女湯覗き隊~ベイと不埒な仲間達~
「ふぃ~」
露天風呂にゆっくりと浸かる。
もうすぐ消灯だから、あんまり長湯は出来ないけど。
「よ~、ニコ」
くつろいでいると、ベイを先頭にクラスメート達がやって来た。
露天風呂はそんなに広く無いので、20人も入るといっぱいいっぱいだ。
「しかし、ギルクリストはやっぱり強いな~」
クラスメートの1人が言うと、他の奴等も呼応する。
「エプスタイン先生をぶっ倒しちまうんだもんなぁ」
「エプスタイン先生といえば、学校やめたらしいな」
「マジで!? 」
「知らなかったのかよ! 」
「何か可哀想だな……」
「俺はむしろ、ざまぁみろって思ったけどな。ルナホークさんの事いじめてたし」
「お前、ルナホークさんの事好きなの? 」
「ち、違えよ! 」
ワイワイと騒ぐクラスメート達。
まぁ、こういうのも良いか……。
「ギルクリストが強いのは分かっていたが、ブレイディも中々強いな」
アルステッドが言う。
ベイは月を見ないためか、バカみたいに大きいシャンプーハットをしてる。
つっこんだり笑ったりしたら負けな気がするのでスルー。
「まぁな。てか、ベイで良いぜ。俺もエミリオって呼ぶから」
「分かった。ギルクリスト、お前の事も名前で呼んで良いか? 」
「おお。俺も名前で呼ぶよ」
俺とエミリオがそんな会話をしてると、他の奴等も次々に「俺も、俺も! 」と入ってきた。
うむ。
大分、打ち解けてきたんじゃないか。
「エミリオお前、皆が打ち解けれる様にアレを? 」
俺が言うとエミリオは微笑する。
やっぱり……
「いや。やりたかっただけだ」
違いました。
「なぁ。それよりさぁ……女風呂、誰かいるよな? 」
ベイの言葉に、場が静まり返る。
耳を澄ませると、確かに女湯の方から微かに声が聞こえる。
男湯と女湯は竹の壁の様な物で仕切られている。
高さは4メートルほど。
俺達は顔を見合わせる。
「行くか……」
「いや、やめとけって」
立ち上がり、覗きに行こうとするベイを制する。
「何だよ、ニコ。興味無いのか?」
「いや、興味はめちゃくちゃある」
「なら良いじゃん」
「……嫌な予感がする」
「何だよソレ」
ベイは俺に取り合わず、竹の壁に向かう。
「隙間は……さすがにねえか」
ベイはそう言うと、上を見る。
月見ちまうぞ。
「やっぱり、上から行くしかないな。チャンコ、ちょっと肩貸してくれ」
「どすこいっ! 」
「おい、マジでやる気かよ? 」
「当然だろ? 男のロマンだぜ」
男のロマン。
その言葉に他の奴等が「おお……」と感嘆の声を漏らす。
いやいや。
「お、俺も行くぜっ! 」
「俺も! 」
結局、俺とエミリオ以外の皆が行ってしまった。
「お前は行かないのか? 」
俺の問いはエミリオに。
奴は当然だろとでも言う様に肩をすくめてみせる。
「興味無い。そういうお前は行かないのか? 興味あるんだろ? 」
「いやぁ……ああいうのは大抵ろくな目にあわねえからな」
言いながら、ベイ達を見る。
チャンコの肩に乗り、壁の上から覗こうとしてる。
危ねえなぁ、おい。
「もう少し……」
チャンコの肩の上で背伸びをするベイ。
ベイの身長は俺と同じくらいだから180くらい。
チャンコにいたっては多分2メートルはある。
ベイが手を伸ばせば、余裕で壁を越える。
まぁ、そんな事したらすぐにバレるだろうけど。
「おい、ベイ! まだかよ! 」
「早くしろよ! 」
後ろに控えてる奴等がベイを急かす。
「分かってるってっ! 」
ベイは必死に背伸びをする。
「どうだ! 見えたか!? 」
「待って……湯気が……」
ベイとチャンコが壁に寄りかかり過ぎた為、竹の壁から凄い不吉な音がする。
おい、ヤバいんじゃ……。
「くそっ! 湯気晴れ……うおっ! 」
竹の壁が一気に崩れる。
それにより、男湯と女湯の仕切りが無くなった。
「な……!? 」
女湯にいたのは、ウィルヘルミナとセリーン。
あ、これ終わりましたね。
「ななななななっ!!?」
セリーンは顔を真っ赤にしてタオルを体に巻く。
まぁ、俺は湯気なんて関係無くバッチリ見ましたがね。
一方、ウィルヘルミナは……
「……君達は何をしているんだ? 」
何かオーラの様な物を放出しながら、仁王立ち。
湯気があるから見えないと思ってるのか、タオルも何も巻いてない。
確かにベイ達には見えてないだろうが、俺には見えてる。
スケスケだぜ!
「……話せば分かる」
「問答無用! 降雷! 」
「ああああああああああああああああああああああああっ! 」
ベイと不埒な仲間たちに、雷が降り注ぐ。
エプスタインも同じ術使ってたけど、こっちの方が強力だ。
「行こう、セリーン! 」
「あ、うん! 」
プスプスと音を立てて焼け焦げてる屍達を残し、ウィルヘルミナとセリーンは足早に出て行った。
「アホだな、こいつら……」
エミリオは呆れた様に言いながら、お湯をかける。
しかし、ウィルヘルミナめちゃくちゃスタイル良かったな。
胸も大きかったし。
良いもの見れたぜ。
ただ……
「これ……どうすんの? 」
崩れた竹の壁を見る。
絶対、怒られるだろう。




