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魔術学校の糸使い  作者: タカノ
合宿編
38/43

退悪の魔眼

 

「なんか勢揃いしちゃいましたねぇ」

「一人邪魔な奴がいるがな」


 俺はスティーヴンスを見ながら言う。

 奴は俺を見るなり、あからさまに溜め息を吐きやがった。

 ムカつくぜ。


「おいスティーヴンス! 能力解除しろ! 」

「お断りします」

「はぁ? 状況考えろよ。解除すりゃあ、こんな奴等五秒で片付けてやるぜ」

「あら。言ってくれるじゃない」


 挑発的な俺の言葉に、リゼが反応する。


「取り込み中だ。黙ってろオカマ」

「あらヤダ、男前ね~。好みだわ~」

「うえっ」

「生意気なところも可愛いわぁ。そっちの子は何言っても反応しないから面白味が無いのよ」

「知るかよ」


 うざってぇオカマだ。

 さっさと片付けよう。


「おい、早くしろよ」

「お断りしますと言いましたが」

「融通の効かねえ奴だな 。じゃあどうすんだよ? 」

「私が一人でやります」

「お前みたいなヒョロガリじゃ無理だろ」


 スティーヴンスが軽く俺を睨む。

 何だよ? ヤるか?


「貴方は騎士団を下に見すぎです」

「良いから。そういうの良いから。早よ解除しろや」

「まともに会話も成り立ちませんね」

「てめえなぁ。ちったぁ年上を敬えよ」

「ニコ君が言うと微妙ですねぇ」

「この剣で一刺しすれば終わりです。しばらくお待ち下さい」


 スティーヴンスはそう言って、あの忌々しい鋒の無い剣を握りしめる。


「刺せればな。刺せないだろ」

「刺された貴方が言うと些か滑稽ですね」

「不意打ちしといて良く言うぜ」

「そろそろ良いかしら? 放置プレイはあまり好きじゃないんだけれど」


 長々と言い合う俺達に、リゼが割って入る。

 それに反応し、スティーヴンスが一歩前に出る。

 クソ。どうするかな。


「ジェロームちゃん」


 リゼは右手に火球を生成し、地面に放つ。

 それをジェロームが輝く瞳で見つめると、あり得ない速度で燃え広がり、周囲を囲む。


「またかよ。どうなってんだ」


 アイツの眼の力なのは分かるが、どういう力なのかはさっぱり分からない。

 てっきり火を操る力だと思ったが、さっきの地面の崩落の説明がつかない。


「まだ俺の力が分からねえのか? 」


 俺の心を見透かした様にジェロームが言う。

 心なしか得意気だ。


「俺の瞳の名は退悪の魔眼(ワースト・ワン)。瞳で捉えた物の状況を最悪の状態まで悪化させる」


 ジェロームの説明でようやく納得がいった。

 その力で切り傷を全身に広げてズタズタにしたり、地面の綻びを悪化させて崩落させたって訳だ。

 この炎も火そのものを増幅させたんじゃ無くて、焚き火を山火事に悪化させたみたいなもんか。


「厄介な力ですね」

「お前が言うなよ」


 こんな状況でも悪態をつくのを怠らない俺。

 スティーヴンスは鬱陶しそうにチラッと俺を見たが、すぐに視線をリゼ達に戻した。


「とりあえず、貴方は死んで良いわよ」


 リゼがスティーヴンスに巨大な火球を放つ。

 周囲は炎に囲まれてるから、避けられる程のスペースは無い。

 俺はしょうがなく青糸で壁を作りガードしてやった。

 こいつに死なれたら困るからな。

 嫌、死ねば解除されるのか?


「ありがとうございます」

「礼はいらねえから、解除しろよ」

「私が攻撃しますので、貴方は防御とサポートをお願いします」

「ふざけんな」

「懸賞金を半額お渡しします」

「全額ならやってやる」

「強欲な人ですね……」

「育ちが悪いんでね」


 スティーヴンスは溜め息を吐き、リゼ達に向かって駆け出す。


「おい! 解除しろって! 」


 俺は叫ぶが、奴は無視。

 リゼへと突っ込む。


「貴方には興味が無いの」


 リゼは再び巨大な火球を放つ。

 スティーヴンスは凄まじい速度で剣を一振り。

 それにより、火球は大きく形を崩すが、火が奴の白いマントに燃え移った。


「馬鹿がぁ! 死ね! 」


 それを見逃さず、ジェロームが赤い輝きの灯った瞳でスティーヴンスを見つめる。

 次の瞬間、スティーヴンスの全身を炎が包んだ。




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