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魔術学校の糸使い  作者: タカノ
合宿編
39/43

魔獣薬

 

「おい! スティーヴンス! 」


 俺が叫ぶと同時に、スティーヴンスが跳躍する。

 先程までいた場所には灰になり始めてるマント。

 寸前で脱ぎ捨てたらしい。

 上空のスティーヴンスは剣を振りかざし、そして降ろす。


罪無き者が(セインツ)振るう剣は(ライツ)神を殺すか(イノセンツ)


 そこから剣と同じ形状の光線が無数に降り注ぐ。


「おいおいおい! 」


 俺は青糸で盾を生成し、自分とリリスを守る。

 光線は地面を砕き、炎をかき消し、なおも降り注ぎ続ける。


「メチャクチャだなおい! 」


 しばらくすると、攻撃は止んだ。

 スティーヴンスが降り立つ。


「善良な一般市民まで巻き込む攻撃しやがって。これが騎士団様のやる事かよ? 」

「貴方が善良な人間なら、あの光は貴方を傷つけませんよ」

「そうかよ」


 俺は吐き捨て、リゼ達を探す。

 すぐに見つけた。

 煙の向こうにシルエットが浮かんでる。


「あらら」


 煙が晴れると同時に見えた光景に、思わずそんな声を出す。

 そこにいたのは、血塗れのジェローム。

 その後ろに隠れるようにして、リゼがいる。

 アイツを盾にしたって事か。


「その剣は人にはダメージ与えられないんじゃ無かったのかよ」

「あの技は犯罪者(マレフィキ)のみを裁きます」

「マレ……何? 」

「やってくれるわね……」


 俺の声に被せるようにリゼが呟く。


「投降するなら、これ以上の攻撃は加えません」

「投降? 冗談でしょう。なんで私が。私は傷一つ負ってないわよ」

「味方を盾にしといて良く言うぜ」

「貴方と初めて意見があいました」

「うるせえよ」

「仲が良いのねえ。羨ましいわぁ」

「何処がだよ」

「フフ……」


 リゼは不気味な笑みを浮かべながら、どす黒い液体の入った注射器を取り出す。

 そしてそれを、満身創痍のジェロームの首筋に刺した。


「ガッ……アァァァァァァァッ! 」


 絶叫するジェローム。

 次の瞬間、奴の身体が変化していく。

 黒い甲殻に覆われた身体に、二本の長い角。

 ありゃ完全に……


「魔獣……」


 スティーヴンスが小さく呟く。

 こいつの言う通り、どういう訳かジェロームは魔獣に変貌した。


「これは最近裏社会で出回ってるアイテムでね。名を魔獣薬。その名の通り、人間を魔獣にするの」

「そんな物が……」

「騎士団のくせに知らないなんて駄目な子ねえ」


 挑発を飛ばすリゼ。

 だがスティーヴンスにはあまり意味が無い。


「お前は知ってんのか? 」

「存在は知ってましたが、見るのは初めてですねぇ」


 やっぱり協会の人間なら知ってんのか。


「魔獣薬は魔獣の魔力を素にして作られていてね。素となった魔獣の姿、能力を得られるの。この薬の元になった魔獣は異端狩りの王兜(ヘレティクレス)。その力は魔術を筆頭にあらゆる異能の力を無効にする事」

「Gaaaaaaaaa! 」


 凄まじい咆哮と共に、ジェロームがスティーヴンスに突っ込む。

 長い角で突き刺そうとするが、スティーヴンスは何とか剣で防ぐ。


「聖剣の能力はその子には効かないわよ。物理的な攻撃力に乏しいその剣でどこまで戦えるかしらね」

「Gaaaaaaa! 」

「ぐっ! 」


 耐えきれず、スティーヴンスは吹き飛ぶ。

 すぐさまジェロームも追撃をかける。

 あっという間に奴等はこの場からいなくなった。


「さて、と。やっと二人きりになれたわね」

「あの~私もいるんですけどぉ」

「あら。雌犬がいたの。全然気づかなかったわ」

「わざとらし過ぎだろ」

「フフフ」


 リゼは長い黒髪をファッとかきあげ、笑みを浮かべる。


「貴方、名前は? 」

「リリスでぇっす! 」

「雌犬じゃないわ。そっちの色男よ」

「むぅ」

「名前なんて聞いてどうすんだよ? 」


 俺が言うと、リゼは舌舐めずりをする。

 そして、


「決まってるじゃない……貴方の男根を切り取って、そこに名前を刻む為よ! 」


 凄惨な笑みを浮かべながら、飛びかかってきた。



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