く刺し殺せ! 」


 リゼが叫ぶと、蠍が俺の方へやって来る。


「おいおい。俺かよ」

「お前さえ死ねば、あんな雌犬、槍だけで殺せるんだよぉ! 」

「だとよ。舐められてるぜ、リリス」

「プンプンでぇす」


 リリスが言うと、フクロウが蠍の真上にやって来る。


鳴き叫ぶ梟(スクリーチ・オウル)音殺(メシュガー)


 再びフクロウが鳴く。

 先程の甲高い音では無く、心臓まで揺らすような重低音。

 その音は真下にいる蠍を押し潰す。


「なっ!? 」


 メキメキと音を立てて潰れていく蠍を見て、リゼは口を大きく開き間の抜けた表情を浮かべる。


「そんな……馬鹿な……」

「もう終わりか……? じゃあおとなしく捕まりやが……」

「くっ! 」


 俺が言い終わる前に、リゼは背を向け駆け出す。

 逃げる気だ。


「おいおい。今さらそれは無えだろ」

「こんな……こんな所で捕まってたまるものですか! 」


 元の口調に戻ったリゼが走りながら叫ぶ。


「もっと沢山の可愛い男の子をいたぶって犯して殺してやるのよっ! 」

「屑が……」

「アハハッ! 次は何処に行こうかしら! アハハッ! 」

「次はねえよ」


 半円を描くように腕を回す。

 それにより、俺の向かいにいたリリスも半円を描くように移動し、逃げるリゼの前に回り込む。


「―っう! 」

「お前みたいな奴の行ける場所は……」


 中指を立て、リリスをリゼの正面斜め上に。


「く、来るなぁ! 」

「牢屋か地獄しかねえだろうが! 」


 中指を引くと同時に、リリスがリゼの眼前に。

 そして、拳を顔面に叩きつけ、そのまま地面に叩き伏せる。

 凄まじい轟音が響き、地面には大きくヒビが入る。

 打ち伏せたリゼはピクリとも動かない。


「殺してねえよな? 」

「多分♪ 」


 俺の問いに、最高にご機嫌な様子でリリスは答えた。




やっと10万字を越えました。


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