vs リゼ Ⅱ 人形劇
「そらっ! 」
「ふん……」
リリスを操り、攻撃を繰り出す。
俺はあくまでリリスを攻撃が当たる場所まで移動させてるだけで、攻撃自体はリリスの意思で行ってるから、慈悲剣の効力も及ばない。
さらに……
「貫かれなさい」
「わわ……! 足が勝手に……」
「させるかよ! 」
リリスの動きを俺が制御する事で、あの槍の効力からも逃れられる。
「考えたわね……」
「糸使いの本領発揮ってな! 」
俺の手の動きに合わせて、リリスが乱舞する。
まさに操り人形だ。
「くっ! 」
リリスから繰り出される拳や蹴りが徐々にクリーンヒットし始めた。
リゼは決して身体能力が低い訳じゃ無いが、それ以上にリリスの身体能力が高い。
俺はリリスを丁度良い場所に動かしてるだけで、腕や足は操作していない。
最終的にそれらを動かして、攻撃を繰り出すのはリリスなんだが、そのキレが半端ない。
パンチにしろキックにしろ、繰り出した瞬間に空気を裂くような鋭い音がする。
威力も中々のもので、流石は暗部組織の人間って感じだな。
「面倒臭いわね……」
「じゃあおとなしく捕まったらどうですかぁ? 」
「黙りなさい、雌犬! 」
リゼが炎の渦を放つ。
俺は糸を引き、リリスを回避させる。
「遅いですよぉ。もう少しで丸焼きでぇす」
「悪かったな。これやんの久しぶりなんだよ」
再びリリスをリゼに近づける、しかし……
「死になさい」
リゼから槍が突き出された。
「ちっ」
「危なぁい」
「おい、リリス。何かねえのかよ? 」
「何かって何ですかぁ? 」
「炎出したりとか出来ねえのかよ」
「出来ませんねぇ」
こいつ、マジかよ?
「固有魔術は? 」
「持って無いでぇす。と言うか私、魔術師じゃないですしぃ」
「はぁ!? 」
サラッととんでもない事を言うリリス。
魔術師じゃないって……。
「何をダラダラと喋ってるのかしら? 」
「ちっ! 」
リゼがリリスに接近し、槍を突き出す。
俺は糸を動かして、回避させる。
「だんだん思い出してきたぜ……」
指一本を動かして、槍を突き出した事でがら空きになったリゼの懐に一瞬でリリスを潜り込ませる。
「なっ!? 」
「も~らいっ! 」
「がっ! 」
すかさず、リリスがアッパーをかます。
「びっくりしましたよ~。急に動きが早くなったんですけどぉ」
「勘が戻ってきたんだよ」
昔、人形劇を見た事がある。
内容は一人の男が色んなものをひたすら殴り倒し、最後は悪魔を殴り倒して終わる物騒な劇だったな。
それを良く真似してた。
藁で人形を作り、糸で操ってた。
実際に誰かを殴ったりはしてないが。
「やってくれるわね……」
口元の血を拭いながら、リゼが恨めしげに呟く。
「まだ、こっからだぜ」
俺は再びリリスをリゼの傍まで一瞬で移動させる。
「―っ!? 」
「あはっ」
リリスが笑いながら、拳を突き出す。
顔面に命中。
リゼは殴られながらも、炎で反撃してくるが、俺は小指一本でリリスをリゼの背後まで移動させる。
「ほっ! 」
「かっ……! 」
リリスの拳は脇腹に。
その後も俺はリゼの回りをビュンビュンと移動させ、リリスは拳を繰り出す。
「がっ! くっ! はぁっ! 」
顔、腹、背中を次々に殴られ、リゼはボロボロになって行く。
「ハァ……ハァ……。こ……の……」
「どうした? まだ終わらないぜ」
中指を動かし、リリスをリゼの真正面に。
「演目は搏撃人形劇。舞台を降りて良いのは、地べたに打ち伏せた時だけだ」
リリスの鋭い拳が、リゼの顔面に叩き込まれた。




