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魔術学校の糸使い  作者: タカノ
合宿編
37/43

遭遇

 

「くっそ! やってられねえぜ! 」

「もう帰りましょうよぉ」


 大股でづかづかと歩く俺にリリスがうんざりした様に言う。

 スティーヴンスに攻撃を封じられた俺は、アイツの制止を無視してスターリング兄弟の兄を探してる最中だ。

 スティーヴンスは追っては来ずに、別の場所に言った。

 ぶん殴ってやろうとしたが、アイツの力で、拳が当たらなかった。


「帰りましょうてっば~」

「うるせえよ。帰りたきゃ一人で帰れ」

「そんな状態でどうやって捕まえるんですかぁ? 返り討ちにされちゃいますよぉ」

「攻撃は無理でも捕縛は出来るかもしれないだろ」

「無理だと思いますけどぉ」

「やってみなきゃ分からね……」

「ぐわぁぁぁぁ! 」


 しつこいリリスを怒鳴り付けてやろうとした瞬間、男の悲鳴が聞こえた。

 俺とリリスは顔を合わせ、すぐに駆け出す。

 悲鳴のした場所に行くと、数人の騎士団が血塗れで倒れていた。


「んん? 誰だ? てめえら」


 そしてそこに立つ一人の男。

 スターリング兄弟の兄、ジェローム・スターリングだ。


「よお。探したぜ」

「はぁ? ガキが何の用だよ? 」

「お前を捕まえにきた」

「はっ! 笑わせんな」


 ジェロームは右手に持っていた血塗れのナイフを俺に投げ飛ばす。


「おっと」


 俺はそれを片手でキャッチ。

 キマったぜ!


「これでそんなに斬り裂いたのか? 」


 俺はナイフと転がっている騎士団の死体を交互に見ながら言う。

 死体は全身を斬り刻まれていて、どう考えてもこんな小さいナイフでやれそうには無い。


「斬り裂いてなんかねえよ。ちょろっと斬っただけだ」

「どこがちょろっとだよ」

「身体に教えてやるよ」

「やだエッチ」

「ガキが! 」


 ジェロームは新たなナイフを取り出し、飛びかかってくる。

 無茶苦茶に振り回されるナイフを軽く躱し続ける。

 まるでナイフの使い方がなってない。

 こんなのに殺られるなんて。

 さては騎士団って雑魚だな。


「ちっ、うぜえ」


 ナイフを当てられないと悟ったのか、ジェロームは引く。

 その隙を逃さず赤糸を展開し斬りつける……筈が、糸は何かに引っ張られる様にしてジェロームから外れた。

 しまった、忘れてたぜ。


「何だよ、てめぇ魔術師か? 面倒くせぇ」


 ジェロームはナイフを二本飛ばしてくる。

 俺はそれを青糸で絡めとり、投げ返す。

 しかしそれも不自然に外れる。


「何だぁ? 」


 それを見てジェロームも首を傾げる。

 クソ。

 スティーヴンスの野郎マジで面倒くせぇ事してくれやがったぜ。


「手伝いましょうかぁ? 」


 後方にいるリリスが呑気に声をかけてくる。


「いらねえよ」


 俺は青糸をそのままけしかける。

 傷つけなきゃ大丈夫だろ。

 青糸を輪の形にして拘束する。

 しかし、すんでの所で糸は静止した。


「これも駄目なのかよ! 」

「やっぱり~」

「さっきから何してんだ? てめえ」


 屈んで糸の輪から抜けたジェロームはマッチを取り出す。

 それに素早く火を点け投げ飛ばす。

 マッチは地面に落ち、草に燃え移る。

 そこからあり得ない速さで、燃え広がる。


「どうなってんだよ! 」

「ハハッ! 死ね! 」


 ジェロームは地面にナイフを突き立てる。

 するとそこから地面に亀裂が入り、崩れだした。


「何でだよ! 」


 もっと叫びたい気分だが、そんな場合じゃない。

 俺は青糸でリリスを掴み、岩から岩へ飛び移り、上昇する。


「おいおい。なんつー身体能力だよ」


 そこにジェロームがナイフと火の点いたマッチを飛ばしてくる。


「しゃらくせえ! 」


 それを赤糸で切断。

 そしてジェロームの元に到着。

 そのまま蹴りを放つが、やはり当たらない。


「しぶてえ奴だな! 」


 ジェロームがナイフを突き出す。

 俺は後方に飛び、回避。

 体勢を立て直して、反撃に移ろうとするが、ジェロームの後方にある林から轟音が轟く。


「何だぁ? 」


 ジェロームが振り向き、俺もそっちに視線をやる。

 本来なら絶好の攻撃チャンスだが、今は違う。

 轟音のしばらく後、林が斬り倒され、スティーヴンスが出てきた。


「げ」


 嫌な奴にまた出くわした。

 俺は顔をしかめるが、次の瞬間には笑みに変わったと思う。

 何故なら……


「あら。ジェロームちゃん。ここにいたの」


 1億オルエの賞金首、男色殺人鬼のリゼが現れたからだ。



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