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魔術学校の糸使い  作者: タカノ
合宿編
31/43

恋バナと酔っぱらい

 

 特訓も終わり、今は入浴タイム。

 ベイと一緒に露天風呂にいる。

 昨日ベイ達が壊した壁はもう直ってた。

 仕事が早いねえ。


「いやぁ~。中々ハードでしたな」


 肩を揉みながら言うベイ。

 頭にはお馴染みシャンプーハット。

 中の風呂に入れば良いのに。


「ニコの方はどうだったんだ? 」

「別に。普通だよ。俺は疲れる様な事何もしてねえ」

「ふぅん」


 あれからも、セリーンの特訓は続いた。

 相変わらず、俺には飛ばせるが威力が弱い。

 あれじゃ街のチンピラにも勝てないだろうな。

 ただ、初日だし。

 後3日もありゃあ何とかなるだろう。

 そんな楽観的な思考をしながら、空を見上げる。

 空は分厚い雲に覆われていた。


「おい、ベイ。今日は月見えないぞ」

「え? マジ? 」


 ベイがバッと空を見上げる。

 こいつ一切疑わなかったな。


「いや~。これ邪魔だったんだよな」


 言いながら、シャンプーハットを外す。

 本当、中の風呂に入れば良いのに。


「さて、と。足枷……いや頭枷も外れたところで昨日のリベンジと行きますか」

「いや、それ言い直す必要無いだろ。てか、またやんのかよ! やめとけってマジで」


 風呂から上がり、壁の元へ行こうとするベイを引き留める。


「離せニコ! 俺は行くんだよ、楽園へ! 」

「マジもんの楽園に送られるからやめとけって」


 や、覗きして死ぬような奴は地獄行きだろうけど。


「ええい、やかましい! 男はなぁ、狼なんだよ! 」

「お前はマジで狼だろうが!……ってコレ言って欲しいだけだろ! 」

「ぶふっ!? 」


 俺の手を振りほどこうとするベイを力尽くで風呂に沈める。


「ふぶぶぶぶっ!! んーっ! んーっ! 」


 俺の手をタップするベイ。

 押さえつけてる手を離す。


「ぶはっ! 殺す気かよ!? 」

「世の女性を守る為にはやむを得ない……」

「やかましいわ! いつからフェミニストになったんだよ! 」

「うるせえ。良いから、覗きはもうやめろ」

「ちぇっ。見たくないのかよ」

「お前ほどにはな」


 昨日ばっちり見ましたし。

 おほほほほ。


「もう上がろうぜ。そろそろ飯だ」

「へいへ~い」


 不服そうなベイを連れて、風呂から上がる。

 どんだけ覗きたいんだよ。







 飯の時間は終わり、自由時間。

 と言っても、皆特訓で疲れてるらしく、布団に寝そべってる。


「何か暇だな」

「そういう時にすることはただ1つ……」


 ベイの呟きに、エミリオが反応する。


「おいおい。ピローファイトはやらねえぞ」

「違う。恋バナだ」

「恋バナァ? 何だよそれ」

「知らないのか? ニコラス。遅れてるな。そのまま、恋の話だよ」

「俺は知ってるぜ! 好きな人を言い合ったりするんだろ! 」

「へぇ」


 正直あんまり興味無いな。

 好きな人とかいねえし。


「俺はパトキス先生が好き! 」


 クラスメートの1人が言う。

 こいつ正気か?


「ウッソだろお前。ベイの惨劇を忘れたのかよ」


 青ざめガタガタと震えるベイを横目に言う。

 しかし、そいつは鼻息荒く、


「俺、ああいう冷たい女性が好きなんだよ! 足蹴にされたい! 罵られたい!」


 そう言った。

 うわぁ。


「ふむ。まぁ、好みは人それぞれだからな」


 エミリオが真面目腐った顔で言う。


「エミリオはいねえのかよ? 」

「いないな。色恋沙汰にはあまり興味が無い」

「お前が恋バナしようって言ったよね? 」


 こいつ、よく分からん奴だな。


「そう言うギルクリストはどうなんだ? 」


 エミリオが言うと、視線が俺に集中する。


「へ? 俺? 」

「実力抜群でルックスも良い。さぞおモテになるんでしょうなぁ」

「選り取り見取りなんでしょうなぁ」


 言いながら、ぐいぐい迫ってくる野郎共。

 近いんだよ。


「別にんな事ねえよ」

「またまたぁ。今まで何人の女を泣かせてきたんだぁ? 」

「いや、だから……って、うわぁ! フェルガス先生っ! 」


 いつの間にか現れたフェルガス先生に俺らは飛び退く。

 先生は酒を片手に、ヘラヘラ笑ってる。

 顔も赤い。

 確実に酔ってるな。


「んな驚くなよぉ。ひっく! 」

「いや驚くでしょ。普通」

「でぇ? どうなんだよぉ、おい。ギルクリストォ」

「いや、だからそういう経験は特に無いっす」

「俺の見たところなぁ……フランドリッヒとルナホークはお前に気があるぞぉ」


 先生のその言葉に、何人かが悲鳴の様な声を挙げる。

 分かりやすい奴等だ。


「そうっすか? 普通の友達だと思いますけど」

「いや! 俺には分かる。分かるぞぉ。お前を見る2人の顔は完全に恋する乙女のソレだからなぁ。くぅ~っ! 罪な男! 」


 バシバシと俺の肩を叩くフェルガス先生。

 もう駄目だこの人。

 完全に悪酔いしてる。

 付き合ってられない。

 俺はそう思い立ち上がる。


「おい、何処行くんだよぉ」


 俺に手を伸ばす先生。

 未だにトラウマに震えているベイを身代わりにするとしよう。

 俺はベイを先生の元へ突き飛ばす。


「お! 何だぁ、ブレイディ。ガタガタ震えて。風邪かぁ? 風邪はなぁ、酒で治せ。酒で」

「んんんぅっ!? 」


 ベイの口に酒瓶を突っ込む先生。

 マジで教師失格だろ、この人。


「うげぇぇぇぇぇぇ!! 」


 酒瓶を抜かれると同時に吐き出すベイ。

 叫ぶエミリオ達。

 笑う先生。

 阿鼻叫喚の巷と化した部屋を、俺は静かに抜け出した。

ユーベ負けちゃいました。

残念。

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