vs リゼ Ⅰ 色欲の魔槍
「おっと! 」
鋭く振るわれる手刀を躱し、距離を取る。
「とんだイカれ野郎だな。流石にアソコを切り取られるのは御免だぜ」
「大事にするわよ」
「そういう問題じゃねえ」
俺は青糸で岩をいくつか持ち上げる。
さっきのスティーヴンスの攻撃で砕けた地面の一部だ。
それをリゼの頭上に持って行き、糸を離す。
当然、重力に従い岩は落下する。
しかし、
「あら? 」
岩は不自然な変化を起こし、リゼを避けるようにして落下した。
「何をしたの? 」
リゼが問いかけてくるが無視。
今のでも駄目となると、いよいよ手詰まりだな。
「聞いてるの? 」
「聞いてねえよ」
「聞いてるじゃない」
リゼは言うと、炎弾を放ってくる。
俺はそれを片手を薙ぐようにして振り、かき消す。
するとリゼが吹き出した。
「何だよ」
「いえ、素手で炎弾をかき消す様な人間がいるとは思わなくてね。どんな身体してるのかしら」
「さぁな」
「ますます興味が出てきた……わっ! 」
「ちっ……」
リゼは一瞬で距離を詰め、手刀を突き出してくる。
俺は手首を掴み、投げ飛ばそうとするが、それすら出来ない。
「面倒くせぇ」
手首を離し、距離を取ろうとするが、リゼがすぐに接近してくる。
「逃がさないわよ! 」
手刀、炎弾、熱線。
リゼから繰り出される、ありとあらゆる攻撃を避けまくる。
「ハァ……ハァ……。凄い身のこなしね……。当たる気がしないわ」
「奇遇だな。俺もしないぜ」
軽口を叩いてはみせるが、状況はあまり良くない。
このままずっと奴の攻撃を躱し続けるのは容易い。
それで奴の体力、魔力切れを狙うのも良いだろう。
ただ問題は、今はこの場にいないスティーヴンスとジェロームだ。
スティーヴンスが来た場合は横取りされちまうかも知れない。
ジェロームが来た場合は2対1だ。
この状況でそれはいくら俺でもきつい。
つまり、どっちが来ても厄介だ。
となると、今の内にリリスを使って仕留めるか?
思考を巡らせる俺に、リゼが攻撃を再開してきた。
「だから、当たらねえって」
「本当にそうみたいね」
リゼはそう言うと攻撃を止め、静止する。
そして裾から、紅色の長槍を取り出した。
「どうやって収納してんだよ」
「これは普通の槍じゃないの」
「何? 」
「これはね、魔宝よ」
魔宝。
確か魔術を内包した武器とかの事だ。
製造者も製造方法も全く判明していない謎に包まれた物で、遺跡とかで良く見つかるらしい。
「で? その槍が何だよ? それで刺そうってか? 」
「刺すんじゃなくて、刺さりにくるのよ。貴方がね」
「は? 何言って……」
「フフ……」
リゼは微笑みながら、槍の鋒を俺に向ける。
俺は当然、槍を見る。
すると、足が勝手に動き出した。
「は? おい! 何してんだよ! 」
自分の足に怒鳴るが、当然返事はこない。
ゆっくりと、だが確実に、俺の足は突き出された槍へと向かって行く 。
「どうなってやがる」
「この槍の名は色欲の魔槍。この槍を見た者は、この槍に貫かれたいと自ら歩み寄るの」
俺の足は一歩一歩、槍に近づいて行く。
「フフフ……。この槍で貫いて、その後は下の槍でも貫いてあげるわ」
「糞みたいな下ネタ吐いてんじゃねえ」
「あら。貫く方が好み。私はどちらでも構わないわよ」
「そういう意味じゃねえ! 」
「フフフ。焦ってる顔もセクシーだわぁ……」
「誰が焦ってるってぇ!? 」
俺は緑糸を展開。
そしてそれを、
「リリス! その糸に身体を着けろ! 」
「ええ~。何でですかぁ? 」
「いいから早くしろ! 」
「しょうがないですねぇ」
リリスが自ら緑糸に触れる。
それにより、緑糸とリリスが繋がる。
俺は腕を振り、リリスを引き摺る。
「わわっ!? 」
「リリス! 足を振れ! 」
「ええ!? もぉう! 」
俺の指示通りにリリスが足を振る。
俺はタイミングを合わせ、リゼの近くにリリスを動かす。
それにより、
「っ! 」
リリスの足がリゼに命中。
右腕で防がれたが、初ダメージだ。
「へっ。最初からこうしときゃ良かったぜ。さぁ、お人形遊びといこうぜ」
「私は人形じゃありませぇん! 」




